裏菊・乙

 彼は腹部を抑えている。左手でややダウン状態だ。苦しいだろう。こちらはレンジがクロスレンジだ。一挙に襲いかかれない事を良しとしないでも良いが、攻撃が続けば多くの格闘技と同様チャンスとなり、有効打は致命傷とその姿を変える。憑依だ。これを防がなければならない。「そう、右脚が封じられてもまだ、俺には左腕が有る。先程の左腕は完璧な補佐だった。噛みつかれていたら死んでいた」そう、思う。自分の中途半端な掌底の形を抑えに使った事と言い、自画自賛をする。

 風来は呼吸と共に急いで今までの技を全て思い出し、分析する。すぐに対応しなければならない。

 特に『傷』型は凶暴なので凶悪な攻撃が多い。技は真似したいほど暴力性に満ち、かっこいい事が美に見える。素直な『病』型とは違う。

 完璧で防御的な『死』型とは違う。あれを身体は死にそうだと判断する。

 口を半分動かしながらこう、思った。その姿は経文や呪文を唱えるようだ。決まればカリスマ性の『傷』型とは違うが目の前の問題は『傷』型だ。カリスマ性では無い。こっちに対応された。重心はほぼ同じ事が多いが、低空飛行だ。最速移動に対し最速で対応する。数メートルは一瞬だ。詰められ蹴り挙げられる前に、上昇型回転脚と判断、思いっ切り壁に頭をぶつける方がましと弱気でもかわす。多分、疲れから顔ががら空きだったのだろう。格闘技の選手でクラウチングの選手に多い顔や鼻を打たれる事例だ。動きは間に合い、ブンという振りの勢いのいい蹴りは空を舞う。一瞬逆足がアシストしたのを視えた。「触れたか」程度だが。揺れたように感じた。その部分観察しながら、頭を後方にずらしバックステップを試みる。スウェーバックだ。脚は股間を守りたい。直感の通りの攻撃に対応するのが一番怖い攻撃に対する対応だ。虎指と言う脚の部分が狙い、的確に斬り裂くのは空だ。風来玲央の顎では無い。音が鳴る格闘技の技術なんて通常存在しない。ブンと言う音だけで、風来は全てを理解する。死に到るまでに瞬殺する予定だ。憑依で。

 ルールはこちらが決めているのでは無い。武装までだ。向こうが決めている。アッパーが空を裂き、威嚇でも意味が有ると黄金の刃が、希望を照らす。一応でも希望であり、右脚のカバーは重心上移動から威力の有るアッパーを打ちやすかった。それも速く動けるものだ。優秀なものであると捉える。これは空発でも捉えた幽霊の目だ。技としては縦拳の分類に入り、格闘技としては覇道だ。マイナー、主流では無いと言う意味だ。「しかし、ナイフを持っている今は正体がカランビットなので正しい事になる」そう、思った。素人なのでという所に依拠する所が大きい。正体不明の影が襲いかかるが出元は味方だ。低い声で見切っていたかのように『傷』型幽霊が声に出す。強烈な攻撃に対し構え、最大限のダメージの減少を行なった後の状態で固まった。

「だよねー」

 ハイキックを、空中での姿勢制御が幽霊が甘いのを突く作戦に永遠井頼人が出た。その結果、的確に顔面を狙う行為に出る。これは、訓練できる。設備は無いが甘い事は言ってられない。実用化しなければ死に到る。死に直面するだけで、通常の精神に支障をきたし、心に傷を負う遠因と言う遠巻きに原因となるやつに変化する。そう、敵は幽霊だけでは無い。普通の入った奴なんかは特に、自分も敵になる事からは逃れられない。


 その攻撃が成功した筈であり、奇襲性を少なくとも帯びていた筈だった。型としては空手の片手型だ。それで先の言葉だ。


 姿形は右手で、右脚のハイキックを掴んでいる。発光する蒼い光のせいでそれは爪のようだ。手の型が爪のように白い囚人服に食い込んでいる。微動だにしないのが幽霊の姿勢だ。台詞の様な言葉を放った幽霊は普段よりアゴを引きその少しの様が、美貌の姿を思い出させる。戦いで少々髪は荒れ、中性独特の強さとかっこよさと美しさを解き放っている。特に幽霊の意志力は異常で、凄まじさを解き放つ。双方の意志力のぶつかり合いと言いたい。段々ただの否定の怖がらせる為だけの蒼い光が、かっこ良く美しく見えて来て認めてしまう。バシッと掴んだ手は本当に微動だにしない。反射する光で見える永遠井の蹴りも完璧なものだ。まるで、忍術だ。うしろにも隙が無い。風来は恐怖した。痛みで無い、足がすくんだそんな状態だ。少々現実がずれるがそんなものだ。非常識が幽霊には通る。

