第2話 力

今俺たちは食堂(という名の広間)で大理石の大きな長机前に座っていた。

「で、なぜ私たちを呼んだのか詳しく説明していただきましょうか」

希望は敬語で話してはいるものの、かなり無愛想に喋っている。

「ではまずこの世界のことから話しましょう。」

そう言ってガスティアはこの世界について話し始めた。

「まず初めにこの世界の名前はエルダーマティア。もっともこの名前は他の世界と差別化するためにつけた名前なので皆、知ってはいるもののあまり日常会話では使いませんがな。」

つまりこの世界の名前は常識ではあるが使う機会が少ないんだな。

ガスティアはさらに続ける。

「次に、皆様の世界にはステータスや魔法といったがいねんは存在したでしょうか?」

みんながいっせいに首を横に振った。

「わかりました。ではまずステータスについて、御教えしましょう。」

そう言ってガスティアはステータスについて説明し始めた。

「この世界では自身の強さはステータスという数値で表されます。

この数値は高ければ高いほど優れているということです。

次にスキルですが、これは、ジョブスキル、クラススキル、そしてスキルの3つに分類されます。基本的にそれぞれで一個づつです。ただし、例外もあります。

まあその話は良いでしょう。

次に魔法ですが、これは個人の魔力の属性により決まっています。

つまり、自身の体に流れる魔力の属性しか扱えないということです。

また、同時に複数の属性を使える人は魔力を生み出す期間が複数あるということになります。

つぎにできることですが、まず、基礎魔法と属性専用魔法の2つがあります。

今確認できている魔法の属性は、火、水、風、土、闇、光、聖、生、無があります。

基礎魔法は魔力の塊を作り出し打ち出すボール系、

それを形状変化させたアロー系

そして自身の魔力属性をものに付与するエンチャントがあります。

属性専用魔法は量が多いので割愛させていただきますな。

ここまでで質問がある方はいらっしゃいますかな?」

「はい、このステータスの数値はどの体の部分と対応しているのでしょうか?」

光がした質問にガスティアは、

「それは後日王国騎士団長に聞くと良いでしょう。」

と、今は説明しなかった。

「他に質問はないですかな?では皆さんお腹が空いたでしょう。存分に堪能ください。」

ガスティアがそう言うと大量の料理が運ばれてきた。

なるほど、たしかに美味しそうだ。

皆料理に目が釘付けだ。

俺は料理を知り目に、ガスティアを「観察」した。

(フッフッフ、出だしは順調このままうまくいくといいがな。)

やはり胡散臭い。

まだ今は観察しておくことにしよう。

その後俺は、運ばれてきた料理を周りの皆と同じように楽しそうに食べた。

味は現代の高いグランドとか付きそうなホテルのレストランと同じくらいだと思う。

普通に美味しかった。


☆――


皆が食べ終わった頃にガスティアが、

「それで魔王討伐、どうでしょう。受けていただく気になりましたか?」

と皆に質問した。

俺は依然ガスティアを「観察」している。

希望が言った。

「どちらにしろ今は帰れないんだし、しょうがないですがやるしかないでしょう。

みなさんも、文句ないですよね。」

皆が首を縦に振った。

今の希望の言葉には妙な説得力があった。

スキルでも使ったのかもしれない。

皆が首を揃えて縦に振ったのを見てガスティアが、

「皆さんありがとうございます。これで我々も助かります。」

といった。

そのあいだガスティアは

(第二段回も成功。これはうまくいきそうだ。)

などと考えていた。

ついでに希望も「観察」してみたところ。

(このスーパースターという力、、。すごいぞ。フフ、僕はこれで皆を想いのままにできる。やったぞ!ハッハッハッハッ!)

なんともゲスな妄想をしていた。

まさかここまでゲスとは。

というか希望がゲスとか初めて聞いたぞ。

「とにかく今日はお疲れでしょう。部屋も用意させてありますのでどうぞごゆっくりお休みください。」

ガスティアがそう言うと同時に、周りにいた侍女が動き出し俺たちをそれぞれの部屋に案内した。

そうして用意された部屋を見ると、確かに王城らしいとても豪華な部屋になっていた。

俺は今日あったことを振り返った。

俺たちが召喚された理由は魔王を討伐することと言っていたが本当にそうなのだろうか?

