裏菊、手錠拘束状態からの技術 甲

 第二節

 

「片腕があんなにやるとは思わ無いんだよね」


『傷』型が、仲間に伝える様に真実を話す。霊界だろうと思わせる。


 そう、二つを同時に対処する事は武術上ヌンチャクには出来ない。細かく、削るように一対一に持ち込む様にいわゆる差しの状態でこそさらに、メチャクチャ強いと感覚に観察させる。技術的に一対一用と観察させる。


 そう、『傷』型は反応し、幽霊として風来を取り囲み、『病』型は永遠井に、『傷』型は風来に二体の形を取る。反応し右手を振り、彼が永遠井の真似をしたって構わない。カウンターは機能し、嫉妬の金色と呼ばれそうな先程の龍の牙が幽霊たちの頬をなぞる。これでダメージだ。肩が先行した身体の旋回に対し瞬間のフラッシュを真似ていた。真似したのは風来であり、いくら見事でも着地のタイミングは隙を生むと判断した。死ぬのが確定して良い訳では無い。死ぬのが当然では無い。


 抜け抜けと生き残る事が正しい。早期にここを脱出してこそ、利得を求めた奴に仕返しが出来る。これは、刑期の短縮と言うシステム上嘘では無い。

「早期に脱出してこそ利得を求めた奴に仕返しが出来る。インターネットに拡がるまことしやかな嘘ですが。システム上可能です」

「ああ、その通りだ。やれ」

 永遠井とわい頼人らいとはこう言う。風来の抜群のアシストに対しこうだ。

 鼓舞だ。囚人同士の風来からはじまる会話は成立する。浮身から瞬身呼吸を合わせこう言う感じだ。風来に取って、そろそろフックを覚えた。人を傷つける技術を試したくなる社会こそ、社会の事実だ。それは、本質を突いている。フックから入るダメージの蓄積による幽霊の撃退だ。今の言葉は状況上それを示す。今の状況はそれを狙う。

 返す刀で交差をナイフで描き、ガード、それは黄金色が付き纏う。いわゆる剣での交差が可能なほど風来は器用な仕事人であった。幽霊はスウェーバックを平行に行う。うっすらと黄金色が幽霊の頬に輝き影響が出て、かわし方としては充分な距離だ。

 幽霊にもヌンチャクは初見に厳しく、抜刀の構えから構えられた、武器に負荷のかかるやり方で、これは攻撃法を見ただけではあとで言葉に出来ないのだが目にはしっかりと焼き付いた。実際は幽霊の攻撃に対処する。次々とカウンターを取り、じりじりと距離を煮詰め、詰めより最大点を超えた。

 フラッシュバックするような速度の黒の鋼製のヌンチャクだ。銀では決して無い。巧みに距離を取り、自分にさえ当たらなければ、防御の面においてもスリーパーホールドは風来がカバーに入る。幽霊の狙いはこれ、だろう。悲しい事にU国の政策は、スリーパーホールドを平和とすら考えさせる。鎖の音と後ろから近づく首締めの事件が頻発したのだろう。

 禁止なのは所持であり、ヌンチャクのカンフー映画真似や多分、おもちゃも所持出来ない。闇マーケットでヌンチャクの販売は見られるだろう。

 特にプロの領域で、そう、思わせる。後ろから近付く鎖と首締めの手法と書類の領域は伏せられた領域の情報だからだ。

 意識する。「ースリーパーホールドが怖くて仕方ないがー」永遠井頼人は高速で行う。視界がずれ、普段の物から確実に歪み変わって行く。


 それは、同時に本人に取って対策となる。踏み込む様にヒザに負荷がかかるが一文字に薙ぎ払い、幽霊は胴部から裂ける様に掻き消える。刀の完成形の様に一瞬で形を取る。

 ザンの漢字に斬の字に変化したかのようなヒュンと弱い音が風切り音と教える。

 ザンッと言う見た目の思い切りのいい派手さ特に見た目の派手さ、えげつなさとは別に事実はひ弱で軟弱にも見える。それが、護身用に開発された我が国と言っても地域は沖縄あとは、フィリピン辺り。ヌンチャクだ。

