第62話、異世界に『都庁』は必要か?

 ──現代日本の推定三千万人の、異世界転生希望の、ヒキオタニートのお兄ちゃん&お姉ちゃん、こんにちは☆


 実は『ツンデレ気味の妹(しかも幼女)』という、あざといキャラ付けでお馴染みの、『転生法』だよ♡



 ……ええと、今回のタイトルですが、一見何が何だかわけがわからないと思うけど、それにつけても、最近この作品って、ちょっと『メタ』っぽ過ぎないと思わない?


 本来この作品って、あくまでも、現代日本から異世界転生者を受け容れるに当たって、異世界側が遵守すべきルールについて語っていたはずなのに、いつの間にか、『真に現実的で理想的な、異世界転生作品の書き方』のレクチャーコーナーに、すり替わってしまっているじゃないの?



 ……とは言っても、このように作品の方向性が、連載を続けるごとにどんどんと変質していくのも、無理は無いのよねえ。


 それと言うのも、既存の異世界転生系のWeb作品が、あまりにも非常識すぎるのよ!


 ほとんどの作品が、『ゲーム脳』に基づいてのみ創られてきたことは、本作においても散々言及してきたけど、実はそれだけじゃないの。


 おそらくはほとんどの作者の皆さんが、実際に社会に出てまともな職場で正社員として働いたことが無いからでしょうが、社会的常識というものについて、ほんの基本的なことすら、何一つわきまえていないのよ!



 その一例と挙げるとしたら、時代設定にかかわらず『王国』等を舞台にした作品において、ほとんどの作品で判で押したように、作品の中盤あたりで『王都』をメインステージにして、学園生活とか政治とか戦争とかをテーマに、いろいろとイベントを展開するというのがお約束なんだけど、いわゆる『NAISEI』を行うシーンにおいて、現代日本で言うところの、『都庁』に当たる組織が一切登場しないの。


 つまり首都である『王都』の施政や治安維持も、王様自らが行っていることになっていて、実際ほとんどの作品において、王都内で何か騒動が起こると、王様の配下の政治家や騎士団と、おまけに「てめえらに、何の権限があるんだ?」と首をひねらざるを得ない、本来よそ者であるはずの主人公とその一味が一緒になって、問題の解決に当たるといったものばかりだけど、いやいやいやいや、実際の政治&行政システム上、そこがどんな時代背景となっていようが、洋の東西が異なろうが、異世界であろうが、そんなことはあり得ないから!


 現代日本に置き換えれば、安倍総理が都政まで兼任するようなものだけど、そんなのどう考えてもおかしいでしょう? 阿部さん本人がそんなことをしたいなんて言い出したら、絶対に許されざる権力の濫用だし、もし万が一実際に施行されることになったとしても、非常に非効率的で、何のメリットも無いでしょうね。


 このように現代日本を例に挙げれば、理解が早いと思うけど、何でWeb作家の皆様って、こんな基本中の基本のことを、自分で気がつかないかねえ。


 作品の基本設定を作成している時なんて、一体何を考えているのかしら? 売れ線の作品から、ウケる要素を『パクる』ことだけしか、考えていなかったりしてw



 ……ていうか、Web作家の皆様って、『政治』と『行政』との違いを、ちゃんと区別できているの? この二つって、全然違うのよ?


 簡単に言っちゃうと、政治って王様や皇帝が行うもので、それに対して『実務』に当たる行政のほうは、彼らの配下である、貴族や優秀な平民等のサラリーマン公務員たちが行うもので、現代日本で言えば、国会議員は一応政治家に当たるけど、政治的実権は無く、多数決によって実務の基になる法律を設定できるという立法権を有するだけであり、その議員のうちの一部の実力者が、首相や大臣に選出された場合に限って、政治家でありながら行政機関の長ともなって、絶大な権力を行使できるようになるの。


