第55話、『乙女ゲームの知識』なんて役立たず⁉

 ──現代日本の推定三千万人の、異世界転生希望の、ヒキオタニートのお兄ちゃんたち、こんにちは☆


 実は『ツンデレ気味の妹(しかも幼女)』という、あざといキャラ付けでお馴染みの、『転生法』だよ♡



 今回も第51話と第53話に引き続いて、本作の作者の十八番オハコである、『乙女ゲームの世界への転生』について述べていくつもりなんだけど、前回までに、『乙女ゲームの世界への転生』と言っても、「あくまでもゲームの世界そのものではなく、ゲームとそっくりそのままななのである」ということを、量子論や集合的無意識論に、そして何よりも作者独自の『ギャルゲ論』に基づいて、完璧に論証したことでもあるし、今回からはいよいよ【実践編】に突入しようかと思うの。



『乙女ゲームの世界への転生』モノの主人公である『現代日本からの転生者』って、ほとんど例外なく全員が全員、現在存在している異世界そのままの世界観であった、『乙女ゲーム』をやり込んでおり、おまけに公式設定集や攻略本はおろか、ネット等で拾った『裏設定』すらも熟知していて、ゲームについて──ひいては、現在自分が存在している異世界について、知らないことは何も無く、未来の行く末(=ゲームのストーリー展開)すらもすべて把握していることになっているけど、




 ──そんなことなんて、本当にあり得るのかしら?




 これは別に『乙女ゲームの世界への転生』モノだけの話では無く、『NAISEI』モノなんかを始めとする、『現代日本の知識で無双する』系の作品全般に言えることなんだけどさあ、それぞれの作品内の主人公さんたちって、みんながみんな、現代日本で取得した知識を、いつまでもむちゃくちゃ詳細に覚えているけれど、常識で考えて、




 ──そんなことなんて、あり得るわけが無いじゃない。




 そりゃあ、現代日本にいる今この時だったら、目の前にパソコンとかスマホがあって、どんな情報であろうが、いつでも何でも何度でも引き出すことができるかも知れないけど、いったん異世界に転生してしまって、パソコンやスマホどころか、『乙女ゲーム』や『NAISEI』に関する書物もメモ紙も何一つ無い状況においては、自分自身のあやふやな記憶だけが頼りになるわけだけど、人の記憶なんてものはいつまでも明確に覚えておられるものではなく、そのうちほとんど忘れ果ててしまって、結局は何の役にも立たないんだよ?


「──いやいやいや、俺様はたとえ戦国世界に突然転生しようが、ゲームの知識だけで足軽から成り上がってみせるぜ! 何せかの超有名戦国シミュレーションゲーム『信長のヤンボーマーボー天気予報』については、もはや暗記なんていうレベルでは無く、まさに己の血肉そのものと化しているんだからな! うひょー、美少女化した信長たんは、どこいるのお☆」


 ……などとほざく、ヒキオタニートのお兄ちゃんもいるかも知れないけど、だからさあ、そんな大口をたたけるのは、今現在目の前にパソコンとかスマホとか攻略本があるからであって、実際に戦国時代に転生やタイムスリップをしてしまったら、『戦乱の世』という絶望的状況下において、生き延びることだけに全力を使わざるを得ず、『ゲームの知識による無双』などといった寝ぼけたことを言っていたら、三日とたたずに道ばたで物言わぬむくろなってしまうでしょうね(昏い笑顔で)。


 ほんと、すべてのWeb小説家やラノベ作家の皆さんに言いたいんだけど、仮にも創作者を自認しているのなら、一度くらいは真の意味で自分の作品の主人公の立場に立って、本当に戦国時代にタイムスリップしたら、自分自身がどんな状況に置かれてどんな気持ちなるのか、じっくりとお考えになってみたらあ?


 別に戦国時代は、転生者やタイムトラベラーにとっての、『ゲームステージ』でも『アドベンチャーワールド』でも無いのよ?


 一度転生してしまったら、たとえ戦国時代だろうが剣と魔法のファンタジーワールドだろうが、自分自身にとっての『現実世界』になってしまうのよ?


 しかも転生者自身も、いったんその世界に転生してしまったら、けして『お客さん』なんかじゃ無く、何の変哲もない『戦国時代』や『異世界』生まれの、『別にチートなんか持たないただの一個人』になってしまうのよ?