 カコーンと鉄格子に当たらなかったのも有難い。カウンターを取られるとこの型は最悪だと操者はインプットしていた。ここから先は事故へと繋がる。状況は向こうは了となる。

 目で追いつつ打撃の喰らい慣れから、細々と当たるタイミングを掴むべく風来は、こっちのスリーパーを取られる事を警戒しバックステップを取り、上下二連が怖いが、初日の再現は最悪だと思い、病魔降退のイメージ通り、適切にターゲットに孔をあけていく。面に当たるのは珍しいので、まだケタケタは収まらない。状況は悪いらしい。表情からそう読む。孔雀明王と知らない神の名前を思っても良い。とにかくめでたい事に仲間が撃墜一だ。

『傷』型は死に到る方法が憑依からの死では無く、ヒトの身体を傷付けるのが上手い。死への直撃をグイグイ進むのに対して、的確にこちらの攻撃が当たる可能性が高い。こう判断、その通り仮説と実行を繰り消し、有効打を導き出さねばならない。

 左フックを打たれた身体が流れても、無理矢理、肋骨の左側に刃の先端を引っ掛けにかかる。何故か。こちらの方が身体が大きい。ショルダーブロックは習わずとも、囚人服に頼りつつ最速で腕を振り、狙った先へと龍の牙が襲いかかる。黄金だ。二発、音は成らないが、身体に衝撃が返って来た。

 サンドバックは壁に貼った雑巾だったが、幽霊の実際は驚異のレベルを超えた凶悪なレベルの体幹系の強さだ。情報の取得は殴った者の利得だ。利き腕のダブルを同じポイントでは無く、より腹部へと狙点を下へずらし、ボクシングを意識、絶対負けないと誓った。

「おーし、俺もそっちに行く。見てろ」

 天井は破壊を防ぐために五メートルを確保、機械のリモートコントロールによる修理を可能とした。主に失敗の時に着地が怖いからだ。自業自得の腕の骨折なんて笑え無い。しかも、人間をクッションに利用しようものなら誰得と言わんばかりに罪が的確に増える。壮大な量だろう。

 空中殺法ってのはやはり幽霊の真骨頂で持ち場だ。高さ5mの体操技は上空とも言える。構えと共に脚を完全に天井に向けた。技として完成された揃えた脚は、一度完全に天地を使用者に逆を与えた。体操技からの蹴りなんて見舞われたら蒼い光の影響もあり、見とれてしまい。口を開け、最大限防御がおろそかな状態に、グチャッと身体は力のベクトルを受ける。衝撃を最大限触れた時に上がるように切磋琢磨からそう行く。最悪の状態と隠して伏してあるのが整合性の状態、つまり、普通だ。沢山幽霊はいないからこれは無い。リフト役がチアみたいに要る。妄想の中の一番怖いものだ。

 そして、関係無く環境の物理条件に反し、『傷』型幽霊は右ストレートを打ちたそうだが、打ったのは目の前では無く、後ろの方、威嚇をするようだ。ただし、笑顔で。的確な防御から、細かくコンスタントに落とすやり方こそ、理想であり、絶対に一撃に依存すると派手な成果は出るが、撃退にであって、死に対しての身体の提供率も高い。

 疲れとプレッシャーを、風来は自分の思考から感じ取る。ネガティブな未来をありありと描き出して、負けを幽霊に提供し出しているからだ。脳内はその内、実行される事が多い。


 標本なら鮮度が高いのが高く売れたらどうすると一瞬考えさせられる。献体と呼ばれるシステムだ。俺が死んでも形が残るので、俺の意志は残ると幽霊に対し言いたそうだ。悲しい事に良く分かって無い、対処させられている現象なのだ。軽い空気は重い重量感を持って来た。疲れと圧力は的確に身体を動かないようにして行く。

 フックからの二発は連続して当たった。頬へのダメージが入っているならば明確にイニチアシブが取れていると考えても良いだろう。アッパーは軌道が合っていてもスウェーバックでかわされる。少々のフロントステップが入り、距離感を合わせ、金色へと刃が変化したのを確認した。見えていても相手に取って避けにくい一撃を望む。

