第7話 【速報】15歳女性教師、生徒たちにワインを振る舞う
「塔子ちゃん」
「ブロンズバッジ……」
「おめでとー!」
「最初の試験で魔法実技戦闘部門完全制覇、成績優良、魔法実技試験迎撃部門において驚異的な記録を樹立……ブロンズバッジ取らない方がおかしいわ」
逆から並べると、恵森清河、北内桃奈子、西郡灯花……つまりここは麻雀部室だと思えるけど……最初に発言したのが茶遠一なのでそうでは無いと判る。
「ありがとー!」
「入学して2か月ちょっとでブロンズバッジ……快挙ですにゃ」
「もう私にとって塔子ちゃんは雲の上の存在なの……」
「ここあちゃんも嬉しいよー! もう塔子ちゃんの担任でいられるのもあと僅かかもねー……」
塔子の後に暗城雲雀、岩瀬麻七が発言……ここは恵森清河の自室で部屋半分は映像素子充満領域なので恵森清河はここで麻雀をする事も可能だけど、主に過去の対局を再生して牌譜検証する……
塔子たちがいるのは映像素子が無い方だけど、皆が部屋に入ってからアリスが出現し、今もこちらの様子を眺めてる。
そして最後に発言したのは
佐野山先生は生徒がつまづきがちな科目を重点的に教え……補習や追試の時も大半を担当……だから佐野山先生との付き合いが長い生徒は
「だから今日は食材を大奮発! ここあちゃんが大人の頃に購入した料理用の赤ワインと白ワインを提供して三ツ星レストランクラスの料理レシピを解放! アルコールが飛ぶとは言え未成年にお酒を与えるのは問題だけど……ここあちゃんは可愛い塔子ちゃんの為にちょっと無理をする!」
「ベータの特権ですねー……ニュー・クリアで年代物のお酒は一気に無くなって……被害を免れた年代ものワインの価格は高騰の一途で、ひと財産なのに」
「お、お肉も船気先生がすっごくいいのくれたから、本当に三ツ星の味に届いてるかも!」
「茶遠ちゃん。今夜は難しい事考えずに楽しめばいいけど……これがベータを受け入れた結果の光景だって事を知っといて。開き直ると本当に楽しいよ、ベータは……」
「あ、この部屋。アルファ、ベータ、ガンマ揃ってるんだ、それって……」
「
西郡灯花の発言に茶遠一が狼狽えて反応し、それを佐野山先生が見逃さずに拾い、塔子が言うと岩瀬麻七が呟いた……さて市民位の解説が始まると見せかけて……ラバロン学園のバッジの説明……ちなみにバッジは累積ポイント制に近い。
バッジはペーバー、ブロンズ、カッパー、シルバー、ゴールドと5種類だけど……ペーパーは不名誉なので実質4段階あり、塔子が今付けてるバッジの色は青銅色で、バッジ保有者は私服を着る事が許可され、初期制服を維持する事も可能。
ブロンズバッジは軽い失態で簡単に外れる程度のポイントしか無くて、ブロンズを維持し続ければカッパーに昇格する。
カッパーからブロンズへの降格もあるけど、カッパー以降は上限無くポイントを貯められる……
だから同じカッパーでもあと1つ大きな功績を出せばシルバーに昇格する状態と、次の失態でブロンズに降格するなどポイント状況が様々……暗城雲雀と西郡灯花がごく最近、前者の位置まで来れたけど……その最後の決め手に恵まれぬままポイントが徐々に減って行くというのは、よくある事……
さて食事中、佐野山先生がこんな発言。
「はーいみんなぁ……ここあちゃんの話を聞いてー! この度、塔子ちゃんがブロンズになったのを記念して学園長が明日の休日は塔子ちゃんが外出する事を許可しました……はい、ここで問題です! この学園において外出許可とは何を意味するでしょうか! 桃奈子ちゃんどうぞ!」
「え、私! えーと……ラバロン学園は学園型独立国家なので、その外に出るって事は……海外に出るのと同じです」