 戦いと、敵の容姿のせいで家庭感がでてどうしてもマザコンやホームシックになる。中性である見た目はまたも足を引っ張る。感情が炸裂すれば、憑依への道ゲームで言う所の『的確な』ミス、涙が出れば視界がぼけて見えなくなり、身体の力のバランスも変わる。狙いである呼吸もそう。コントロールが出来無くなる。

 思いとは裏腹に死に到る。

 しかし、的確な攻撃は仕事をし、風来は初日に決めた、左フックのイメージを忘れ無かった。龍に対して虎の攻撃を繰り出す当たり、日本語能力がまるで古代人のように上等だ。右手を呼び水にし、それは幽霊のように、中性だから容赦は無い。「フラッシュのように短く強力に打て」思いと狙いは、こうだ。水が流れ、重さが加速し、左前腕全てに乗る。通常なら上に飛ぶような恐怖と共に手術着への罪悪感と共に虚空への一撃を放つ。そう。

 幽霊を虚空に放ちたい。かき消したい。一瞬、プロと言う甘美を味わいたいのでは無い。そしてその夢は憧れと共に叶う事になる。ガードをされ、強力な力を思わせる一瞬でも仁王を思わせるガードの対処だ。


 最大限の力が入る前、ストッピングと言う最悪の物では無い。左拳の甲の部分で顔面を完全に保護した。狙いは正しく、急所テンプルへと正確に軌道を描いていた。対処用の右手はハイキックの脚を掴んでいる。明日青あざに変わるだろう、強烈な力の入れ具合は足を駄目にする作戦にも見え、勿論憑依も狙いに含まれ入っているようにも見える。その場合は、協力しなければならない。

 練習の効果が出た。

「ガードしてもダメージが入るんだった」

 拳を痛めたのが練習だった。普通無い一撃ならまだ拳は持つ。拳痛という炎症チックな一種になるほど凄まじく強力なものだった。普通は素晴らしい。もっとやれと褒める。

 腕から消える、恐怖の幽霊を見ながら怯える事無く、その上の目が離せない状態となる。つまり、勿論怯えている。憑依は防げた。

 気迫が抜け緊張状態は終わる。出撃位置に戻るが、メチャ怖いので走りだした。光へと。

「風来走るぞ」

 堂々と飲料に向かってダッシュする。緊張感の抜けた状態での走りとなり、台に手を突きゼエゼエとするが、台が逆で笑ってしまうし風来がこう言う。

「幽霊、オールクリアですね」

「ああ」


 座り込み時間を潰す二人の姿が有った。幽霊の影に追いかけられるようであった。キャパシティを超える攻撃は骨折クラスの攻撃を繰り出したのだろう。黒い影が消えた『無影』と呼ばれそうねハイキックから、左のボディが狙うが全てガード、とんでもない代物だった。つい言ってしまう。

「幽霊かっこ良かったですね」

「ああ。お前、強いな」

 風来の言葉に永遠井が答える。距離を計っている状態だが、関係上礼儀だ。彼らはそう思う。


「カウンターの締めの技術についてどう思いますか」

 どうしても聞きたかった事を風来は聞いた。

「I国のマフィア流のナイフか。テロリストだぞ。あれは。技術元の人生は、悲劇そのものでな。我流だったんだ。誰にも習え無い。俺らの先輩だな。能力だけが、テロリストで一流だったんだ。コンスタントに成果を叩き出すだろ?さながら黒魔術だった訳だ。実はな、脳内だけでそれは、別の物に転化されていたって訳だ。勿論、レベル3は予見されていた。幻覚系の整合性を持った同じ意志を持った集団の悪夢だがアレにつかまるんだ。最強は最っ高に捕まらなかったんだ。公的機関って奴にはな。それで、仕掛けた側の技術をパチるのも合法って訳。会ったら気を付けろよ。もしかすると最強だぞ」

