仮面をかぶった救済者

風雅

第1話 召喚

いつからだろう

自分がなぜ生きているのかわからなくなったのは、

いつからだろう

自分の心が、感情が、消え失せてしまったのは、

いつからだろう

仮面を被ったままで本当の自分を忘れてしまったのは、

ーーいつからだろうーー


☆ーー


俺は普通の家庭に生まれた。

何も変わったことのない普通の人生だった。

小学生までは、

小学生になった頃から母の性格が変わり始めた。

急激に怒りっぽくなった。

小学生になったのだ叱るのは当然だ。

俺も特に気にしていなかった。

しかしそれは次第にエスカレートして行った。

ついにはほんの小さなことがあっただけで叩いてくるようになった。

小学生二年生の時の話だ。

そして三年生になった。

担任の先生がとても厳しかった。

漢字に至っては少しでもはねや、はらい、止めが雑だっただけでとても怒られた。

数学も、少しでも式を省略すると怒られた。

何もかもダメ出しされた。

俺は勉強が嫌いになった。

ただでさえ家で怒られているのに。

俺は次第に大人に心を閉ざした。

中学に上がった。

俺は劣等生になっていた。

周りとのカーストも最下位だった。

いじめもひどかった。

寮だったことも相まって、暴力はいつもつきまとった。

物がなくなる、ハブられる。

いつもだった。

もはや日常生活だった。

俺は仮面をかぶって自分を隠した。


☆ーー


授業は退屈だ。つまらない。

しかしやらなければいけない。

みんなは言う。

「勉強したくないのなら高校に来なければいい」と、

しかし高校くらい卒業しなければ安定した暮らしは望めない。

もしかしたらそうではないのかもしれなないが、少なくとも俺はそう思う。

とにかく、授業くらいは一応聞かなければ留年するかもしれないからという理由だけで俺は学校に来て授業を聞いている。

いじめは俺が仮面をかぶり人形になってみんなに近づかないようになってからピタリと止んだ。

それどころか仲良くしようなどと言って近づいてくる人もいた。

人は自分の都合だけで動いてることがはっきりわかった。

と、いつの間にか授業が終わっていたようだ。

俺は次の授業の準備に取り掛かった。


☆ーー


授業が終わって家に帰る。

一応野球部には入っているが、コーチがインフルエンザで休んでいるため自主練になっている。

もちろん自主練なんかには参加しない。

いつもと同じだ。

違うことといえば、

「なあ、一緒に帰んない?」

俺にこんな声がかけられたことだ。

「もしかして俺に言ってる?」

「他に誰がいるんだよ」

俺に声をかけたのは、いつも俺と趣味の話で盛り上がれる数少ない友人。

名前は「白井 光」(しろい ひかる)

俺は光と話す時仮面はかぶるが人形にはならない。

「いや、いつものように1人で喋ってるのかなーって」

「それただの狂人じゃねーか!」

「それにしても、お前から帰ろうとか珍しいな。いや、はじめてか」

「お前が可愛そうだったからさそってやったんだろーが」

「ああそうか、可愛そうだったからさそったと。一緒にかえってくれるんだな」

「ああ、そうだよだからいっしょに、、、」

「だが〇る。このお、、、」

「それ以上はアウトだ」

こんな感じでいつもふざけまくっている。

「とにかく帰ろうぜ。傀儡」

「ああ、そうだな」

俺は、「宿木 傀儡」は、そう答えた。

謎の光に包まれながら。

俺の視界はブラックアウトした。


☆ーー


俺が次に見たものは知らない天井だった。

すぐさま起き上がり周りを確認してみたところ、クラスのみんなが周りにころがっている。

俺と同じように起き上がり不安そうにしている生徒もいる。

何より注目すべきは俺がどこにいるかだ。

建物の中のようだが雰囲気がどことなく古臭い。

そんなふうに周りを観察していると、この部屋の唯一のドア人が複数名入ってきた。

入ってきた人はほとんどが中世の騎士の甲冑のようなものを着込み、若干名は祭祀服のようなものを着ている。

その中で一際派手な服や装飾品を身につけている人がいる。

おそらくこの中のリーダー格であろう。

いつの間にかみんな起きていた。

それを確認してか一際派手な男は

「ようこそ!勇者とその御一行さま!」

と、大きな声でいいはなった。

みんな唖然としている。

おそらく状況が理解出来ていないのだろう。

俺達の中から一人がこえをあげた。

 「ここはどこなんですか。なぜここに連れてきたのですか。場合によっては訴えますが。これは誘拐と同じですよ。」

そう声を上げたのはクラスのリーダーの

「暁 希望」(あかつき のぞむ)

希望と書いてのぞむと読むらしい。初めてあった時にきぼうくんとかいっちゃって若干気まずい空気になった。

今この状況でここまでの質問を考え出すくらいには冷静のようだ。

「まずは名乗らなければなりますまい。

私はガスティア国の王。

名をアズ・ガスティア=バルバロスといいます。以後お見知りおきを。私のことはガスティアとお呼びくだされ」

そう名乗ったガスティアに対し希望は

「ふざけるのもいい加減にしてください!

ガスティア国なんて見たことも聞いたこともありません!もういいです。警察に通報します!」

そういって携帯を取り出した希望は 直後驚きの表情と共に少し震えるような笑いをこらえるような声で言った。

「なるほど、、ここはどこかの地下空間なのですね?ここまでして一体俺達に何をさせようって言うんですか!」

ここに来て皆ようやく思考を取り戻し始め、そして今の状況を理解し怖がり始めた。

「何させるかという問いですが簡潔に言うと魔王を倒して欲しいのです」

ガスティアのその答えにみんなの感情が恐怖から怒りに変わった。

みんな口々に「ここから出せ!」と口々に喚き始めた。

俺はその間ずっと観察していた。

ガスティアの言葉に嘘はないようだがどことなく胡散臭い。

ただここがガスティア国とか言うところなのは間違いなさそうだ。

誘拐にしては共犯者が多すぎる。

こんなに人数がいては確実に足がつく。

さらにガスティアは魔王とか言っていた。

ここから導き出される答えはひとつ。

「つまりガスティアさんが俺たちをここに召喚したわけだな」

俺が言おうとしていたことを代わりに光が言ってくれた。

瞬間静かになる。

「何言ってんだ光アニメの見すぎで頭おかしくなったのか?」

煽るようにそういったのはクラスのカーストランク上位の

「秦着 龍志」(はたぎ りゅうじ)

こいつはいつも俺たちカースト下位組に何かと突っかかってくる。

「そうだよそんなわけないって。パニックになったからって私たちまで君の妄想に巻き込まないで!」

可愛い声を出して龍志に同調したのは同じくカースト上位の

「立華 彩乃」(たちばな あやの)

声、容姿共に完璧と十人中十人口を揃えて言うだろう。

うちのクラスの男子は満場一致でいちばんかわいいというようだ。

まあ俺は思わないけど。

変な趣味はない。

ただ彼女は俺と同じように仮面をかぶっている。

俺のように自己防衛ではなく人を陥れるためである。

1度彼女は俺の目の前で仮面を外したことがある。

その時最後に彼女は

「似たもの同士仲良くしましょ」といってきた。

おっと、今はそんなこと考える余裕はなかった。

「分かりました。あなたがたは証拠がないため召喚されたと信じれないということですな」

そういうとガスティアはおもむろに

「オープン」と一言呟いた。

突然謎のウィンドウが現れる。

「皆、このようにしてくれ」

みんながそれを見た途端急に静まり返った。

どこからともなくオープンという声が聞こえた。

それをきっかけに一斉にオープンという声が上がり始めた。

みんな半信半疑といったところだったが、目の前にウィンドウが現れるや否や、顔色を変えた。

顔を青くする者、赤くする者、

だがいずれにしろ、みんなから感じられる共通の感情は恐らく絶望だろう。

 「オープン」

俺もそう言うと目の前にウインドウが現れた。

そこ書かれていたのは、まるでゲームのようなステータスウィンドウだった。

☆――


現れた自分のステータスにはこのように書かれていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前:宿木傀儡

年齢:17歳

職業:管理者

クラス:傀儡(マリオネット)

レベル:1

レベル上限:30


ステータス

HP:100

MP:99999

生命力:100

筋力:50

魔力:200

守備力:20

魔法守備力:50

精神力:100

瞬発力:20


魔力属性

闇、無


スキル

 クラススキル:マリオネット

 使用時、すべての身体的動きを模倣、

 または、自身の体を完璧にコントロールする。


 :傀儡

  ジョブスキルの使用不可、及びステータスの大幅低下


 スキル   :観察

 観察対象のステータスやスキル、思考を把握、

 更に観察者の動きを先読みすることが可能。

(ただし、思考、意思を持たない生物、非生物に対しては

 ステータスとスキルのみ表示)

 :仮面

  闇属性魔法の幻惑、隠蔽効果補正。精神攻撃無効。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


なるほど、これを見たからみんなは絶望したのか。

確かに異世界だと思ったのだろう。

それにしても俺もまだ少し信じられていない。

俺はこのスキルというのを使ってみることにした。

と、思ったが発動に仕方がわからない。

とりあえず頭の中で観察と念じてみた。

すると目の前にまるでシューティングゲームの照準みたいなものが出てきた。

俺が首を振ってもずっと真ん中で固定されている。

その間、周りの人間が照準に当たるとその人のステータスとスキルが左端に、その人の思考が右端にログのように表示された。

というか今すごいものを見てしまった。

なんと、みんなのステータスが全員どんなに低くても400超えだ。

平均でだいたい500くらいある。

ちなみにカースト上位組カースト上位組は、

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前:暁希望

年齢:17歳

職業:パラディンパラディン

クラス:勇者(kingdom)

レベル:1

レベル上限:99


ステータス

HP:700

MP:500

生命力:700

筋力:500

魔力:500

守備力:800

魔法守備力:700

精神力:600

瞬発力:400


魔力属性

光、火


ジョブスキル:絶対領域(LV.1)

自身の周辺3メートルに防御結界を展開する。


クラススキル:英雄

ステータスの大幅強化、更に成長率が大幅上昇に上昇する。


スキル:スーパースター

自身の存在感の上昇。更に自身の発言力の上昇。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前:秦着龍志

年齢:17歳

職業:ウォーリアー

クラス:勇者(kingdom)

レベル:1

レベル上限:99


ステータス

HP:500

MP:300

生命力:300

筋力:800

魔力:300

守備力:400

魔法守備力:300

精神力:400

瞬発力:700


魔力属性

光、土


ジョブスキル:ワォークライ

MPを消費して自身の筋力を上昇値させる。


クラススキル:英雄

ステータスの大幅強化、更に成長率が大幅に上昇する。


スキル:バーサーク

冷静な思考を失う代わりに筋力値を上昇させる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前:立華彩乃

年齢:17歳

職業:ワイズマン

クラス:勇者(kingdom)

レベル:1

レベル上限:99


ステータス

HP:500

MP:800

生命力:500

筋力:300

魔力:800

守備力:300

魔法守備力:600

精神力:700

瞬発力:400


魔力属性

光、火、水、風、土


ジョブスキル:精密運用

魔法使用時、消費MPが減少する。


クラススキル:英雄

ステータスの大幅強化、更に成長率が大幅に上昇する。


スキル:道化師

自身、または対象者の感情をある程度コントロールできる。

更に闇属性魔法なしで幻惑、隠蔽効果を発動できる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

みんなこんな感じでなかなかにチートだった。

みんな思っていることは、同じで、「ありえないが受け入れなければいけない」みたいな感じだった。

ただ、立花彩乃だけが歓喜していた。

ちなみに、光は、

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


名前:白井光

年齢:17歳

職業:魔法戦士

クラス:勇者(kingdom)

レベル:1

レベル上限:99


ステータス

HP:600

MP:600

生命力:600

筋力:600

魔力:600

守備力:600

魔法守備力:600

精神力:600

瞬発力:600


魔力属性

光、聖


ジョブスキル:エンチャンター

魔法のエンチャント時消費MP減少、

更に対象者にかけることも可能。

(複数人にかけることも可能)


クラススキル:英雄

ステータスの大幅強化、更に成長率が大幅に上昇する。


スキル:パサー

自身のHP、MPを対象者に分け与える。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

なんというか、一番勇者している気がした。

聖属性の魔法も、持っているのは光だけだった。

少し立ってガスティア王が、

「勇者様たちのために御馳走を用意して待っておりますのでとりあえずそこで詳しい話をいたしましょう」

みんな怪しそうにしていたが、御馳走の言葉には勝てずに王と一緒に広間をあとにした。

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