それに、今気がついたが、もしかしたら他にも同時に召喚された人がいるかも知れない。

それに俺のスキルとステータス。

ステータスは弱いが、スキルとMPだけが異常に強い。

これも気付かれないようにしなければ。

とにかく今は突然環境が変わってストレスがかなりかかっているかもしれない。

とにかくこれらのことは明日考えよう。

そうして俺はベッドに飛び込むと、今日の疲れを癒やして明日に備えようと眠りについた。

一握りの不安と期待を胸に。


☆――


次の日、俺たちは騎士団訓練場に集められていた。

眼の前には甲冑を着た身長の高い青髪で碧眼のヨーロパ風のきれいな女性が立っていた。

「今日から君たちの監視役になった王国騎士団長のエリシアだ。

今日は君たちの戦闘適性を見させてもらおうと思っている。よろしく頼むよ」

そう言ってエリシアはきれいな笑みを浮かべた。

「じゃあ一列に並んでステータスを表示しておいてくれ」

みんなが一列に並び、一斉にステータスを表示させる。

俺も表示させ、待機しようとして一瞬思いとどまった。

俺はスキルが周りと違いすぎ、同じ職業も見かけず。

何より、MPが異常に高い。

俺はその性格上目立つことを嫌う。

どうにかして隠すことはできないか。

そう考えていると、ふと、ステータスが周りと比べて平均的に変化した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前:宿木傀儡

年齢:17歳

職業:魔術師

クラス:傀儡

レベル:1

レベル上限:70


ステータス

HP:500

MP:600 

生命力:400

筋力:400

魔力:500

守備力:200

魔法守備力:500

精神力:300

瞬発力:200


魔力属性

闇、無


スキル

 クラススキル:傀儡

  ジョブスキルの使用不可


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

確かに平均的なステータスなのだが、スキルがほとんどなくなっている。

ただ、そのおかげで目立つのを回避できた。

エリシアさんが過ぎるとステータスが戻り、

MPの右側にに「/」がついてその隣に残りのMPだと思われるものが表示されている。

つまり今俺は魔法を使ったことになるのだろう。

そしてスキルの仮面によって、エリシアさんが気づかない程度の補正がついたのだろう。

(後で聞いた話だが、エリシアさんの観察眼はすさまじく、

 並みの隠蔽魔法では速攻で気づかれるそうだ。)

「皆のステータスを見せてもらったが皆素晴らしい!勇者のクラスが五人もいるとは!」

エリシアさんが話している間にエリシアさんのステータスも見せてもらった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


名前:エリシア

年齢:24歳

職業:魔法戦士

クラス:騎士(kingdom)

レベル:50

レベル上限:50


ステータス

HP:620

MP:530

生命力:600

筋力:550

魔力:500

守備力:600

魔法守備力:600

精神力:700

瞬発力:600


魔力属性


ジョブスキル:エンチャンター

魔法のエンチャント時消費MP減少、

更に対象者にかけることも可能。

(複数人にかけることも可能)


クラススキル:栄誉

ステータスの強化。


スキル:守護者

一定時間行動不能になる代わりに、

敵の注目を集め防御力を上昇させる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

すごかった。特にレベルがカンストしている。

更にスキルもすごい。

今の所、スキルは基本的にその人の性格や思いに左右される傾向にありそうだ。

つまり、エリシアさんの誰かを守りたいという思いがこのスキルを生み出したようだ。

その心自体は美しいと思ったが、

やはり彼女も他人に見せない仮面で覆われた一面があるように思われる。

とそんな事を考えているとふと、5人勇者がいるという言葉に違和感を覚えた。

そうして、周りを見回していると。

いた。

前回見たときには見かけなかった顔だ。

俺はまだ知らなかった。

その勇者ー少女との出会いが俺の人生を一転させるということに。


☆――


その勇者ー少女はとても整った顔立ちで彩乃とは違うタイプのかわいい少女だった。

最初のときにいなかったその少女のステータスをのぞかせてもらった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