 ノーモーションのかつ、有効打はプロになっても出来ない可能性があるからだ。展開に頼るとかそっち系だろうと風来は予測する。左のミドルをガード、幽霊からの攻撃は風来の処理により腹部へはダメージを抑えた。呼吸器系へのダメージは低い。何度も言うが、呼吸器系を持って行かれると、確実に死に至る。脳内ではおぞましいほどこうだ。向こうもフロントステップ付きだ。スライドするように幽霊が伸びるのでは無く瞬間移動の様に向こうの輪郭が空間に暗闇のはずのそこに残る。

 黄金に変化した期待の右ストレートは期待に反し、左ミドルで潰される。それも簡単に。確実に。一々、心に傷が付く相手だ。

 ヒトの死の呼び水の領域には呼吸だ。それが必ずある。

 たかが十七センチだが、それが全てだ。筋力系のリミッター解除は戦力として用いられ、戦略的に効果を上げるべく、カスタマイズされているのでは無く定数の領域だろう。つまり、改善の効かない結果の領域、その世界を喰らっている。心臓を蹴られたら直撃は普通に死だ。人間では無い。人間ならその蹴りは足が抜ける様に痛いだろう。幽霊は幽霊であり、プラズマ現象と因みに言われても火なので通る。想いで火を起こせたか。可能性は有る。結線が繋がらないからだ。今より昔は火山ならその身を犠牲にするレベルの野生の獣では無く、医療レベルが最悪なので、ウイルスや爬虫類では無く、虫だ。これも致命傷、ここから火のニーズを算出すると、古代の人間の願いであった可能性がある。物々しい空気に支配されてもココぐらいは通る。

 ショートレンジ用の突きなどは相手に打ち返される事を意味する。よって、圧力差で敗北が強力さと一撃の間の数発の攻撃、囚人組の情報は最も危惧されている。再犯防止の対象なので巻き戻しが起こり得る。ここが、難しい。痛みも支配し、蒼痣は幽霊特有の現象がバッチリと身体に痕に残る。記憶から上手く、付き合い方が構築出来ないと、外では不幸が、収容所では、死が、確定する。身体におけるスロットが一つ埋まり憑依の内容が実行される。本体は何処にいるのか分からない。全く無責任なシステムだ。もらい受けや、振り替え系の技術の結集が外道転生の術、外道転生の行に行われた。このレベルだと、ほぼ効かない。医薬品が健康食料になり、繰り返し、繰り返した結果がそれしか効かない状態のレベル3だ。日常がこうだと非常に厳しい環境に置かれる事になる。因みに平等くらいは守られている。特別なのは自分だけとは行かない。知力の本質がストレスの矛先を向けるだけで、簡易な物へと目標達成へと可能としてしまうからだ。

 ミドルレンジは効いた。蹴りを習いたいぐらいだ。理想形の一つだろう。相手に打ち返させない怯みの効果までコントロールされている。完璧だ。流れた身体は本能で、右ストレートを放ち、動くうちに仕留めにかかる。初日のカウンターを思い出し、左手を外した完全にロックオンの状態は狙点を明確にし、最強の打ち降ろしを可能とする。未経験者でも、左ヒザに負荷をかけ、痛みを犠牲に銀色の流線の筋を出したって良く、レベル3環境エフェクトでも帰って自慢しても構わない筈だ。右手の金属リングの部分が額中央部分に的確にヒット、順手では出来ないストレートの選択だ。咄嗟と言う事は手首を掻き切る可能性がある。激情するタイプなのを気を使ってトレーニングモデルにしてくれたのだろう。一気に最大限、押し込む様に後ろ脚に相当する右足を蹴りこむ。力が逃げないようにする為でなく、もう怖くて逃げたいからだ。自然体として、また、そのリスクを知る物として怖いのは当然だ。『傷』型は簡単に吹っ飛び、空中からの舞う様な着地は、そのまま、後ろ回し蹴りの挙動で舞う様に蒼い光が蹴りの軌道が永遠井に襲い掛かる。のけぞった筈だ。そう、思うが判断をしなければならない。打ち降ろしは形だけでも最強の右ストレートでありたい。しかし、ブランドの様にいいものではある。形とか言うものはそう言う物に変化した。銃弾を受けても吹き飛ばないナイフの柄のリング部分は特殊仕様だ。トレーニングモデルも同様、戦場の凄まじさを物語る。ふざけるなってくらい銀色だが、ノブリスオブリージ感を高める。武器全般に言えそうだ。異常に優秀な事をラテン語にしてはならない。それは悪魔の名前で、同時にインプラントされた印象と象徴も思ってはならない。長年愛されて来た悪の象徴と外側の利用により、最悪の帝王が仕事をする。これを思い、風来玲央は、呪いの基本を思い出す。ヒトの不幸は科学され切っている。呪いの本質は効かないならば、弱い所に向かう所がある所だ。たまにでも、家庭に連絡し、偽善者と呼ばれても、その仕事をしたい。セオリーに忠実に、悪魔の帝王の名前は類推まで呼んではならない。死を意味する。

