第5話部活動

「ぅんあ?」


 間抜けな声を出して意識が戻ってくる。


「ああ、眠い・・・」


 また新しい日が始まってしまった。土曜日だが、高校でも部活があるので、結局、高校には行かなければならない。


「めんどくせえー。」


 ぐちぐち言っても始まらないので、ベッドから降りて、リビングに向かう。


 いつもは母さんがいるが、朝から出かけているようだ。だから早く寝たがってたのか。


 準備してくれた朝飯を時間もないため申し訳ないがお茶で流し込み、学校に行く支度をして家を出る。


「うわっ、寒いな」


 一人で無意味に呟く。手袋とかつけてくればよかったな。まあ、電車に乗ればあったかいから、それまでの我慢だ。


 駅に着き、電車に乗り、高校最寄りの駅で降りる。


「金かかるけど、今日はバスで行こ・・・」


 これから疲れることするのに、わざわざ坂道を歩いて学校に向かって疲れたくない。


 ちょうどバスが来ていたので、学校近くを通るバスに乗り込む。


 平日なら人がそれなりにいるが、今日は土曜日なので、まだ人が少ないため、椅子に座って到着を待つ。


 他の生徒が歩いているのに自分は自分の足で歩かずに学校に向かうのは少しだけ優越感に浸ることができる。


 案内が入り、停車ボタンを押し、金を払ってバスを降りる。


 高校が見える位置まで来たので、少し歩くだけで学校につく。


 部室に向かうため、校舎の裏にある武道場に入る。


俺は柔道部に所属している。ぶっちゃけうちの高校は弱い。県大会で2,3勝できるかできないかくらいだ。そこで一応部長として活動しているが、自分自身も一番つ強いから部長になったわけでもないので、威厳なんてあったもんじゃない。


「まだ誰も来てないのか。」


 練習着に着替えて部室にあるベンチプレス用の椅子に寝転がる。まだ寝れそうだな。


 一度あくびをして、もう一度眠るた眼を閉じる。今日の練習メニューどうするかな・・・


 微睡んできんできたところで部室のドアが開き、同学年の部員が入ってくる。


「うーっす。お、五十嵐、今日どんな感じでやんの?」


「あー、とりあえずいつもの体操から、寝技反復、寝技乱取り、打ち込み、乱取りやって筋トレかな。」


「了解、いつも通りってこったな。」


「そういうことだ。」


 練習についての話をしていると、ほかの部員もやってきて着替え始める。


「じゃあ、そろそろ始めっから、向こういくぞー」


 しっかりと返事をする者もいれば、適当に返す者もいるものの、全員道場に向かう。


 俺は部長として働いている。


 それでも、先輩に任されてしまったので、やめるわけにもいかず部長をやっている。


 ざっと体操、寝技を終えて立ち技の練習の際にふと柔道場の上のほうに付いている窓から見える景色に目を向ける。


 紅色に染まった木の葉の隙間から空の色がのぞく。


 今日は雲がないなー、などと考えていると、ほかの部員に技をかけられる。


「うおっっ!!」


 畳が大きな音を立てる。受け身を取っているので痛みはあまりない。


「どこ見てんだよ部長ー。」


 俺を投げた同学年の部員が嫌な笑顔でこちらを見てくる。うっぜえー・・・


 気が緩みすぎてたな。気持ちを切り替えるため腿をたたく。気合入れていくか!






「お互いにー、礼!」


「ありがとうございました!失礼します!」


 全員部室に戻って着替え始める。俺もササっと着替えて帰るか・・・いや、亮って今日部活あるか?


 スマホで確認の連絡をする・・・よし、様子見に行こっと。最速で着替えを終えて部室を出る。


「お疲れー。」


 返事を聞きつつ部室のドアを閉め靴を履き替え、弓道場へ向かう。


「失礼します・・・」


 知らない眼が見つめてくる。部活こっちも終わってんのか。


「陸翔ー、こっちー。」


 誘導され、亮の元へ向かう。亮の声かけもあってか視線もかなり減った。ふう、緊張した。


「弓道部も部活終わってたのか。じゃあ、一緒に帰んね?」


「俺これから後輩と飯食いに行くんだよなー、一緒に来るか?」


 笑いながら問いかけてくる。行くわけねえだろ、後輩も俺も気まずすぎんだろ。


「いや行かないから・・・」


 まあわかってたけどなー、と言いながら笑ってくる。わかってんなら聞くんじゃねえよ締めんぞ。


「そういや、昨日の呼び出し何だったんだ?」


「ああ、葵にテストのプリント持って行けって言われたから持って行った。」


「え、葵って同じクラスの葵か!?なんでお前が?」


 昨日先生に言われたことやをそのまま話す。


「なんか体調もいいらしいから近いうち復帰するらしい。」


「はあー、そりゃめでたいなー、男女ともに大喜びだな。」


「男も喜ぶのか?」


 男子と仲良くしている姿はあまり見たことはなかったが・・・


「葵ってかなり人気あったからなー。見た目もよくて性格もいいと来た。そりゃ男も喜ぶだろ。」


 見た目が元によるが、性格なんて猫かぶれば誰だってよく見えるのに、ほかの野郎どもはそんなことも考えないのだろうか。


「まあ、陸翔は昔馴染みらしいし、そんなこと思わないか。」


 確かに、俺の記憶の中ではそんな風に思った記憶はない。俺の記憶力は鶏並みなので、あまり参考にならないが。


「とにかく、呼び出し、説教じゃなくて残念だよ。


「うるせーよ。」


 お互いに笑いながら話す。あー、やっぱこいつと話すのが一番落ち着くわ。


「じゃあ、そろそろ俺帰るわ。じゃあな。」


「おう、じゃあ俺らも飯行くか!」


 先に弓道場から出て校門を抜ける。


「葵ってモテたんだな。」


 少しだけそれが胸の奥底に引っかかった。

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