誰おま回 その①~廻り始める僕の人生(だが〇〇と共に)~
「来ました!ついに来たぞ今日が!」
平成〇〇年4月某日、普段は上の階の住人に遠慮して、出さないでいたが、今日ばかりは、と大声を出してしまう。サブカル系と言えるほど学も頭も良くないヒキコモリの僕が、外に喜々として出かけられる日。
カレンダーはムダに3つあって、卓上、フリーのをネットで印刷して一ヶ月分だけのがTV側の壁に、そして何かの特典だったものが玄関につるされている。
その全部に、我ながらバカじゃないのか、というくらい、楽しみそうなマークが三種三様にカレンダーを飾っていた。青と緑で星が描かれていたり、ピンクと黄色で実在はしないだろう花が描かれていたり、オレンジと紫で自分でも理解できない謎の模様が記されていたり。かろうじて残っていた理性が、全くキャラじゃないハートマークだけ除外してくれていて本当に良かった。
「…はしゃぎ方暗い?びみょうくね…??」
世界とのつながりが希薄過ぎる僕には、一般常識というか、いわゆる、「ふつう」という感覚が全くピンと来ない。
「まっいっか!いいのいいの!飯食って、着っがえ!」
流石に家で読書かまだ見ぬ本の情報をPCで検索しているかの生活をしていても、毎日珈琲とカロリーメイト、という訳ではなく。かと言って料理ができるかと言うと…”レシピ通り作る”という事は、全くできなくもないのだが、ありえないくらい時間がかかってしまう上、思ったより自分好みじゃなかったり、失敗したり…調理に使ったキッチン用品の片づけがめちゃくちゃめんどくさかったり、で、あまりしない。代わりに、ありあわせの材料で適当な創作料理をよく作る。”謎炒め”シリーズは僕の中で定番だが、いくら神がかり的に美味しく出来る奇跡が起きても、二度と同じ味は再現できないという、諸刃の剣…というか、幻の料理である。
「今日は外でまともなの食べてくるし、残ってたみそ汁と…あぁ、卵かけご飯でいっか。TKG!あ、アボカドとマヨも一緒に食おう。絶対美味い…。」
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「ヤッベェ!時間!!」
外に出ないLv.は実はそれほど高くない。スーパーとかに買い物にフラっと行くし、コンビニで週刊の漫画雑誌なんかもただ読みに行く。何が僕を引きこもりだと思わせるかと言うと、それはヒトとの会わなさだ。友達は昔いたけど、今も友達とカウントしていいのか躊躇してしまう。みんな働きにだったり、進学にだったりで県外に出てしまったから、簡単に会いに行ける距離でもなくなってしまっていた。
年に数回、会うこともあるけれど、僕の生活が引け目過ぎて、ちゃんと自立している友達が眩しすぎて、子供の頃の様に楽しい気分だけで会えないのがまた辛い。
だが今日は。
ネットでコアな小説のファンサイトがあり、その掲示板にオフ会のお知らせがあったのだ。掲示板はかじりついて作品考察したり、キャラクターの魅力について話したり、HNの付き合いとは思えない程、そこは僕の居場所だった。―――のに!
「ホンっとに今日だけは遅刻できねんだっつの💢💢!」
昔なじみに、遅刻魔で通っていて、甘えて直そうとしなかったことを、心底後悔していた。
― 誰おま回その②へ続く
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