第13話 ゴールドの話をしよう、ゴールドの……

「何かもう……アニメ系の制服買うだけでいい気がして来た」

「リアルでは上は紺ブレザー、下はチェックスカートが主流だけど……アニメだと、当時のデザイナーさんが頑張ってデザインしたのが伝わって来るから、今も昔もアーカイブ漁るだけで刺激になるよ……残っててよかった」


「とりあえず秋名さんがデザインしたのも含めて1ダース……塔子ちゃんのサイズに合うのも買うから更に1ダース……1000餡越えましたね」

「購入された12着の中にラバロン学園の私服規約に反するものは無い事を報告致します」

「あの、ぼ、帽子……帽子……選ん、で」

「割り引く代わりに、ある程度の帽子ならオマケで付ける感じにしようか……」


「購入された制服を転送装置でラバロン学園まで1種ずつ分けて中速転送し枚南塔子さまと茶遠一さまが使われてる部屋まで運ぶ手筈が整いました……こちらもサービスと致しましょう」

「あぁー、これでクローゼットが私と塔子ちゃんの服で潤うよー……」


 茶遠、店主、茶遠、シトラと発言する中、水川悠の嘆願に店主が対応するやシトラが提案と共に実行……そして茶遠一が何かに満たされたかのような声で、そう言い放ちました。


 この後、水川悠は簡素だけどお洒落な帽子を鮎鮫秋名に見繕ってもらい、どれも安かったのでオマケの範囲で3つ手に入ったよ。


 さて、ゴールドだけど一目で金銀銅の何れでも無いと判るように、酸化カルシウムを補強とコーティングも兼ねて使った成分により、乳白色の光沢を実現。


 そんな乳貨や白コインとも呼ばれる硬貨が、1枚、2枚、5枚、25枚の枚数分に

相当するものが4種類あって乳貨100枚で銅貨1枚分になり1ゴールドとなる。


 そして銅貨にも1、2、5、25と4種類あり、銅貨100枚で銀貨1枚……つまり100ゴールド……銀貨にも1、2、5、25の4種類があり銀貨100枚で金貨1枚になり1万ゴールド……


 金貨にも1、2、5、25の4種類があり金貨100枚になると大判金貨1枚になり、100万ゴールド……これが頂点となります。


 よってゴールド硬貨は全部で17種類……説明の続きの前に北内桃奈子が発言。


「水着欲しいけど……夏限定の上級プール施設はブロンズバッジから利用可能だから……ウィンドウショッピングしますね」

「学園敷地内に契約企業が遊具付きプール施設を丸ごと転送……バッジによって配布される無料入場チケットが違ってて使い切ったら学割で入場可能……今思えばとんでもないね」

「憧れのウォータースライダー……」

「来年は通えるよう……頑張るの」


「塔子ちゃんに大人っぽいランジェリー着せたけど……果たして似合ってるのかどうか……これなら可愛いパジャマ買った方がいいかな」


 北内、店主、北内、岩瀬が発言する中、茶遠一が試着コーナーの塔子を眺めながら発言……アンバーとキューブは復興が完了した主要国家で流通してるから、為替状況は安定してて電子通貨同士なので交換手続きもお手軽……


 これに対し地政学的リスクの伴う国や地域で流通するゴールドはレートが不安定。


 しかも、24時間デイトレードが可能な者もいるヴェノス市民が介入する事により乱高下しがちで、ゴールドで外貨預金サービスを始めて大火傷した起業家もかなりいます。


 流石に各イーリスもこの事態を放置せずに何かと対策を講じてるけどね……


 あとゴールドをキューブと交換する際は手続きが多いので、ゴールドを盗んで紙幣のキューブに交換しようとしても足が付きます。


 アンバーを作る際、各イーリスがデザイン案を提出したと言ったけど……ゴールドは第二のイーリスがその企画のサンプルとして簡単に作成したものを再利用する事になると第二のイーリス『ルーシー』は各硬貨のデザインを偽造無理難題レベルで複雑化……


 縁の部分には肉眼では見えない迷路のように入り組んだ形状が描かれ、数字が書かれた表面は一見すると平らでも微細なレベルで見ると起伏が激しいものだったりするし……


 1枚硬貨、2枚硬貨、5枚硬貨、25枚硬貨の順で直径が大きくなって行き……


 1枚硬貨は厚さを抑えてる感じだけど金銀銅乳4種とも対応枚数硬貨のサイズ比率は共通で、同じ形状を使い回してるかに見えて、金銀銅乳で手触りがまるで違ってて特に比重の近い銅と銀は歴然としてる。


