四番目の解・破
4-3-1 四番目の解・破
四番目の解・破
もっともらしい権威には、もっともらしい演出が必要だ。
此度の『宮城支部襲撃作戦』に参戦する人員は、あまった傍観者たち十数名と、銃器で武装した蕃神信仰の
そこで、俺は急遽、別の拡張領域である『
殺気立った猛者たちが所狭しと整列する様を見ていると、何か、こう……こみ上げてくるものがある。これは一体なんだろう。俺の思考がその正体へと至る直前、与えられた己の役割を愚直に遂行した
『者共、聞け! これから
どうぞ、と小声で促されたので、一応前にでてみる。が、しかし、別に言うことなんてあんまりない。どうせ、ここにいるものたちは大体死ぬだろうし。
けれども、何時もの蕃神信仰なら、こういう場面で何も言わないというのは不自然なので、適当に士気の上がりそうな事を言っておくことにした。あまり長くなってもウザいだろうから短めに行こう。
「――どうして、君たちを選んだと思う?」
唐突な俺の問いに、誰もが沈黙して答えない。果たして、返事を求められているのか、答えていいものかと測りかね、困惑気味に辺りを窺っている。予想通りの反応。誰かが口を挟まぬうちにと俺は畳み掛ける。
「それはね……君たちこそが、残っている信者の中で最も戦意に燃え、最も信仰心に優れ、最も理想的な舞手だからだよ」
声ならぬ息遣いが一斉に広がる。
「それだけに今作戦の目的を伝える事が出来ない事が残念でならない。しかし、心配はしていないよ。何故なら、そういった論理を超越した所に君たちの信仰心はあるからね」
彼等は、教義に則るならば舞手(駒)にすらなれぬ存在なのだ。戦いたがりは死にたがり、死にたがりは救われたがり。
――大丈夫だ。
全員、俺が
アーティストのライブのような派手な盛り上がりはないが、静謐の器を密やかに満たしてゆくような高まりを感じる。ここらが切り上げ時か。
「求めよ、さらば与えられん」
聖書からの引用で適当に締めくくると、そうとは知らない馬鹿どもがドッと鬨の声を上げた。良かった、士気高揚の試みは成功したようだ。
その盛り上がりが冷めてしまわぬよう、
さて、息つく間もないが、こっちも動き出さなければ。戻ってきた
「ふふふ……」
分かったよ。全く
「準備の準備がようやく終わった。これからは『仕込み』と『情報収集』を執り行う段に入れる。それもこれも、皆の献身あってこその事。――だが、今度は謝辞など述べない!」
前と同じような流れで感謝する、と思わせておいて、外してみた。
その振り上げた拳はなんだ? 前で構えた両手はどうした?
俺は、陶酔のうちに含み笑いを押し殺し、高らかに続けた。
「MCG機関も、近衛も、蕃神信仰も、現代魔術聯盟も、
お前たちに俺が必要なように、俺にもお前たちが必要だ。今、この部屋の中にはかつてないほどの一体感がある。クローン連中も、新参の蕃神信仰の元・信者連中も、皆一緒だ。
――素晴らしい!
目標があるとは、目標へ向けて邁進するとは、斯くも素晴らしい行いだったのか!
「ここに第三段階への移行を宣言する! 共に行こう! 迷いを捨て、ただ俺の背中を追ってこい……!」
俺が踵を返して堂々と進めば、背後に続く者たちの力強い足取りが伝わってくる。そうだ、我々に歓声なんて必要ない。ただ、粛々と進むだけだ。
未だ至らぬ身ではあれど、皆の為、宇宙の為、そして何より俺の為……この一件に限り『羊飼いもどき』を務めさせて頂く……!
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