 そしていったん現実世界となってしまったのなら、これまで何度も何度も言っているように、『現実世界の未来には無限の可能性があり得る』のだから、けして現代日本でやっていた『ゲームのストーリー』通りに進むとは限らないので、




 ──あらゆる意味で根本的に、『ゲームの知識』なんて、何の役にも立たないわけ。




 それなのに、既存の数多くの『乙女ゲーム転生』作品の中で、たかがアラサー独身OLの転生者風情が、『ゲームの知識』を笠に着て、王侯貴族の人たちを下に見て、いかにも自分一人だけが知的な文明人気取りで、元々ゲームには無かった独りよがりなイベント展開を、好き放題かます姿を見せつけられたりしたら、思わず反吐が出そうになってしまうわ! ゲーオタ喪女ごときが、何様のつもりよ⁉


 ていうか、自ら『乙女ゲームの知識』とは外れたイベント展開なんかしでかしたら、その後は既存のゲームの流れとはまったく違う展開となってしまう可能性もあり得て、当然のごとくそれ以降においては、『ゲームの知識』が役に立たなくならなければおかしいんじゃないの?


 そもそも、いったん転生してしまったら、もはや『ゲームプレイヤー』でも『小説の主人公』でも無く、単なる生粋の異世界生まれの一個人になってしまうんだから、いつまでも現代日本人の感覚で、あくまでもゲームなんかでは無い、貴族社会で生き延びていけるわけがあるものですか!


 少なくとも、私には無理ね。だって転生イベントの達成後は、あくまでもそこは世界になるのであって、必要になるのは『ゲームの知識』なんかではなく、『貴族社会の知識』なのであって、そんなものが完全に身についている現代日本人なんて、ただの一人だっているはずがないもの!



 ……ごめんなさい、興奮しすぎて、いろいろとあらぬ暴言を吐いてしまったわ、反省反省。



 お詫びの意味を込めて、今回の件に関する、最も妥当な【解決策】を、ご披露することにいたしましょう。



 ──一言で言えば、『現代日本のスマホ』が使えないのなら、『異世界のスマホ』を使えばいいってことよ!



 えっ、何をわけのわからないことを、言っているのかって?


 そっちこそ、何を言っているのよ?


 すでに本作の第31話において、「ちゃんと論理的に説明がつくのなら、異世界にスマートフォンが存在してもいいし、現代日本のインターネットと接続できても構わない」って、述べておいたじゃないの?


 この本作独自の、現代日本の最先端の科学技術と異世界古来の魔法技術との、真に理想的な融合の結晶である、『量子魔導クォンタムマジックスマートフォン』を使えば、日本のネット上の当該乙女ゲームに関する、公式非公式を問わぬあらゆる情報を拾い放題なので、完全に思い通りにはできないまでも、使いようによっては『ゲームの知識』によって、自分の立場をかなり有利にすることだって十分可能でしょうよ。


 しかも、これまた再三述べているように、複数の世界間においては、お互いにあらゆる『時点』にアクセスできるので、場合によって転生者自身の、『転生する以前の自分自身のパソコンやスマホ』にアクセスすることだって理論上は可能なのであり、自分だけが知り得たゲームに関する極秘情報すらも参照することだってできるのよ!


(※あれ? ちょっと待って。これは余談になるけど、この理論に基づけば、量子魔導クォンタムマジックスマートフォンを使えば、異世界に居ながらにして、現代日本サイドの、自分自身とアクセスして、メール等のテキストでの交信やりとりはもちろん、場合によっては直接音声通話をすることだって、可能ということじゃない? これは改めて別のエピソードにおいて、じっくりと考察しなければならないわねえ……)


 ただし、だからといって、これについてもすでに述べたように、『質量保存』等の物理法則に基づけば、断じて現代日本から物理的にスマホを持ち込むことができるわけじゃないから、その点は間違えないでね。


 それから、これまた第31話で述べたように、あなたの自作の作品にスマホを登場させる理由を、「すでに他の作品にも登場しているから」なんて、自分の脳みそをまったく使わずにほざいた、『いんちきカンニング野郎』的な言い分にするのは御法度よ! ちゃんと自分の脳みそで考えなさいよ! ……まあ、無理でしょうけどねw




 ──つまり、『乙女ゲーム転生』系の作家の皆さんが、作中でスマホを使うためには、これまで自分の作品をボロクソにけなしてきた、本作の作者の軍門に降って、本作の第31話を参考にする以外は無いわけ。くくくくく(昏い笑顔で)。


 そうじゃなかったら、いつまでたっても何の根拠も無しに、『ゲームの知識による無双』などといった、間違った作品を創り続けることになって、みんなの笑い物になるしか無いの。きひひひひ(昏い笑顔で)。


 それに引き換え、本作の作者自身のほうは当然のごとく、自分の作品内の異世界において、スマホを使い放題なので、今回散々ボロクソに言っていた癖に、自分一人だけ、いくらでも『ゲームの知識』を参照できるってわけ。わはははは(晴れやかな笑顔で)。




 まあ、結局何が言いたいかというと、『乙女ゲーム転生』モノだろうが、『NAISEI』モノだろうが、『現代日本の知識』を使ってチートしたいのなら、それを「あって当たり前」のように見なして、何のひねりも無く利用するといった、既存の作品の劣化コピーみたいなことはせずに、ちゃんと自分の頭で考えて、その理論背景をしっかりと構築しておきなさいってことなのよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る