「欲望は帰る事だ」

 普段なら、絶対にミスをしない風来が口に出す。

「ああ、俺もだ」

 永遠井頼人が答える。

「馬鹿では無いけど永劫の裏側に近い悪魔は確かに、たまにでも君に力を貸すよ。詩的だから。死の上の人にはそう言えって命令されてる。そっか。もうそんなに弱いんだ。消えようかな。消すけど」

『傷』型が美しいのを戦闘本能に物を言わせていたせいで忘れていた。これを殴るといのには躊躇が出る。そう、赤ちゃんの論理だ。完璧に愛を奪って来る。これに、知力の面からでも勝たねばならない。歯を片側に食いしばり、右側の奥歯寄りに圧力がかかる。

 冷静に落ち着け。ここで対処をミスれば安全が崩れ、瞬間思考と呼びたいフラッシュメモリーにも残らない高速仕様が支配する。身の危険を身体が命じる。意志に関係無い物だ。

 愛を奪うとはこんなに強烈なのか。太陽が出れば勝ちだ。上を見れば四角の窓が時間を教える。星座に詳しければ時間も解るだろう。これを、永遠井が二歩動く前に終わらせる。取り敢えず、ジャブだ。牽制から距離を離し、軽く素早く、元の位置に、何も動かないターゲットの状態でも、力を籠めてもう一度、ギギギとメカノイズが走りそうな、練習しておいたクロールの左だ。バシュ、と音がする事は幽霊船では無い。完全に反応され左手を受け止められた。幻影が映った気がしたのだが。どちらも。

「お前、強かったのか」

 永遠井がそう言い。処置の様に容赦無くヌンチャクを振りにかかる。味方に迷惑さえかからなければ、どうしようもない一撃だ。紫の炎が袈裟斬りの形を描く。九十センチもあれば、刀としては立派だろう。こういうのには風来は強く、ベースの方が長いとかだ。グリップの効いた一撃が確実に相手を仕留める。空間範囲に余裕を作り右にサイドステップする。何度も言うが、幽霊の目的は憑依なのだ。憑依そのものにある。現実に我々を痛めつけてい死に至らしめる事では無い。生体エネルギーの利用こそ本分であり、外してはならない。

 囚人間では絶対に外してはならない。『傷』型幽霊のスイッチからの左ストレートが軽くてもあっさりとアゴを捉える。視覚と脳が上を向いて来る事を風来に知らせる。

 幽霊に掻き消えるまでの運動性能の低下は無い。右手を最適な位置にとしか思えない。『カッコいいでしょ。ウフフ』明確に左腕の声がした。商用『病』型だろう。向こうの味方かっくそッ風来は嘆き思う。