「ええ、エレキギターを壊さなきゃいいんですが」

「ああ、そう言うタイプか。ライブだろ。テロリストの魅力って奴に気を付けろよ。幽霊相手に、バックドロップはかますわ、デスマッチだわ、徒手空拳で30人は倒すがまあ、悪夢だが身体は健康でない可能性が有るがな。そうして、教育ソフトが来たって訳。彼が言うには最高のテロリストってのは教える訳。最強ってのは秘密を守らなきゃ行け無い。神経が同じ設計であること位は押さえなきゃいけない。他人を使うのが最高だとよ。単独だと言いたい訳よ。I国のマフィア流のナイフなんて技術的に有る訳が無い。現地語以外奇妙な本以外の何物でも無い。軍が学んでもアップデート対象の踏み台でしかない。本来マフィアてのはそんなもんなんだ。条件が異常でな。ただ、幽霊相手に斬り続けろでは無く、剣がそこに有る。これも無い。用意周到にナイフを持ち出し、夢の中の自分の所有権だな。よほど染み付いていたんだろう。空中から取り出し魔法のようにこれを、バッサリ行き続けた訳だ」

 彼は永遠井頼人の言葉に二回、頷いた。うんうんと言いたいが気を使わなければならない。永遠井は話しを続ける。

「コアだな。よほど詳しくなきゃ無理だ」

 彼は水を飲むように飲料を飲んだ。まだまだ、続ける。

「俺はな、地下格闘のリング禍が悪い方向に働いたんだ」

 ピアノロールの無い、ピアノを弾く姿が、憑依を作為的に幽霊にやらせた事を思わせた。良く使うのだろう。ヌンチャクを曲芸のように、手首にかけている。これでは攻撃出来ない。説明慣れを思わせた。弱い攻撃による、死の結果は尚も劣等感を加速させる。弱いと自分に言い聞かせる事になるからでもある。人間のエゴは死をも弄んだ。そう言う、オタク共のわがままに合わせた。仕様説明や明細書なんて、そんなものだろう。

「カウンターの解法はそうでしたか」

 おうよ、と言う意味のポーズを永遠井は取った。モーションと言い、入り方と言い今度マネしよう。そう思った。飲料を縦にトレーニング器具のように持ち上げ頷く形だ。白の囚人服がそう感じさせるのだろう。彼の番号も良く有るものだ。統一系と呼ばれている、区別し難い番号だ。問題が起きたら次は英語二つ、次に三つと一つずつ増える事になっている。大文字だ。BADとかENDになるのかあーあ、SINか。あーあ。DIEを思いGODにすがり、楽しそうではある。

「時間を見に行くか」

 永遠井が天窓を言葉で差して言う。ゆっくりと時間は流れ薄ぼんやりとした明るさが見える気がする。

「最終的にはそうだ。リング禍が利用された。上等過ぎる完全犯罪って訳だ。勿論外の世界にはそんあ証明何も無いからな」

 立ち上がりガイドをするように、飲料を持ち、半ば探検のようにゆったりと歩いて進む。風来もこれに続いた。飲料を同じように持った。


 快晴の空は夜で星が見える。死を連想させるのに充分な曲がり角の先から連続して配置している。二辺壁際なようでコの字の二つは四角い天窓が配置している。昼間だったらライトグレーで何も思わない肩車をしても届かないそれは共犯者意味する、脱出口からの破壊工作だ。狙いは忌々しくも鳥を使うことぐらいしか思い付かない。照明は機械でメンテナンスされる。リモコンプロペラ機の室内用が工作用に強力に成った。そんな感じのものだ。コンクリートが石の破片のように砕け落ちる事も無い。シャープにオリジナルの造形九十度を保っている。もう一度、曲がり角を曲がり、奥へと進む。弱い光が照らした少し床が見えそうな状態だ。トワイライトには黎明の意味も有る。億では異変が起きている。

 

 グリグリと暗黙の内にさも当然のように空間に干渉が起きる。


 暗闇が支配した先でこれだ。

「召喚術師だ。ふざけるな」

 永遠井頼人は叫ぶ。しかも、『死』型だ。仲間を呼ぶ呼び水の行動を取らされ、英語ではアンダーワールドと表現される所からの一撃死、瞬間的に憑依を数多くの無駄を否定する苦痛の死を与えて来る存在、それが『死』型だ。外部干渉を意味する。外側からの悪意と言う事だ。それに技術が加わる。永遠井頼人の言葉は安心した所に適切だ。瞬間的に数々の憑依を行い対象を死へと到らしめる。五メートル上空の禍々しい歪みは天井から髪型はいつものセンターで分けていると、眼は判断する。無表情の美形、蒼い発光、能面の本質、着地。

