忍野愛の事件簿
@amagumo0560
第1話 「忍野愛の日常」
俺が何で、こんな変な依頼を受けたのかは分からない。
ただ、本心から『知りたい』と思ってしまった。
あの時から非合理で非科学的で非日常的な日々が実は始まっていたのかもしれない。
「俺に、分からない事なんて無いんだ。まかせろ。」
そう、彼女に言ったあの日から・・・。
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「ふぁ~あ・・・」
眠気がまだまだ体から抜けず、おもわず口から大きなあくびが出る。昨日は、調べ物で夜更かしが過ぎたかもな・・。夏の季節特有のじめじめとした湿気と空から浴びせられる直射日光に耐えながらも、寝癖のついたままのぼさぼさな頭を揺らしながらもつぶやく。
「女子高生が爆発する・・・か。」
俺は、この夏休み中に街で囁かれていた、怪しい噂が気になっていた。最初はどこかのバカが流したデマだと思ってはいたんだが、実際何回も耳に入ると気になってはくる。
『女子高生爆発事件』
夏休み中に起きた怪異事件だ。学校側は信じてはいないが何件も同じ証言が相次いでいる。
「女子生徒の叫び声がした後、突然爆発した。」
だいたいこんな感じの内容だ。
実際言葉にしてみるとますます信じられない。
もちろん、こんな非科学的な内容なんて、周りの大人が信じるわけがない・・。キリ高の教師陣はもはや、学生のふざけて流したデマ情報と言うことで片付けようとしているみたいだ。
だけど気になってしまう、爆発があったのならなぜ周囲の物が破壊された形跡がないのか、そもそも証言をした学生はなぜ女子生徒の記憶だけ曖昧なんだ・・。
次々と浮かぶ謎に自分の中の好奇心が反応する。
「まぁ、部室に行ったらとりあえず調べてみるか。」
通学路を歩きながら忍野愛(おしの ちか)はにやりと笑った。
「おはよーっす、チカ。お前が笑ってるなんて珍しいな、何かいいことでもあったのか?」
「ソラ・・俺は今考え事をしていただけだ。あと、笑ってなんかない。」
後ろを振り向くとそこには、青春の2文字が似合うイケメンががいた。水無月空(みなづき そら)。小学校からの付き合いであり、要するに幼なじみだ。性格は俺とは正反対で、性格は常に明るくて真面目、友だちも多い。おまけに運動神経も抜群のサッカー部の好青年だ。こんなやつだから、俺にも話しかけてくれる。
昔、俺はソラに行ったことがある。
「俺なんかと一緒にいたら友だちいなくなるぞ」
何度も言った。そういう度にあいつは。
「何言ってんだよ、俺は本当はチカがいいやつって知ってるから一緒にいるんだぜ」
そう何度も真顔で返された。今ではもう気にしないことにした。水無月空という人間は、自分が決めたことは曲げない性分だと分かったからだ。言っても無駄だ。
これからもソラとは親友だ。
(おい、アレ見ろよ・・)
(”ネクラハクイ”がいるんだけど。ちょーウケル。)
(おいおい、気をつけねーと、聞こえるだろ?)
(聞こえても問題なんかねーだろ。)
(にしても、相変わらず暗いやつだよな)
後ろから俺のことを、嘲笑う男子高校生の声が聞こえてくる・・。
まぁ別に気にしてなんかいない。バカが騒いでるだけだ。いつも通り、知らん顔をしていると隣で歩いているソラの目が据わっていた。笑っているように見えなくもないが、瞳の奥には憤怒の意思が感じられた。
というか、ソラが怒ると俺でも普通に怖い。
「・・・あいつ等。サッカー部のやつだな。あとで、説教しとかねーとな・・。生まれてきたことを後悔するくらいに。」
「いや、別にほっとけばいいよ。あんなやつ等。俺は慣れてるからダメージゼロだ。それにバカとまともにやり合ったら疲れるだけだぞ。」
ソラの怒りを諫めつつ俺はちょうど考えていた話題を使って話題を反らした。
「そういえばソラは知ってるか?『女子高生爆発事件』のこと」
「ああ、知ってるよ。サッカー部内でもそれなりに噂にはなっているからな。ほんと、変な話だよな」
「今それについて考えていたんだ。今日から調べてみるつもり。」
「お、さっすがチカだな。俺にできることがあったら何でも言ってくれよな!協力するぜ。」
ソラは俺の背中を笑いながらバンバン叩いた。
背中がひりひりしてちょっとだけ涙目になる・・。
「いった・・。まぁ、分かったよ。頼らないと思うけどな。」
「つめたいねー、チカくんは」
わざとらしく、腕を組みながらソラは顔をプィっと、反らした。本当に何で俺なんかと一緒にいるんだろうか。
ある意味謎の一つだな。
「おっと、そろそろ行かねーと朝練遅刻する・・。ま、ほんとに困ってたらいつでも頼れよなー!俺たち友だちだろ?」
さわやかなスマイルをしながら、ソラは颯爽と走り去っていった。流石サッカー部だな、もう見えなくなった。
教室に着くと、鞄から、白い紙1枚とボールペンを取り出し、とりあえず俺は放課後までにすべきことを紙に書いて整理した。
1 実際爆発した女子高生と接触をはかる