 瞬間の切り替えと技の全てを模倣した上での体捌きのさらなる努力の結晶の一つ、剣術をそれは思わせた。幽霊達は変で、四・五次元での会話をしているかの様だ。

「だってかっこいいんだもん」

 戦闘とは関係無い。風来のアゴが上を向いている間に彼は、体勢を崩してはならない。呼吸は生きている。精神は正常だ。「こっちが、タックルが出来れば」瞬間の紫の炎が次々と繰り出されているのを視界の下で見る。一撃一撃を様子を見ながらだ。ストッピングパワーは向こうにも効いている。こちらがしっかりしなければならない。ガードを上げ中腰からの慣れて無い姿勢はタックルへの移行のためだ。タックルなら攻撃が三発入る。

「上の人なら同身長ならバカじゃ無い」

 一瞬、『死』型に見える。幽霊は言葉を一瞬の間を置き続ける。

「そう言う」

 ケタケタ笑い、言うのを襲いかかれば止めれる。『傷』型はプライドをこれでもかと言う程ズタズタに引き裂いた。

 見た目と言うのは視界に入って来る情報と言うのは残酷に身体に影響する。悲しい事に、縦系の回転の攻撃以外は止めれる。そう、自信がある。事実、脚が、太刀となり、光が回転を知らせる。瞬間技の胴回し前回り廻転蹴りの一種だ。天地逆の蹴りが武人を思わせる縦の刀の一太刀となる。

 右足だろう親指が、あれ、左右逆「軌道を外せ!直撃を避けろ」風来は彼は身体を流すようにザーッとした感覚が残るがもう幽霊はいない。いつものワープだ。体勢を完全にしもう一度出来るぞと言う構えだ。

 しかし、学習が出来ると言う幽霊の目論見から目下最強の『傷』型は意志を持ちこう話す。勿論倒す意志は有る。あっけに取られる様な見せられ方だ。永遠井の状態はそう。そして、『傷』型幽霊は話し出す。左手を出して頂戴のポーズに見える様に手の平を返して見せる様な感じがする。脳から何から何まで言う事を聞かせる為こう言う。ここまでやられて、こう。

「何かいいの教えて」

 風来は最大の脅威を思い出す。サウスポーの構えは連打と一方的攻撃に制圧される事になる。話しかけられた彼が思い出したのは、体操技からの蹴りの一撃だ。最大の襲撃が待っている。これを、採れてしまった。声に負けている。可能性はこれだ。

「ああ、それ、出来る」

 タッと一瞬で隙無く最強の美とも称される、蒼い光の散る様な残光が、強制的に見とれる様にフワッと蒼い光は優しく無い。

 そして、もう片方が憑依に風来に入る。胴部だ。一撃の後でこれか。一撃とは縦回転の蹴り込む、サッカーボールを杭の様に打ち込むかのような、挙動だ。そして、憑依に対応しなければならない。永遠のデッドエンドへの、道を歩まさせられる。これは、完璧だ。ナイフの特性上、幽霊を掴む事は出来る。胴部には押し込む力が加わっている。タックルの寄り強い押し込む型だ。二点攻撃、これを喰らって生きている訳は無い。キャパシティは大丈夫だ。それでも一撃は黄金の牙を入れ、普通ならうごめいている。風来玲央は機転を利かし、壁向きになり、足を使い、壁を蹴り脱出ルートとした。多少荒いがダンッと音がした。左足は仕事をした。柔術には抜けの技術も有る。これも、応用し『死』型の様な死の確定から逃れる。準備していた通り背中をコンクリートの地面に滑らせるように滑らかに衝撃を吸収する。そして、『死』型では無い『傷』型には延々とダメージを与える。総合格闘に見られる形になって来た素人でもそう。必ず有効打として機能するだろう黄金牙は三連撃で入った。胴部は普通はキャパシティが一杯だ。無理矢理首元を狙い、力技で刺す。カランビットの中でも湾曲寄りの設計だからこそ出来る技であり、親指が仕事をする。そうでない場合はそう思った。シチュエーションのこういう細かいテクニックの連続がトレーニングの内容だ。殺人授業はこう、行われる。フルパワーだ。五十キログラムとはいえ、かなり強いプレッシャーに加え圧倒的剛力が幽霊には備わっている。握られる力は身体の力を弱め、右手の力を抜く。憑依に入っているので小型化、集中状態なので力も相当な物だ。蒼痣が明日残るだろう。「鎖骨よ、折れないでくれ」都合良く形状が引っかかってしまい、ビキビキと右腕が命令を効かなくなるように干渉して来る。左腕で挟んでも良いのがトレーニングモデルだ。この事実を思い出し、思いっ切り力を入れる。万力の様に。英語ではバイスと言うが近い音に罪の意味がある。「俺に決して罪は無い」と最強の力を命じ、本気で全てをかける。もう一方は、永遠井が幽霊の型を持ち、壁に押し付けているのが分かる。空発の銃弾は舞いの様に着地、死後の世界を美しくも妖しく思わせるものだった。「金を払って見たい」実はマジだ。そこから蹴りをミドルキックを襲い掛かるように容赦無く襲いかかるのでは無く、最も残酷非道に頭を狙い割った。テレパシーの情報でも見てたかの様に両腕が機能、幽霊は両腕で壁を押しヒトの固めた状態をあっさりとリリースさせる。そう、風来は足だが風来のマネだ。二発目が入るとまずいと、永遠井は判断、ヌンチャクを両腕で持ち後ろからロープの様に離しにかかる。地面を這う風来は蹴りが残っていると、幽霊の胴部への掴みが下半身の半分を痛みと神経を走る麻痺で支配する。背中を床に付けあおむけの状態、マウントは取られる事無く小型化、憑依に入る。幽霊はツボも知っているかの様だ。「掻き消えろ」本気でマザコンと言われても憑依の二発目は残酷な不断の意志の力が要求される。