「『死』型かふざけるな。いいかこう言う時は自画自賛だ。おい、お前俺を褒めろ」

 こちらもプロだ。素直にそれを行った。語弊は有るが従った形だ。分からないだろうが。永遠井頼人の言葉に従う。まだだ。まだ着地していない。

「ブルーだったらかっこいい」

 紫の炎がヌンチャクから出てるだけでも異常なのだが、問いかけも変だ。急いでいる状態は言葉だけでも整った。

「ああそれは、いつもより調子のいい時だ」

「二体目来るな」

 『死』型の持つ問題、そう、絶対のカリスマ性は依存心を強烈に生む。人間なんか桁違いに箸にも棒にも引っかから無い。反応からこう、風来は威圧する。死への誘いの様な場、神々しさだったのが目に移った事実だったのだ。事実は精神に作用し、どんな脳内命令からの書き替えも効かず、直接作用する。凶悪なのは薬より狙い澄ました刃を当て、冷たく患部を切るよりも効く。その事実に有る。西洋薬にも多いが東洋の生薬系にも多い。バックに光が背部に黄色系の光が漏れるのでは無く、堂々としろと神のマネジメントがかかった感じだ。もう、感受性はメチャクチャだ。時間の猶予を即座に利用する。言葉は様子を見る傾向が少々有る。思考を辿る癖からだ。つま先から足はゆっくりとバレエの男型を思わせ着地する。怨念しか感じない。感受性はそう判断する。幽霊からはそうだ。風来玲央にはそうだ。

「知っているか。風来、『死』型はデフェンシヴと呼ばれるほど耐久力が高い。嫌な平等感だ。実にいやな平等感だ。殴る回数でいい。それを計った事が有る。死のリスク何だがな。尊敬してくれ。やはり、パーフェクトなようだ。異様な攻撃力は攻撃力も異質だ。しかも、奴らは特攻とかそう言うのを気にしていない。それはザコだと思わせるためだ。高を括れば人間は慢心し、次の機会、次々と倒れた。最強を倒した事実こそ、最高の罠だった訳だ」

 幽霊は髪が長い。拍手を笑顔でパチパチとしている。左手でブイとやり、サインを出したあたりで、二体に変化オリジナルの左側に幽霊側にとっての左側に同じ形のまるで分身が現れた。ブルーのペイズリーが見え出した。恐怖は遂に、視覚に作用した。

 これは、死を意味する。呼吸に圧力がかかる。失敗すれば死だ。今日何としてでも出る。想いはこの方が強い。強烈に女子は皺が増えるだろう。こう言う所、男子は強い。戦傷だ。こう、かっこつける。しかし、状況はとんでもない。風来の仲間の彼が号令をかける。

「カウンターいや、スリーパーか。バックは出来ない」

 並列に並んでいる人間側はバッテリーセルのように整列し、幽霊の観点から見たら、攻撃が当たりやすい位置だ。息もつかぬ間に、左手からのワンツーが来た。上から見たら全身を完璧に使った腕による攻撃が顔面に向けての、『V字型』に見えただろう。「一人に集中しないか、憑依さえされなければ勝てる。時間の経過が勝ちだ」アゴを引き直撃を少し引き気味に喰らいながら風来は思う。幽霊は適当に言う。意味はあるだろうが印象状こうだ。上空の目かと思う。

「カウンターは私達が行っても良い。ブルーが素晴らしいのをなぜ知っている。特に、炎」

『死』型は、四・五次元で最も危険な情報へのアクセスな方なので封じにかかると取り決めあった。意思決定は実行され結果が出る。成果が出るのでは無い。成果は積み重ねができるが最後に消し飛ばすことができるのが歴史の常と言い換えているのでは無い。コンスタントにこちらも邪魔者は排除すべしをシンプルに実行する。

 ブルーの炎は幽霊にとって危険であり、そのためかそれを知るための特殊エフェクトシステムであるのが、また、事実であることがわかる。しかし、人側は、キーコマンドが大事な部分が特に抜けているので知る由もない。協力して知ったらイメージで引きずり込まれ、愚かな事に悪となる。人間は社会は特に、殴らないと相手は変わらない環境やシステムが愚か者の積み重ねで完成してしまったのだ。論理的な打破は現状不可能となる。ダハハと笑われれば良い方だ。これが世界だ。

