第二章 ヴェノスに着いたら、何をしよう
第6話 魔法実技試験と新記録
「えーと、この威力で魔力が尽きるまで出来れば30分撃ち続ければいんですか? では始めますにゃ」
時刻は17時半、塔子から見れば2回目となる魔法実技試験の会場に暗城雲雀の姿があり迎撃テストの試験官……つまり射撃魔法要員として駆り出された……暗城雲雀にとって初めてどころかこれによく参加してるからカッパーバッジを維持出来てるんだけど……
今回は特定の威力で固定してそれを対象に連射するという特殊な試験で、威力調整の出来る暗城雲雀が選ばれた次第。
暗城雲雀は親指と人差し指を開いた形で右腕を標的に向けて……その人差し指から魔法を……と言いたいところだけど……
どの位置からどの方向に魔法を放つかの指定が出来るなら直立不動でも放てるので標的を狙う丁度よい高さに雷の魔力が集まるや電撃を帯びたような光が真っ直ぐ飛びそれが絶え間なく連射される。
暗城雲雀の魔法サンダーショットは単発だけど、出力を抑えれば連射は可能で速射に値する速度は失われないので迎撃テストの試験官として重宝されてます。
「飛ばし過ぎたにゃ……しばらく出力を抑えて最後にスパートを掛けられるよう調整するかにゃ……全然壊れる気配がないにゃー」
そして30分が経とうとした瞬間、暗城雲雀は連射速度を強め、叫び始める。
「にゃにゃにゃにゃにゃ、にゃー! ……はぁ、はぁ……これでいいかにゃ」
それから直ぐに交代が来るんだけど少し休憩した後、暗城雲雀が発言。
「せっかくだし……彫刻テストで遊んで行きますかにゃ」
魔法実技試験である程度の成績を収めた者は1種目指定して測定する事が可能……というわけで今、暗城雲雀の目の前には、あの一辺2メートルの合金ブロックがあります。
やがて暗城雲雀の足元から黒い影が発生し、それが合金ブロックの足元まで来ると影の中に潜んでいたかのように影が黒い触手を何本も伸ばし始め……その先端には全て鋭利な刃が長く伸びてて……次の瞬間、その黒い刃の群れが合金ブロックに目にも留まらぬ速さで襲い掛かり……10数分後、暗城雲雀は呟く。
「け、結構……時間掛かったにゃ」
合金ブロックはリンゴの切り身でウサギを作ったような形状になってて……ちゃんとリンゴの皮と身の間に隙間があり、所々不格好だけど一目でウサギリンゴだと判る形状で……暗城雲雀の闇魔法シャドウガーディアンの強度と精密操作性を物語っていた。
暗城雲雀はこのシャドウガーディアンの方が得意だし、影を様々な形状に変化させ防御も可能で、遠くの敵にはサンダーショットと遠近両用型。
「ずっと同じ威力の火の玉投げてればいいって聞いたけど……もう、ひばりちゃんが大分消耗させたから、今から30分持たないんじゃあ……」
少し時間が戻って暗城雲雀と交代した試験官は西郡灯花……その魔法は大きな火柱を浮遊させながら自在に捻じ曲げて生き物のように対象を狙うバーニングスネーク。
分厚い炎の壁を発生させるフレイムウォールの方は消費が大きい……
バーニングスネークは球状にも出来るので、今回はそれで出力を抑えた炎の弾丸を連射する。
「この威力なら撃ってる内に魔力が回復してくから、30分続けるのは問題無いけど……精神的に厳しい。誰か、話し相手になって……」
暇潰しに連射速度を上げるなどして過ごしてる内に西郡灯花の存在に気付いた暗城雲雀が近付いて来て……西郡灯花と少し会話する。
「ひばりちゃん……手伝って」
「分かった。あと何分したら交代して欲しい?」
「違う……退屈だから適当に話し掛けて! 中の人も暇過ぎて寝ちゃったし!」
「つまり一度展開したバリアが使用者の意識が途切れても解除されないって事ですかにゃ……さっきまで本読んでたよね」
そしてバリアが展開されて1時間が経過し、アナウンスで指示が追加される。
「あと40分頑張って欲しい……やるしかないにゃ」
「じゃあ交代交代でのんびりやろうか……最後は畳み掛ける感じで」
「あれからバリアが全く弱まった感じがしないにゃあ……あ、中の人が起きて読書を再開したにゃ」
そして暗城雲雀と西郡灯花が連射速度を落とさない程度に互いに励まし合いながらバリアへの射撃を続け……バリア開始から100分が経過しアナウンス。
「そこまで。暗城雲雀、西郡灯花……お疲れ様。これで迎撃テストに新たな記録が刻まれたわ」
「学園長……何がやりたいかは判りますが試験官のやる事が地味過ぎて泣けます……でもお声掛けありがとうございます」
「中の人がまた寝てしまったにゃ……塔子ちゃん起きるにゃー!」
アナウンス……つまり学園長、放雷絵磨十射が発言し西郡灯花の泣き言の後、暗城雲雀がシャドウガーディアンを発動し鈍器形状にしてバリアを殴りまくる。
「無駄よ暗城雲雀。そのバリアは振動も防護するから展開中は外部の音が聞こえない……集計が出たけど100分間でのべ5万発越えは悪くない数値だわ」
「これ塔子ちゃんが起きないとバリア展開したまま何じゃあ……こんなに耐久のあるバリアを最初の魔力消費だけで生成出来る何て……」
「もう少ししたら持たせておいたアラームを鳴らすから、それで起きる事を祈ってなさい」
「あら、アンもトモカも来てたのね」
学園長、西郡、学園長が喋る中、恵森清河が現れる……ちなみにアナウンスと言ったけど、学園長はカエルをデフォルメした小型機械から音声を発してます。
「恵森清河には考案中の戦闘試験をやって貰ってたわ……後日、貴方達にもやって貰うから……それじゃあそろそろ枚南塔子を起こしましょう」
学園長がそう言うと塔子はアラームの音が効いたのか目を覚ましバリアを解除……ちなみに学園長はこんな口調だけど幼女に相応しい声色で喋ってます。
「塔子ちゃん起きた! これで皆でラーメン部のラーメン食べに行ける! もなちゃんとまなちゃんも誘ったよー!」
「ふわぁーい! 行く、行く! あ、行きます」
寝起き声で塔子はそう叫び、丁寧な口調に正そうとした。このあと出発するんだけどその道中、恵森清河が少し重い口調で呟く。
「マナナの魔法……決して落ちこぼれじゃないんだけど」
「落ちこぼれなら私の氷魔法ですよ……凍らせてはいるけど全く冷たくない」
「マナナもトモカみたいに複数の魔法が使えればまだやりようもあったのに……射撃も迎撃も彫刻も……あれじゃ本当にどうしようも無い」
「あ、モナちゃんとマナちゃんだ! おーい!」
恵森、西郡、恵森、塔子と発言し、今の会話の内容が再び持ち上がる事無く、麻雀部6人総出でラーメンを食べたわけだけど……急だけど話が数日後になる。
ちなみに塔子が読んでた本は恵森清河から借りた、麻雀中級者向けの本です。
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