 硬貨の裏面も17種類あり、ひと昔前なら美術工芸品レベルの絵柄が様々に彫刻されたように出力されてて……


 そんな中でも大判金貨は別格の出来栄えで、表の絵柄もとんでも無いけど……その紋章のようなデザインの裏面が更に印象的な事から『エンブレム』と称されてます。


 ゴールドの説明はこんなところかな……もうお昼を過ぎたので一同は店の中で簡単な食事をしてます。


 ちなみにルーシーのスペルは英語辞書通りだよ。


「ここは有線転送の個人飲食店に囲まれてるから、いいお客さんには注文出来るようにしてるよ……ピザとかの脂っこいものも、あるというか隣だけど……流石にアパレルショップで食べていいものじゃないので禁止してる」


「このフロートもアイスが手に付いたら危ないですよね……それにしてもお勧めされて皆で買ったこれ……」

「レッドメロンソーダフロート……水川さんの髪の色を見てたら思い出しちゃったんだけど、結構イケるでしょ?」

「赤肉メロンの果汁をかなり使ってないと、ここまで濃厚な味にはなりませんよね」


「ゆうちゃん……美味しいの」

「明らかに……おかしい、です。それ、は……」

「炭酸しゅわしゅわー!」


 店主、西郡、店主、岩瀬、水川、北内が発言。


 カウンター手前のスペースに鮎鮫秋名がテーブルと椅子を持って来て、塔子と茶遠一も含めた人数分のスペースを確保。


 レッドメロンは赤肉メロンの事で、あの色がそのままソーダフロートになったものを全員分注文した状況です……


 それから時間が経ち、14時が見えて来たけど……ここで西郡灯花が発言する。


「皆、会議しようか……そろそろお暇するか、更に1時間この店で過ごすかを」

「私は十分買い物しました」

「この店は本当に素敵だけど……そろそろ違う所へ行くのは賛成なの」

「ウィンドウショッピング……堪能したよ」

「あ、ありがと、う……ございまし、た……」

「私がブロンズの内に外出申請して、また連れ出せないか交渉するー」

「全会一致ね。お買い上げ、ありがとうございました……またのご来店を――」


 茶遠一、岩瀬麻七、北内桃奈子、水川悠、塔子、鮎鮫秋名が発言する……そういえばゴールドは実際に金銀銅で作られてます。


 第三次世界大戦は資源の枯渇が要員となったけど……その当時奪い合ってた資源は回復してて……土地も元気いっぱいで、今までのノウハウも失われなかったので作物も酪農も存分に育てられる状況なんだよね。


 さて鮎鮫秋名の発言中に、それを遮る声が入口から店内に響き渡った。


「ここですわね……失礼致しますわ!」

「たっのっもぉー!」


 一同は店の入口に向かおうと振り返ったばかりで、そのまま入口まで進み……突然の訪問者の姿を見て塔子と茶遠一を除き驚愕……北内と岩瀬が声に出す。


「げっ……え?」

「あわわ、わ、わ……なの」


 訪問者は共に女性で、ラバロン学園の制服を着てた。初期制服のおさらい……膝下まであるカーキ色のコートで膝下付近長さの緑と赤のチェック柄スカートは緑部分が多い……インナーは黒のTシャツしか許可されない。


 このデザインをそのままグレードアップさせ、コートを真珠と同じ質感で光沢の白い素材に変えて、紫のインナーは一目で高級素材と判り、肌触りも、そこらの絹素材を悠に超える。


 スカート丈は同じだけどチェック柄じゃなくて、鑑賞性の高い宇宙写真を元に作成された柄は全体的に赤紫の色で統一気味……一人が塔子に近付き、発言……


「枚南塔子――ですわね。はじめまして……わたくし――」


 背丈は恵森清河と鮎鮫秋名の間と高く、ピンク色の髪を背中を覆うまで伸ばし塔子のように柔らかそうで、くせ毛の強いその髪を大人の女性の雰囲気になるような髪型にしてて……