 いつも言葉は幽霊の発するものそれは風来玲央の予測が当たらない。

 光の軌跡を辿ればそれがクロール型では無くストレートそのもののワンツーだった事が分かる。呼称としてはロングフックと呼ばれる形だ、彼らは吹っ飛びながら次の判断をする。連打用にやや手のラインはハの字だ。それを描く。残りの蒼い光が状態を教える。空中で、身体が間にもう一度攻撃を狙って来る。短期決戦は向こうも同じかその観察のヒマすら許さない。仕留める側ハンターと化す。「弱気は理解できてるんだよね」四・五次元での会話は固まった。高速戦闘に入る。失望を最もする経験者が嫌がる心が折れるのでは無い、依存と救済して欲しい想いから、憑依を許す。そして、絶対に許してはいけない。

 閉所用の攻撃に移る。空中で筋力を用いた脅威のステップは囚人に追い付き右手で頭をホールド膝蹴りを横に旋回させる形で、頭はプロレスラーが行ったアイアンクロー位痛いだろう。同時に締めの字の『〆』の様な感じがする。二体同時だ。蒼い光が急旋回して来てテンプルを狙うのが良く分かる。ロックから、膝蹴りは身体を急激に独楽のように旋回させる形で、膝はまたも牙の様に変化するが、それはヒトでは無く幽霊側だ。空中飛行に見えるだろう。そして、囚人たちの足は地面にまだ着いて無い。同一の方向へ吹っ飛ぶガードと受け身を失敗すれば、コンクリートが味方だ。出血位はするだろう。本能でのガードは身体を風来はカンフーのように回転させるように着地さえうまく行けば反撃が即座に出来る。闘争本能だ。永遠井は身体が大きく重いので、巧みにショックを上体で吸収するしかない。腕が壁に当たる。ヌンチャクを持った利き手側だ。囚人たちは気付く。「最強のある種でも味方、最高のソフト最強のテロリストの話を聞かれた。それも、上手く」事実はそれにヒトの悪意が加わる。勿論、外側だ。虫の息上手く利用するなとほとんどのこのフロアの人間、つまり、管理側も思う。確定だ。それほど酷い。そして上手い。

 今までは無かった今宵の平穏はギャー音と共に話は変わって来た。

「犠牲者が、また出ただろう」眼は完全に倒すことしか考えて無い。力と力の衝突を起こしさえすれば、十五秒稼げる。十五秒稼げば片方が息を吹き返す可能性が高い。風来の脳は一対二だ。地面に這いつくばるように上手く着地出来た彼は地面の本来ライトグレーの床を押し、立て無くとも中腰の位置まで一瞬で体勢を戻し、身体はバラバラでもそれでも幽霊目掛けて、右の一撃を襲い掛からせる。ナイフがそんな感じで動くので、コンバットの気分は身体の状態だ。通常ロングフックの一種が「届け」の願いと共に一瞬で身体の軸を揺らさないように左足に軸足を求め、堅く動かないようにほぼ全ての握力は消耗し切る可能性が高いと判断しながら、それでも抵抗しないと死ぬ。やや静かに呼吸を吐きながら、向こうはローキックを放ち、ヌンチャクに対し優位性を誇る。腰を突いてしまいそうなので、メンタルさえ生きていれば反撃可能だが、封じの一種の様に格闘技における攻撃封じを次々と繰り出す。相手によって全てが変わるのでテクニックとしては口伝レベルとしても存在しないが、案外世界のレベルを見るとそうでも無い。より上位のソフトを自信や自慢の有る所に喰らうと心が砕ける。

 風来の一撃は旋回し金色の斬撃が一条の帯のようにレコードの形を取り、繰り出されるが、「直撃で床に向くとは思わなかったんだよね」普通ならそう来ると思ったが、

「素晴らしい、美しい。クモのようだ」

 幽霊はこう喋る。ステップは高速のスライド状だった。後ろに位置し、右脚を前に、人差し指を床を差し右手でのそれは、キックからの受け身の事だ。『死』型は喋る。

「真似は君らだけの専売特許では無い」

 どうやら壁に思考と言うのはくっついていて、それを辿っていたかのようだ。風来は何度も『傷』型との戦闘の際、「『死』型の真似」と思ったのだ。そう、本来ヒト側が幽霊にやると良いものを彼らは繰り出した。幽霊と同じと言う事は帰属感があり、唯物論だろうが先祖供養だろうが、転生だろうが全てを内包しカバーする。そう、憑依への誘いだ。強烈な苦しみは死への救済となる。ベクトルは助けとなる。痛みは考えてはいけない。