名前:愛結 蒼(きずな あおい)

年齢:17歳

職業:聖女

クラス:勇者(kingdom)

レベル:1

レベル上限:99


ステータス

HP:500

MP:700

生命力:700

筋力:300

魔力:800

守備力:300

魔法守備力:600

精神力:800

瞬発力:300


魔力属性

生、聖


ジョブスキル:聖なる者

生魔法使用時の効果補正


クラススキル:英雄

ステータスの大幅強化、更に成長率が大幅に上昇する。


スキル:ジャッジメント

他人の悪意を読み取ることができる。

また自身を含めた味方への攻撃を、MPを使い退ける。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

見たところ回復系だろうか。

結構強い。

聖属性も持っているとは思わなかった。

それにしてもスキルを見たところ正義感が強そうだというところもわかる。

まだ彼女はオロオロしているようで、まだ彼女が正確にはどのような人物かはわからない。

「早速訓練と行きたいところだが、

まず君たちにそれぞれの装備を進呈したいと思うからついてきてくれ。

それと、私のことはエリシアでいい。硬いのはあまり好きでなくてな。」

エリシアはそう言うとみんなを案内し始めた。


☆――


エリシアが連れてきてくれたところは倉庫のようなところだった。

真っ暗でジメジメしていそうなところだがそのようなことはなく、

むしろ外より快適かもしれない。

「ライト」

エリシアがそう言うと周りに光が一斉に灯る。

明るくなるとそこにはいろいろな武器や防具その他小瓶など、

様々なものがたくさんの棚とともに置かれていた。

「ここはこの国に古くからあるオーパーツと呼ばれる武具を集めた倉庫だ。

ちなみにオーパーツとは現在の技術では再現不可能な武具その他アイテムのことを言う。

ここにある武具で君たちの職業にあった好きなものを持っていってもらおう」

まだみんなは少し困惑気味だがエリシアさんに言われたように武具を選びだした。

俺も選びに行った。

棚は職業別に分かれているようで俺は一応魔術師の棚に行った。

何がいいか一通り見ながら回っていると、何故か惹かれる武器と防具があった。

防具の方は黒いジーパンのようなものに、

黒を基調とした白いラインが入った長袖のTシャツ、

そして黒いフード付きの外套だった。

とても厨ニ臭い。

それにイキってそうだ。

だが、その厨ニ臭さとは別に何故かこの装備に惹かれた。

うん、どちらにしろ厨ニ臭いな。

ともかく防具のほうはそんなところだった。

そして武器だが、これは武器と言っていいかどうかさえ怪しい代物だった。

何の変哲もない白い立方体。

強いて言えばルービックキューブのような溝があった。

大きさは一辺約10cmだろう。

なかなか小さかった。

俺が武具選びに夢中になっていると後ろから突然、

「それでいいのか?」

突然後ろから声をかけられ少し焦って振り返ったがエリシアだったので、

「はい。これにします」

と言った。

エリシアは少し困った顔をして、

「それでいいのか?その防具はともかく武器はとても微妙だぞ?」

詳しく聞くと、この正方形は、魔力で極限まで圧縮されてるそうで、

使うときは27個の正方形にわかれるそうだ。

大きさも一つが一辺50cmになるそうで、それが自分を取り巻くように展開されるようだ。

展開しているときは常に微量のMPが消費され、さらにMPを消費することによって、

自分の好きな形の色の武器に変形させることができるようだ。

一つ気になたことがあったので質問してみた。

「魔力によって圧縮されているのなら、どこから魔力を供給しているんですか?」

「この武器の構造自体は大体わかっているが、そこだけがわからないんだ。

だからこの武器はオーパーツになっているんだ」

と教えてくれた。

とりあえず、装備はこの2つをもらておくとして、俺は訓練場に戻った。


☆――


エリシアはみんなが倉庫から帰って来たことを確認すると