「正解! そしてこの度、学園長指名の子を連れて行く事を条件に、塔子ちゃんは好きな友達を指名して同行させる事が出来て……その子が問題を起こせば塔子ちゃんの責任になります」
「外出かー……怖いけど行ってみたいなぁ……私には無理だろうけど」
「来年は行けるよう、頑張るの……」
「じゃあ北内先輩と岩瀬先輩と、はーちゃんを連れてく……ます!」
「え?」
「え……?」
「経験者も1人くらい同行した方がいいわね……アン、トモカ……どうする?」
北内桃奈子が回答するや佐野山先生が更なる情報を述べ、北内桃奈子と岩瀬麻七がぼんやりと呟くや塔子の発言で両者困惑……そして恵森清河の提案に……
「じゃ、私行きます部長……ひばりちゃん行きたかった?」
「にゃー……アンはまた今度でいいにゃ……この外出で問題起き無ければアンが連れ出し易くもなるし」
「それじゃあ申請に必要なファイルを作成するよー……送信っと!」
「今リオナがパスポートとビザの簡易版を作成してるわ……余程の事をしなければ、その場で殺処分とか無いから普通に旅行してれば帰って来れるわよ」
「が、学園長! いつの間に……というか外の街でやらかしたら殺処分って噂、本当だったんですね……」
「嬉しいなぁ……こんなに近くまで来れるようになってるよ……リオナちゃん、ありがとう」
「アリスがすぐ傍まで来てる……なるほどね」
西郡灯花が名乗りを上げ暗城雲雀が発言し、佐野山先生が外出生徒の情報を手持ちの端末で入力して少し経つと塔子たちの食卓のすぐ傍に学園長が出現し発言……それに北内桃奈子が反応し、ずっと遠くで黙って眺めてたアリスまで傍に来て呟いたのを見て、恵森清河が事態を把握しながら発言し、岩瀬麻七が呟く。
「あ、映像素子はリオナさんが制御してるから……」
「密閉カーテンを一部開放して、十分な量の素子をここまで運ぶ事だって出来る……映像素子の1つ1つを制御出来るんだから」
「映像素子は人体に無害とはいえ吸引や吸着とかし過ぎたら除去というか回収する必要があって……部室から出た後は処置を行ってるけど、本当にすぐ終わる」
「これで今の私が映像だって事が判ったみたいね……」
「あの、学園長……いいんですか? 私はペーパーバッジ取得者なんですよ……それにしても殺処分って……」
「システム内に生じた不具合は取り除く……システムに害を成すものは削除する……それを人間相手にやってるだけよ。北内桃奈子、貴方が今まで私にダンボール工作させた要因は犯罪的な前科とは無縁のもの……素直に旅行してれば何事も無く帰国出来るわ……各自晩御飯までには帰って来るのよ」
恵森、西郡、学園長と発言し、北内桃奈子の問いに学園長は毅然とした口調でそう言った……ちなみに学園長の服装はこないだと同じ水色カエルコート。
「そういえば同行者って……明日会うから、いいか」
「さっきからずっと私の隣にいるわ……今こっちの動きと対応する映像を出すけど……ユウ、ちゃんと挨拶するのよ?」
塔子が発言し学園長がそう言うと、学園長の隣に新たに人物が現れ……その少女は下位制服を着ててバッジも無く、後ろ髪は首を隠し切るには少し足りない長さで髪型にも特に工夫は無く、その色は赤肉メロンがかなり薄くなった色で、瞳はペリドットの中でも薄い色が該当……
背丈は低めで胸の膨らみ具合は恵森清河に届かない……そんな女子生徒が懸命に口を動かし、何とか挨拶をする。
「こ、こ……こんばん、わ……み、
「ユウ、よく出来ました。ユウは私が何かと面倒を見てる子で娘みたいなものね……注意点は……ユウが穴に落ちないよう目を離さないで、でいいわね……ユウ、許可されたものしか触っちゃダメよ? ズタズタに引き裂かれたらもう面倒見切れないわ」
「あー……」
「ひばりちゃん、どうかしたの?」
「……何でも無いにゃ。まさか見れるだにゃんて……」