2 『女子高生爆発事件』の被害者と接触する
3 事件の原因を突き止める
ざっと書き留めた感じ、こんな感じだろうか。
さて、授業も終わったことだしまず何から調べようか。
とりあえず、部室に荷物を置いた後、実際に爆発が起きたとされる校舎裏にでも行ってみるか・・。何か手がかりがあるかも。メモした紙を握りしめ、俺は部室へと向かった。
Eー5教室
ココが俺の部室だ。校舎の5階の隅っこに位置する目立たない教室だ。扉にはくしゃくしゃの張り紙に赤いマジックで殴り書きされた「超能力研究部」の文字。よく見ると紙の下にはもう1枚「使用禁止!」と書かれた紙が隠れている。俺が入学してからと言うもの。偶然鍵が壊れていることに気づき、俺が暇をつぶすために放課後使っていた。要するに「超能力研究部」は非公認の部活なので、部員はこの俺、忍野愛しか存在しない。
実質、忍野のプライベイトルームなのである。
「さてと、荷物を置いてっと・・」
肩にかけた鞄をするりと、椅子におき、その隣に掛けてある白衣を羽織る。まわりからは、放課後に白衣を着て過ごしていると、部活をしているやつから”ネクラハクイ”なんて変なあだ名を付けられた。
まぁ、別に気にしてなんかいないが。
好物の和菓子、栗まんじゅうを口にほおばりながら、調査の支度を始める。
コンコンっ
入り口の扉を叩く音が聞こえた。珍しいな、この教室に誰か来るなんて・・。いや、もしかしたら初じゃないか。いや、でもあったな。ソラはこの教室にたまに遊びに来る。でも、おそらくソラじゃない、あいつはノックなんて律儀なことせずに普通に教室に入ってくる。
別の誰かの可能性が高い・・。
コンコンコンコン
今度は、少し多めのノックだ。一体誰だろうか。ソラのいたずらの可能性もなくはないが、とりあえず返事をしておくか・・・。考えていても仕方が無い。
「・・・どうぞ」
ガラガラ
扉がゆっくりと開き、ノックの主が徐々に姿をあらわす。
「お、おじゃましまーす。返事合ったよね?」
ひょこっと、姿を現したのは白のワイシャツで胸元に赤いリボンがついている。下はチェック柄のスカートの・・。要はキリ高の女子生徒だ。
髪型は、やや明るい茶髪のコントラストで彩られており、素人目の俺でもこまめに手入れされている髪であることが分かる。髪型は、ミディアムぐらいの長さだろうか。
彼女の印象としては、「元気女子」と言った感じだろうか・・。
「俺に、なんか用か?今忙しいんだけど・・。」
「はわわ!そ、そんなこと言わずに話だけでも聞いてくださいよ~。もうココぐらいしか頼るところが浮かばなくてぇ・・・。」
彼女は、軽く涙目になりながらも俺に向かって懇願してきた。まぁ、こんなに辺鄙なところまで訪ねてきて頭ごなしに追い返されるのもしゃくだろうな。
「分かった。話だけでも聞こう。で、君の名前は?」
許可を出すと、彼女は驚きの早さで元気になった。立ち直るのが早いな。とりあえず、俺は彼女を向かい側にある適当な椅子に座らせた。
「あ、はい!ありがとうございます!」
「私、キリ高2年C組の小田巻華です!えっと・・。忍野君のとこに来たのには、ある依頼をするために来ました!」
”依頼”?俺は、別に依頼なんか募集してないぞ・・。
あと何でこの子は、俺の名前を知ってるんだ?
「いくつか聞きたい。まず、なんで俺の名前を知っている・・。俺と小田巻さんは面識無いだろう」
「オダマキでイイですよ。あと、私が忍野さんを知っている理由は、水無月くんに教えてもらったからです」
なるほど・・。それなら辻褄は合う。ソラなら、この部室のことも知っているし、俺のことを唯一知っている人物でもあるな。あと、友だちの個人情報を流したソラには後で文句言ってやる。
「わかった。じゃあ、次の質問だ、オダマキ。その”依頼”についてだが、別に俺に言わなくてもいいことじゃないか?お願い事なら周りに言っても助けてもらえるだろ・・・。」
オダマキのことは、クラスは違ったが顔だけなら知っている。常に友人に囲まれていて、順風満帆に学生生活を過ごすごく一般的な女子高生だ。悩み事なんて縁がなさそうだが・・。
「えーっと・・。それは、信じてもらえなかったと言いますか・・。笑われたと言いますか」
オダマキは、落ち込んだ子供みたいに、理由を言う度に声のトーンの元気がなくなっていった。
「なんでもいい、笑わないから言ってみろ。聞くだけ聞いてやるって言っただろ?」
オダマキは、覚悟を決めたのか、顔を赤く染めながらギュッとめ閉じながらいった。
「・・・爆発するんです。」
「え?な、なんて言った?」
「振られたら、私爆発しちゃうんですううう!!」
「ん?ば、爆発?」
「”能力屋さん”って名乗る変な口調のやつに出会ってから、告白しても振られるし、振られたショックで爆発する体質になっちゃったんですよおおおお!!」
まさかの、目的1達成??
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