誰おま回 その③~廻り始める僕の人生(だが〇〇と共に)~
初対面では思わず突撃してしまった僕も、オフ会で唯一うちとけられなかった少女となると、楽しみで嬉しい半分、不安で逃げたい半分になってしまった。
隣で歩いてみると華奢さから分からなかったが、女キャラとしては高身長の原作のユイより、もっと身長はありそうだった。身長が156㎝と小さい方な僕は、常に見上げる形になってしまってなんだかくやしい。そして、そしてだ。
(えっ どうしよう…?話題……??)
明らかに困っているのが伝わってしまったのか、だが、自然に少女は口を開く。
「Twitter、やってるんですか?」
ヒト好きのする穏やかな微笑を湛えて聞かれて、同性なのに僕はきょどって、また暴走を始める。
「うっ、うん!あっさっき配っちゃって、余り無いんだけど、一応…同人名刺?みたいなのも作ってオフ会来たんだ。ムーンさんにも渡したかったな…。」
ん?待てよ…
「あっでも絶対知らないと思う別小説キャラの名刺なら…」
口走ってしまってから、あぁ、アシッド+2のオフ会という繋がりしかないのに、別の更にドマイナー作品の話題とか、自分のアホさ加減に嫌気がさしていると、先ほど口走りながらご丁寧に出しかけていた、”ふーあ”という(別名 風話)小説キャラ2人を一応は自分で描いた名刺を、少女は自然な動作で受け取ってくれた。
「ああ、風話ですか、今読んでますよ。 お…わたしも」
サラリと爆弾投下してくれるな!と内心おかしなほど動揺していた。
「は?え?だってコレ絶版だし40年くらい前のクッソドマイナー小説…あ゛」
口調がおもくそ通常運転になってしまって、なんだかだんだん軽くかぶっていたつもりの猫が煩わしくなってきた。が、何故か今日1、少女のリアクションが良い…と言うより、笑っている。
「アンタ、そっちの方が良いよ」
何だかずるいなムーンちゃん。
…一瞬男子と話してる気分になったよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
僕たちの生活圏は驚くほど近くて、「なんで今まですれ違ったりしなかったか不思議ですね」と言われたが、まさかそこで「あ、ほぼ引きこもりだからです」と答えたら台無しである。
素の僕を出したら逆に打ち解けて、オフ会で話せなかった分を補うかの如く、エンドレスでお互い作品について話し込んだ。
(今日はなんて良い日なんだ…!!)が、僕は知ってる。今日は終わるし、その前にムーンさんともお別れだ。
「あ、じゃあ、僕コッチだから、今日ありがとう。」
…なんて月並みな…これで2度と会えないだろうに…と悔しがっていると…、
「あ、コレ、大事にしますね。」と言って僕のTwitterが載った名刺を見せてくれる。もうだめだ。普段ヒトといない分、僕はヒトとの距離感でいつも失敗する。帰ろう。帰らなきゃ…!1、2m進んでから、でも、と浮かぶは、”ふーあ”の事。
(…アシッド+2の事語れて、かつ風話今読んでる子と次出会える可能性・・・?)
「
「あの…迷惑…ってか、嫌じゃなかったら、LINE…」
「あぁ、いっすよ」
何だか拍子抜けする程、軽~く受け入れられて、笑ってしまった。
それでも僕はあまり信じてなかった。この先もこの子と話せるとか、次また会えるとか、そんな展開は、僕の中に存在しなかった。今日が魔法にかかったみたいな日で、明日からは僕は独りの部屋で、現実とも世界とも、あえて隔絶して日々を過ごすのだ。小さくて狭くて時々、苦しいほど完璧な、僕の城の中で、
―――――――僕が死ぬまで。
本と電子とリアルが激動して逝く。 白城ショウ @hakuzyou-0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。本と電子とリアルが激動して逝く。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます