第96話、聖女の魔力はブラックです⁉

 ──現代日本の推定三千万人の、異世界転生希望の、ヒキオタニートのお兄ちゃん&お姉ちゃん、こんにちは☆


 実は『ツンデレ気味の妹(しかも幼女)』という、あざといキャラ付けでお馴染みの、『転生法』だよ!


 ……非常に申し訳ないことに、コンテストとかいろいろあって随分とご無沙汰でしたけど、今回から心機一転連載を再開いたしますので、どうぞよろしくね♡



 ──さて、今回はタイトルをご覧になればおわかりのように、『再開記念』として、今まで以上にアグレッシブに行くわよお!



 ……なんか、どこかで見たような感じなんですけどw


 問題は当然、『ブラック』という部分だよね!


 一体何が『ブラック』かと、申しますと──



 皆さん、『なろう系』の異世界作品モノはもちろん、ファンタジー作品やSF作品とかで、大規模な軍隊同士の戦闘において、戦場の後方の安全地帯に『聖女』とか呼ばれている絶大な力を有する『治癒士ヒーラー』が控えていて、自軍の兵隊たちの大部分が死傷したり疲労したりしたのを見計らって、全員に向かって一気に『ヒール』をかけて、疲労や負傷を完全に解消したり、場合によっては死者さえも甦らせたりするシーンを、見たことは無いかしら?



 これって、事実上『無敵の軍隊』を実現しているようなものだから、敵としては堪ったものではなく、どんなに攻撃を加えても無駄になってしまうし、しかも無限のスタミナで攻め立ててくるしで、最後には逃げ出すか降伏するかのどちらかしか無くなると思うの。



 ──それでは、その凄腕の『聖女様』のほうの兵士たちは、どうかしら?



 確かに、王様のような国家的支配者や、将軍や元帥のような全軍の指揮官レベルだったら、『大感謝』でしょう。



 事実、某作品においては、現代日本から転生してきた元ブラック企業の『OL聖女様』が、ヒールやポーション造りに大活躍して、死にかけの騎士団長を甦らせたり、腕や足がもがれた一部隊の兵士たちの全員を五体満足の肉体に復活させたりして、なぜか美男子ばかりの異世界のお偉方たちからモテモテの『逆ハー』状態になると言う、(いかにも御都合主義的な)展開ストーリーも見受けられるしね☆



 でも、実際に戦い、疲労し、傷つき、場合によって討ち死にしている、現場の兵士たちにとっては、どうかしら?




 ──むしろ、『この世の地獄』、じゃないかしら?




 だって、そうでしょう?


 そもそも戦場なんて、デフォルトで『地獄』のようなものなのよ?


 そんな戦場における、『天国ヘブン』状態とは、一体何?


 例えば、苦戦を『勝利』に変えた瞬間かしら?


 ──あははははは、そんなわけあるものですか!


『勝利』が天国なのは、王様とか将軍とかの、『指導者』だけの話よ。


 一兵卒には、勝利の栄冠に酔いしれている暇なんて、あるものですか。


 彼らは支配者にとっては、単なる『消耗品』に過ぎないの。


 すぐに次のいくさにおいて、『消費』されるだけなの。


 そんな無限の『消耗戦』における、唯一の『救い』とは、何だと思う?







 ──実はそれこそは、『死ぬこと』に他ならないの。







 ………………………え?


「いくら何でも、それは無いだろう?」、ですって?


「兵士たちの『救い』が『死ぬこと』なんて、矛盾している」、ですって?


「誰だって死にたくないし、それはまさに今戦場で命のやり取りをしている、兵士たちだって同じだ」、ですって?


 ……やれやれ、


 ホント、『なろう系』の作家も愛読者も、ダメダメよね。


 本作において、何度も何度も言ってきたでしょうが?



 ──何よりも、『転生者』を始めとする、小説の登場人物の身になって、物事を考えてみなさいって。



 そうすれば、いかに『なろう系』作品が、デタラメで間違いだらけであることが、良くわかるから。



 ──さああなたも、実際の戦場において、敵軍だけでは無く、味方の『指揮官や国王や聖女様』からも苦しめられている、一兵卒たちの心境になってみましょう!







 ……傷つきもがき苦しみ、無限に続くかと思われる、地獄の戦闘。


 一兵卒の自分にとっては、もはや勝ち負けなんて、どうでもよかった。


 早く、『楽』になりたい。


 もう、『死んで』しまってもいい。


 それこそが、俺たち兵士にとっての、唯一の魂の安寧なのだから。




 ──なのに!




 なのに、


 なのに、


 なのに、


 なのに、


 なのに、


 なのに、


 なのに、


 なのに、


 なのに、


 なのに、




 あの、『聖女』は、


 ──否、



 あの、『魔女』は。



 邪悪なる外法を弄して、


 何度も何度も、俺たちを甦らせて、


 無限に闘わせようとしやがって!



 ……確かに、あの女の『魔力』によって、疲労は回復し、傷は癒え、死さえも無かったことにできるかも知れない。


 しかし、闘い続けること自体の、癒えること無き心労や、耐えがたき痛みや、死への恐怖は、無限に繰り返すごとに、どんどんと増大していくばかりなのだ。



 ──これが『地獄』以外の、何だと言うのか。



 もう、やめてくれ!


 もう、俺たちのことを、殺してくれ!


 それだけが、俺たちの、唯一の望みだ。


 ……もしも、叶えてくれないと言うのなら。



 俺たちが、おまえを、殺す!



 我々人間をもてあそぶ、魔女を。


 その魔女おまえを使って、我々をこき使い続ける、国王や将軍を。




 我々無数の末端の兵士が、一致団結して、みんな殺してやる!




 ──そして、その王国においては、一般兵士や平民たちによる大規模なクーデターが起こり、諸悪の根源の聖女を始めとして、王侯貴族や高級軍人等の支配階級の全員が、断頭台の露と消えたのでした。


 めでたし、めでたし♡










 ──とまあ、こんな感じになってしまうんじゃないかしらあ?




 つまり、『なろう系』作品の主人公って、すぐに支配層に気に入られて、『独善的なこと』ばかり好き勝手にしやがるけど、本当にそれが『正しいこと』なのか、末端の兵士や庶民の身になって、ようく考え直してみるべきだと思うの。



 そうじゃ無いと、『聖女』どころか、『(己自身の憎悪の対象のはずだった)ブラック企業の中間管理職』みたいになって、部下たちから恨まれるばかりで、いつか手痛いしっぺ返しを食らってしまうかも知れないわよwww

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