第6話 不良の爺ちゃん

不良くんのお爺ちゃんの病気は何も分からない。でも分からないからこそ不良くん一家を救いたい。

「難病」という高く大きな壁に僕達はぶつかっている。


「クラスのみんな、聞いてくれ。不良くんのお爺ちゃんは難病で治るか分からない病気を患っているんだ。

ごく稀の病気らしいから、根本的な治療法は確立されていない。

なんで、突然僕が言い出したのかと言うと難病に苦しんでいる患者さんやその家族を救いたいからだ。

頼む!協力してくれ!」

とクラスメートに懇願。


「医師でもその病気分からないんでしょ?知識も無い俺らに分かる訳ないよ。

まあ、不良の家族に悲しい思いをさせたくないから協力する。

でも、治療法を見つけちゃったらある意味ヤバいな。」


病気についての知識は全く無い。もちろん、難病であることから情報が少ない。

「なあ、不良くん。お爺ちゃんの血液検査みたいな検査結果の紙とか無い?

あれば、ちょっと見せてほしいんだ。有るのと無いのとでは今後、色々と変わってくる。」


「最近の検査結果のは無いけど、数年前のならあった。

気弱、こんなので分かるのか?」

と不良が不安そうに聞いてくる。

「正直な所は分からない。でも、これで不良くんや他の人達の笑顔が見れるならそれでいい。

今は、医師だろうが一般人だろうが関係ない。個人的に気になって調べているだけ。

お爺ちゃんの病気を知ってしまった以上、黙って過ごすことはどうしても出来なかったんだよ…。黙って過ごしたら後悔するかもしれない。

何もしないより、した方がいい。

不良くんだって、お爺ちゃんが1日でも長く一緒に居たいでしょ?」


数年前の検査結果とはいえ、この情報は十分参考になる大きな資料の一つ。

基準値より高くなっているか、低くなっているかで左右する。

休日でも図書館に行き、医学書を片っ端から読み漁る。

重要だと思った点はメモに記して残す。

不良から貰った検査結果と比べて、近しい病気を疑う。


「幾つか、疑わしい病気を見つけたんだけど違うかな?まだ、確証は無いからハッキリとは言えないけど。」

と言い、クラスメートに対して議論。主な症状・症例から疑う。


「確かに、症状が似てはいるけど違うと思う。だけど、この病気だと数値は下がる。今回は上がっている訳だからこの病気は違うんじゃない?」

と反論が出て、解決には至らず。


「まさかの新発見の病気とかじゃないよね。新発見だと余計に分からなくなるね、忘れてくれ。」

と一人の男子生徒が冗談混じりで発言。

新種の病気の可能性は極めて低い。でも、可能性としてはゼロではない。

事例の無い病気だと、知識の無い僕達にとって「お手上げ状態」になる。


「新しい病気の可能性は無いとは言えんけど、ほぼ無いに等しいね。

でも、ありがとう。」


その後も、解明には至らない。こうしている間にもお爺ちゃんが病に蝕まれているかもしれない。

そう思って、より自分を追い込む。

苦しんでいる姿や悲しむ姿を見たくないと思い、焦る気持ちで一杯。


「何を焦ってるんだ!冷静に考えろ!いくら難病とは言え、すぐには死なない。

近しい病気さえ出ればいいんだよ。治してくれ。とは言ってない。

お前は真面目な性格が故にピンチになると自分を責める。

俺はむしろ、お前の身体が心配だ。ここの所、寝る間も惜しんで病気の解明に奮闘しているんだろ?

顔を見れば分かる。だから、これ以上解明することはやめてくれ。

お前が記したメモはかなり重要で使えると思う。

もう、医師に任せようよ、お前が死ぬわ。

死んだら、俺はどうすればいいんだよ!」

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