「みんな聞いてくれ。これから訓練を開始するのだが、

まずステータスについて一応説明しておこうと思う。」

エリシアの説明が長かったので要点だけ説明すると、

1つ目HPについて。

これは自身の命の強さでこれは物的外傷により減少しHPがゼロになると死に至るらしい。

二つ目MP。

これは自身が魔法を何発打てるか表したもの。

原則としてMPを使う量を上げても魔法の威力は上がらず、放つ数が増えるだけらしい。

つまり連射ができるということらしい。

3つ目生命力。

これはHPとは違い自身の自然治癒能力、致命傷を追ったときのHPの減る速度、

毒への抵抗、そして出血時のHPの減少に関係しているようで、

これは高ければ高いほどいいようだ。

四つ目筋力。

これが少しややこしくその名の通り純粋な力だけでなく、

足の速さにも関わってくるらしい。

本当に「筋肉」の「力」だ。

5つ目魔力。

これは自分が使える魔法の強さを表したもの。

これが高いと魔法の威力が上がるようだ。

一部例外もあるらしい。

6つ目守備力。

これは自身が体に無意識に貼っている障壁だそうで、

これの強さがダメージを軽減したりしてくれるらしい。

7つ目魔法守備力。

これは守備力の魔法版のようだ。

8つ目精神力。

これはMPが切れたときの倦怠感、そして精神攻撃に関係している。

高いほうがこれもいい。

9つ目敏捷力。

瞬間的な筋力の使用に関係している。

高ければ、ステップや剣の振り抜きが早くなる。

これがステータスに関する要点だ。

次にエリシアは魔法の発動の仕方も教えてくれた。

魔法には大まかに分けて詠唱が必要なもの無詠唱で発動可能なものの2つに分けられる。

詠唱が必要なのは攻撃系。

精神干渉や、その他は無詠唱で発動可能だ。

詳しくはあとで魔法の先生に教えてもらえと言われた。

「それではそれぞれの場所で職業別の訓練をしてもらおう」

そう言われて僕たちは、まだ少し残る困惑とともに、それぞれの場所へと移動した。


☆――


今俺たちは魔法職専用の訓練場に来ている。

王国騎士団に所属する魔術師からまず魔法の使い方について教えてもらった。

前に行った通り攻撃系魔法には詠唱が必要とのこと。

肝心なその他についてを教えてくれた。

その他はイメージで発動できるそうだ。

攻撃魔法もイメージで発動できるらしいのだが、人間の脳には少しキャパオーバーらしい。

それと、詠唱は魔力操作の補助も含んでいる。

ということでこれからやる訓練は精神統一ということだそうだ。

一時間もみっちり座禅をした。

まさか異世界に来て座禅をすることになるとは。

しかも魔術師の人も遠慮なく寺でそうするかのようにあの薄っぺらい棒で叩いてきた。

なんでそんなものまであるんだと本当に、本当に突っ込みたかった。

とそんな所で今日の訓練は終了というところだった。

ちなみに俺はちょっずるしてスキルを使った。

本当に体が石になったかのように動かなかった。

その間に考え事をしていた。

ガスティアのことやこれからのことについてだ。

さっさと帰ろう。

そう思っていたところを魔術師の方に呼び止められた。

なんでも、俺が無、闇属性しか使えないことがわかったようだ。

鑑定スキルでもあるのかと思ったが。

そうではないようだ。

曰く、長く魔術師をしていると、体から少し溢れ出ている魔力だけで属性もわかるようだ。

そこで無属性と闇属性は、攻撃に活用できるような属性じゃないと言っていた。

ということで、職業は魔術師だが剣の訓練ができるようにエリシアに掛け合うとのことだ。

俺はとりあえず「お願いします」とだけ言って食堂に向かった。

もう夕暮れ時だからだ。

おそらく料理が用意されているんじゃないだろうか。

美味しい匂いがしていることだし。

美味しそうではない。

美味しい匂いである。

これは絶対うまい。

そんなことはどうでもいいんだ。

とにかく俺でも食欲には勝てず食堂へ一直線で向かった。

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