 暗城雲雀同様、瞳の色がアメジスト、と言いたいけど……


 この女性のアメジストの方が深みがあり発色が強く、所々で赤い輝きが見え隠れ……宝石のような瞳とはこの事だね。


 暗城雲雀の瞳と区別する為この瞳を……『ウルトラアメジスト』というコードネームで呼ぶ事にします。


 あとは胸だけど岩瀬麻七と暗城雲雀が小さく見えそう。


 だって正面から見て胴体から、はみ出す部分だけでも量が多いし、その膨らみの中には大抵の人の頭なら入ると確信するしかないサイズ……しかもこの制服は胸の大きさがそのまま出るから、余計際立つ……


 そんな今年18歳の女性が続けて発言。


天盃てんはい酒寿花すずかと申しますわ……隣にいますのは――」


 胸元のバッジだけど天盃酒寿花と今から紹介する女性、共にゴールド――


 身長は塔子と数値が完全に一致、髪は菫の花を程よく淡くした色合いの青紫で後ろ髪を二股に分け、結び目2か所には青緑色のリボン……おさげはボリューム満天で腰の辺りを突き抜ける長さ。


 頭の1か所で妙なくせ毛が少し跳ねてるけど……アニメでアホ毛と分類されるヤツだね……


 そんな女性の胸に膨らみは一切無く完全なる絶壁だけど……天盃酒寿花の発言を吹き飛ばす勢いで、元気に叫んでるね。


せんつつっでーす! つーちゃんって呼んでぇー!」


 アホの子全開の声でピンクゴールドの瞳の女性はそう言った……


 ラバロン学園は初等教育課程を終えてると見なせて修学と寮生活に堪え得る者ならば年齢制約無しに入学する事が出来る……だから実年齢2歳の塔子が入学したのも、想定内。


 天盃酒寿花と洗谷筒美の来てる制服を着る条件は、ラバロン学園生徒が目標とする高等教育課程の修了とそこらの大学入試より難しい試験を厳しい合格ラインを突破出来た者が大学講義の行われる教室に通えるようになり、その講師と一緒に次に挑む生徒へ向け試験問題を作成する。


 そして突破時点でシルバーバッジだった場合ゴールドバッジへ昇格し、バッジ着用義務から解放され私服制約が無くなり、この制服が支給される……


 学生寮はここまで到達した生徒の為の上層があり、カッパーバッジもしくはお金を支払えば来れる中層、まだ初期制服状態の生徒が集まる下層に分かれてて……上層は上層資格者以外立入禁止……


 だから普通の生徒が制服の存在を知らなくても、おかしくはないけど、ここまでステータスが高いので噂などで聞く生徒だっているよね。


 ここで長らく圧倒されてた西郡灯花が呟く。


「最上級生……何で、ここに……?」


 天盃酒寿花の一族は財閥の勢力を広げる内に、重工業、医療、銀行、証券、金融、保険、不動産、食品……など一流企業を多岐に渡って手中に収めた世紀単位で続く、世界規模の大企業……天盃酒寿花はその令嬢と言えます。


 洗谷筒美の家系は自動車産業で大成した重工業が軍事産業や兵器開発に力を入れてる内に第三次世界大戦時に需要を掴み、兵器開発の際に拡大したバイオ事業も市民位制度の誕生により飛躍的な成長を遂げた軍事産業。


 そんな一面だけ見ればネザーソード社、アダム、大夜重工業の三大勢力と見れなくもない……


 企業名が大夜になってるのは創業者が企業名を決める際、千夜一夜物語という名前が脳裏を過ったせいです。


 ネザーソード社は世界最高峰の軍事企業だけど実際に製品を作って販売するのではなく、その設計図とそれを利用する権利を販売する……


 つまり大規模生産設備は外部依存でどれが社名か判らない天盃酒寿花の会社と大夜重工業のような会社を利用してもいい感じだね。


 天盃家の会社名なら上場した時の名前があるけど……とにかく塔子たちの目の前に現れたのは間違いなく、この世界の頂点を狙える位置にある人物と、時代の波に押し上げられた軍事企業の娘……


 塔子の位置情報は学園長から簡単に聞き出せるけど、遠路えんろ遥々はるばる何か言いに来たのか、それとも――


 そういえばニュー・クリアにより世界の至る所で空いた大穴は、人工島技術などで大分塞がれたと言ったけど……


 人類が何もしていないのに勝手に塞がった穴というか区域も……結構あったりします。

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