第25話、『死に戻り』①総論。
さて、今回も前回に引き続いて、『異世界そのもののゲーム化』について述べていこうと思うのですが、まず最初に改めて、そもそもなぜに異世界転生者の皆様は、こうも『異世界そのもののゲーム化』を求められているのかについて、簡単に語っておきたいかと存じます。
真面目に『大局的な』話をしますと、実際問題異世界などという『未知のワンダーランド』に、唐突にほっぽり出されてしまったら、文字通り右も左もわからず途方に暮れてしまうというのが現実でしょうから、当の転生者ご本人としたら、何らかの『ガイドライン』が存在するべきだというのは、至極当然な意見でしょう。
そのため、あくまでも『現実世界』であるはずの異世界において、特に冒険者等の階級として『レベル制』が設けられたり、自分や他人の属性やスキルや含有魔法力(MP)を、『ステータスウィンドウ』で視覚的に確認することができたり、下手すると、『始まりの森において野盗に襲われていた貴族の娘を助けてパトロンになってもらい、そのお陰で何不自由ない異世界ライフをスタートすることができた』などといった、『お約束的シナリオ』すらも用意されていたりするようになったわけなのです。
この段階すでに、かなり不自然な有り様となっていますが、昨今の転生者が異世界に求める『ゲーム脳そのものの要求』は、更にどんどんとエスカレートする一方で、もはや言語に絶する状況となっております。
何と最近では、『ゲーム脳で創られた異世界系のWeb小説に登場してくる各種ギミック』が、あくまでも『現実世界』である本物の異世界に、当たり前のように存在していることを求めてくる、もはや自分の要求が『異世界そのものをゲーム化している』こと自体に気づいていない、ゲーム脳に染まりきった転生希望者ばかりとなってしまっているのだ。
──その際たるものは、何と言っても、『死に戻り』に尽きるだろう。
言うまでもなく『死に戻り』とは元々、各種ゲームでお馴染みの『セーブシステム』を、異世界系Web小説やラノベにおいて、主役等の『無限蘇生能力』として活用したものであり、それがいつの間にか異世界系Web小説における代表的ギミック──どころか、今や『ジャンル』とすら呼び得るまでに、すっかり定着してしまっているのだ。
──まさしく、『ゲーム脳』、ここに極まり、とでも、言う他はなかった。
本来『死に戻り』などといったものは、『一発芸』的なギャグネタとして扱うべきで、みんなで散々苦笑いして楽しんだ後は、使い捨てにされるだけのはずだった。
しかし某シリアス作品が、『死に戻り』を大々的にフィーチャーして、大ヒットを飛ばしたものだから、我も我もと猿真似三流Web作家どもが群がってきて、劣化コピー作品の花盛りとなり、いつしか『死に戻り』は異世界系Web小説における、代表的なモチーフの一つとなってしまったのだ。
そしてその結果、それらのWeb小説を読むことで、異世界というものに『誤ったイメージ』を植え付けられたしまった現代日本人たちが、ひょんなことから本当に異世界に転生するチャンスを与えられた際に、極当たり前に『死に戻り』のチートスキルを要求するようになってしまったのだ。
……おいおい、『死に戻り』とか『セーブシステム』とか簡単に言うけど、ただ単にスキルの持ち主だけを生き返らせるだけでは済まず、世界そのものをやり直させなければならないんですよ? そんなんどうやって実現せいっちゅうねん⁉
──とはいえ、転生希望者様のご要望に最大限にお応えすることで、現代日本からの異世界転生を促進することを旨とする、『転生法』の実行機関である、我々聖レーン転生教団としては、不可能すらも可能としなければなりません。
そういう意味合いも含めまして、本作においては次回から、『死に戻り』系のチートスキルの実現の仕方について、数回にわたって詳しく丁寧にご説明していこうかと思います。
そこで今回はその前段階として、『死に戻り』についての主な分類と、聖レーン転生教団における、基本的対処方針を述べておきます。
【死に戻りの種別】
○当事者だけでなく、世界そのものをやり直すタイプ。
『リ○ロ』を始め、ほとんどのWeb作品は、このタイプである。
○当事者だけを蘇生させるタイプ。
無限に『再転生』を行うことで実現し、以下のような種類がある。
・教会での復活。(第6話を参照)
・『
【転生法における基本的対処方針(第105条)】
どのような組織あるいは個人であろうとも、『死に戻り』のチートスキルを利用して、異世界人の個人的自殺や組織的自爆テロ、更には戦争等において国家規模で行われる、旧日本軍が太平洋戦争当時実施した、『神風特攻』に類する航空機や潜水艦等による『特別攻撃』の類いを実行することは、異世界の人心や社会システムに多大なる悪影響を及ぼすものとして、全面的に禁止する。
──とまあ、以上のようになっております。
それでは、次回から開始いたします『各論』のほうにつきましても、どうぞよろしくお願いいたします。
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