 圧倒的威圧感に、周囲の別のフロアが呼応したかのようにギャーと言いだす。「ホールドからの旋回膝蹴り」滅多に使われ無い、売り方としては神秘と評される技の数々は笑顔で幕を閉じる。

 彼らは首を囚人側から見て右に傾げ、笑顔になった。時間を計測していた。言葉は次に繋げる為のものだろう。希望の光が強くなって来た。蒼い光が陽の光になって来た気がする。火が味方したかのような色だ。

 最適な位置へ幽霊は移動。両腕を前に出し手錠のポーズへ。そしてそこから、両腕を地面に着地させお詫びのポーズを取ったかに様に思わせ、申し訳無いと感受性に強制的にキャッチさせた。しかし、それはゆっくりでは無い。幽霊特有のスピードに慣れるとスローモーションが普通と変化し、常識が変わる。話の内容が合わない感じとすれ違いが延々と起こる。逆さ旋回脚を見た事が有るだろうか。あれはどうやら心臓を狙うものだったらしい。普通はローキックの部分に当てるだろう。勿論、異常な加速は蹴り出しから全てにおいて優秀だが真の狙いは一つ、背骨を陥没させるか、腰骨を砕く。心臓を貫き行動不能にする。加速用の蹴り出しから一気に最高点に向かう為に地面への着地をフェイントとし、視点をすり抜ける事を基本とする。完全な幽霊側の論理だ。二撃目、三撃目、四撃目が本番で五撃目からは事後のフォローに入るのでは無く接地を狙う。正確には四撃目がフォローを含み、技のフォローに入り着地をする。もとの体勢に戻る。これでは、何をされたのか分からない。詫びのフェイントはカポエラの悪意と呼ばれている。しかし、人間の知る事の無い四・五次元の論理、情報だ。情報網はそこだ。死後の世界と呼ばれている。存在するか分からないソコだ。ガードから、戻った辺りで『死』型幽霊の体勢は戻り、消える。カポエラの歴史と共に感受性には伝わる。五撃目の脚が振り子となり、元の体勢に着地する。中腰の感がややある。二体同時のモーションが体格に合わせ旋回した。戻るボタンを押すかのように何度か光景が繰り返される。見えない攻撃は、視界のブレを認める。

 四撃乃型での〆『死』型は無言で結論を認識し合い、分かっていた。

「十六分の一分音符を思わせる」これは相変わらずだ。手でのバネは上昇を死体にすべく許可した。相手のことを考える。五撃なら『裏菊』見栄えとなり隣に憧れられる。「練習されてたまるか」の意だ。情熱は人間の歴史を昔から変えてきた。イメージは二人とも繰り返す。

 五撃の可能性が高い。

 風来は言った。

「飯を喰って無かったら腕が折れていた」

 恐怖が支配し、両膝を地面に付いた状態から動けなかった。イメージと攻撃のタイミング、暗い部屋に瞼を閉じるとブルーのペイズリーが張り付く。漆黒の色は藍色へと変わっていた。移行した空が希望の色だ。

 カポエラの花型の技は面には届かない。手錠も鉄で簡素な作りは上部で重い。しかし、勝った。

 カルシウムなどの栄養分の勝利となった。摂取してたから彼は無事だった。勿論、両名無事、憑依追加ゼロ。「風来玲央、撃破2 永遠井頼人、撃破1」何処かで記載されている。PTSD等の後遺症は知らない。

 恐怖で視界は歪み、『死』型幽霊の間で『裏菊』と呼ばれる技術は、死への連想と直面から五撃を四撃へと姿を変えた。裏め、憎しめ汝屠り弔われないと言う独特の防衛網を持って真実の姿を隠す。忍術だろう。とも言われている。そう―

 実際には衝撃でヒザが落ちたのだ。

 本物は金色の菊の花を模し、凍る牙と加速の集中が代償を顧みず行われ、時間の流れを表しているのでは無い。強制的に連想させる。

 光で彩られ、死へは老化でも至ると思い知らされる。直撃は老化に似る。囚人の腕の組織は回復するが、老化そのものだ。全ては慢心のため、ダメージ無く裏を掻くためだ。そう、それは人間の意志、ここまで来る経緯だ。霊にとってそう。暗殺の手法は慢心と記載されてはいない。しかし、技術は近い。

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