「見たい者は見なさい……そういう事よ」
学園長、暗城、西郡、暗城、学園長と発言し、ここでアリスが少しの間、姿を消し……水川悠が何やら目を丸くしてると思ったらアリスは元の位置に戻った。
「……アリス。突然ユウの目の前に現れて何気なく横切って消え去るって、本当に当たり障り無いわね……」
ここは水川悠の目の前に逆さまで登場して、わっと一声掛ければ少し驚かすだけの悪戯も出来るのに……それを学園長が言ったように中途半端な形で済ませた。
水川悠は小心者だから、かなり驚いただろうけど……このようにアリスは学園内の映像素子領域を大抵は自由に行き来可能……そんなアリスの今の表情は緩やかに微笑んでいました……じゃ、次の日行こうか。
「入国審査完了と言われるやゲートが開いたの……」
「魔法の使用は禁止って……そりゃそうだよ」
「魔法……使えない、です」
「塔子ちゃん。誘ってくれてありがとー」
「あー、塔子ちゃんの迷惑にならないよう……気を付けるよ! 私!」
「私はそこまで久しぶりじゃないし、はぐれても居場所が常に取得されてるのは学園内と同じだから、昨夜全員の携帯端末の連絡先交換し合ったから落ち着いて行動するだけかな」
「じゃー、進もっか!」
岩瀬麻七、北内桃奈子、水川悠、茶遠一、北内桃奈子、西郡灯花が発言し、塔子が出発を宣言してゲートを
すぐ目の前の部分的な映像素子領域に光の粒子が集まって行き……それは少し黄色っぽいオレンジ色だけど何かの形になったかと思うや光は煌びやかな印象の音と共に弾け……
手の平に乗るサイズで、髪も服も爽やかなオレンジの皮と果肉の色で構成されたような右サイドテールの少女が塔子たちの目の前に出現し、服の所々にライムグリーンが施され、瞳の色と背中から生えた2対の虫の羽もその色で……
肌の色は普通……上はノースリーブ、下は生足なのに対し、胴体部分の露出は結構控えめで靴も履いてます。
「ようこそいらっしゃいました……」
そんな胸の膨らみも気持ち程度はある小型妖精は元気な声で喋った。
「私はたった今、自動生成されました! 名前はシトラとなりました! 我らがオウカ様に代わり、この私が本日の皆様を案内し、快適なものとなるよう努めさせて頂きます!」
「私の時はラズベリーカラーでラズベルって名前だったなぁ……」
「
「元気過ぎるから、もう少し落ち着いた性格にならない?」
「畏まりました枚南塔子さま。それではご案内致します……」
「わ、一瞬で変わったの……」
西郡灯花が自分の時の事を思い出し、シトラが元気声で発言し、塔子が注文するやシトラは落ち着いた口調になり、その急変振りに岩瀬麻七が静かに驚いた。
「我らがオウカ様が管理する国家――ヴェノスを……」
シトラはすっかり落ち着いた口調でそう言ったけど……第六のイーリス、リオナがいるラバロンは地理的には、このヴェノス領土内の内側に位置し、オウカの管轄対象から独立している。
ヴェノスもまたニュー・クリアにより国土が大分縮小したけど……その結果国内の全てをオウカが問題無く管理出来る処理量に収まったとも言えるね……人工島みたいなのを作る技術はとうに確立されてて、地図上に空いた大きな穴を完全に塞いだ例は世界各地に結構ある。
ヴェノスはかつての地図通りの形へ戻る事には固執しなかったけど……少なくとも大きく抉られた箇所は補強されてるよ……人口が密集してる為、かなりの消費者がいて国際的にも主力市場……
そんなヴェノスは第三のイーリス『オウカ』の支配域で、市民位の制度は大戦後の復興時期にオウカが独自に作成し、発表したもの……
つまり市民位制度とはオウカが発明したシステム――そう言えるね。
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