 ──と言うと、非常に複雑に聞こえるけど、これは現在の日本が、(見せかけだけのインチキな)民主主義制度をとっているからで、異世界ファンタジーならではの『王政』だったら、非常にわかりやすくなるの。


 すなわち、王様一人が、政治(立法権)や行政権どころか司法権すらもすべて独占していて、宰相や大臣や警察長官や騎士団長等々は、すべて王様の権限のもとに認めれた実務機関に過ぎず、「王の名の下」に振るうことはできるが、極論すれば、自らには何の権限もなく、いわゆる王様という名前の『頭脳』のもとで、各種行政施策を実行するための『手足』でしかないの。


 それに比べて大貴族ともなると、地方の領地において一定の自治権を与えられていて、己の領内限定の立法行政司法の三権を独占していて、言わば『小さな王様』的政治家と言えるの。


 このように、王様は国政においても、ちゃんと行政組織を構築して、効率的な施政を行っているんだから、そのお膝元の王都の治世において、宰相や騎士団等の国政のための組織を兼任させて、自らの指揮で行うなんて非効率的なことをするはずが無く、当然のごとく、現代日本で言うところの『都庁』のような、王都専門の行政機関を設けているに違いないの。


 それなのに、異世界系Web作家の皆さんの作品を読んでいて、王都専門の『都庁』みたいな行政組織が、一度でも登場したことがあったかしら? 少なくとも、私は見たことが無いんですけど?


 ほとんどの作品では、何か王都において事件が起きたら、王宮の役人とか近衛騎士団が出張ってきたり、ひどいのになると『国政』の最高責任者である、王様自ら顔を突っ込んできて、解決をはかるなんてものが見受けられるんですけど、あんたの作品の王様って、『遠山の金さん』か何かなのか?


 いや、『金さん』ならいいのよ、彼っていわゆる『お奉行様』でしょう? 実はお奉行様こそは、江戸時代においては、『都知事』&『首都限定の裁判長』みたいな位置づけだったらしく、まさしく本作の今回の趣旨に合致していたりするの。


 ……何で、王様にお奉行様みたいな真似をさせておいて、「──そうか、私の作品(の王都)に足りなかったのは、お奉行様(=都知事)だったんだ!」と、気づいてくれないのかしらねえ。


 前回、前々回において、口を酸っぱくして言ったけど、仮にも『作家』を名乗るつもりなら、常に自分の作品を含む、『小説の常識』というものを、疑い続けなければならないのよ?



 そこで、大出血サービスとして、これぞ『小説作成の秘訣』というものを、教えてあげるけど、小説って、ちょっと設定をひねってやるだけで、格段に面白くなるのよ?



 例えば、王都においては、王様以外に、『都知事』とかいう権力者がいて、裏でゼネコンなんかと手を組んで、勝手に『奴隷移民法』なんかをでっち上げて、安価な労働力として外国から奴隷を大量に買い入れて、する必要も無い『民族の祭典、ドレインピック』なんてものを開催しようとしたところを、王様の密命を帯びた主人公がぶっ潰すことによって、都知事とその下で汚職を行って散々甘い汁を吸ってきた都庁職員たちが、全員縛り首になって、王都の平和と人々の暮らしが守られて、めでたしめでたしといった、どうでもいいけど字数稼ぎにはなる、ちょっとしたイベントが創れるじゃない?


 ……『ピック』って、何か精気エナジーでも吸い取られそうな、不吉なイベントネームね。ほんと、都民の皆様、無駄なイベントのための納税、ご苦労様です♡



 とにかく、異世界系のWeb作家の皆様は、いくら自作の舞台が架空の世界だからといって、ゲーム脳と中二病的妄想だけで作品を作成しようとせずに、もっと一般常識というものを身につけたほうが、結果的に作品の幅を広げることにも繋がるかと思われますので、ひきこもってばかりおらずに、一度は実社会に働きに出てみたらいかがかしら?

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