 努力が結実しない。不運と言うのは邪魔をしていないのではない。死へのルートをそれと知らず直結しているのを知ってもそれでも尚、コースターの上に乗り進む様な物だ。だから人間は本気を出す。そう言う時に自分が必要とされるのも一つ。風来の実態は悪化する。幽霊は近付き左足でヒトの右足を踏み付ける。一応はもう一人の人間が見える形だ。

 パワーが出ない。

 痺れた足は痛みの代わりだ。動かす事が全く容易では無い。プロレスラーに掴まれたかのような鍛え上げられたホールドは、憑依の目的の為に、完全に作られた。エゴイストと言うのは自分が必要とされる環境を作り出そうとするものであり、企業や経営、経済概念これは全てにおいて正しく、他人を犠牲にしても自分を優秀にし続ける。殺しのカウントはこっちに入り、だから外側の人間は本気を出す。憑依しようとしている、今、目の前の『傷』型がダメージに対し圧倒的にこちらを制御する力が高い、コントロールされた状態は扱える自由が少ない。少ない手段は、まるで外側の世界だ。

 狭い要求を通しても良くて、欲望を満たし利用されているだけ。数回で蓄積が利き通るのではない。そいつらはシステム的に、砂漠を歩ませて来る。毎回、規則的に不変であり改善から、正義がこちらに有っても当然、憮然とした表情、威嚇、視覚野には暴力として危機感は潜伏したダメージとして認識されず蓄積される。ああ、あいつらと同じだ。

 キルタイムなんて当然だ。体力の概念などそいつらには無い。徹頭徹尾ヒトの人生に責任を取ったと言えば実行した様な物と耳が学習し、まだいい方だ。

 これを繰り返す。身体が反応し、刃を起こす。刃物は真黒に漆黒の暗闇と同化、トレーニングナイフは刃の部分が厚く、ナイフでこじりねじる事に不安は無い。トレーニングナイフの本質は、ナイフ。幽霊に取ってはナイフとして機能する。そう、まるで魔法の力と言うやつだ。手持ちの状態を確かめる。刀身は湾曲し自分の方をやや向いている。これを九十度起こし、異常な指の力を使い、パワーの出る間にリングを天井に向ける。そして真黒になった刃を、左手に向けて安心して首を引き裂きにかかる。頸椎を超えた辺りで掻き消えた。人間のそういう部分を超えたら、押す力が勝ったのか『傷』型の幽霊が掻き消えた。首元から引き裂かれるように刃の描いた通り、掻き消えた。片方は引き剥がすとか離すとかでは無く、マークに近い、視界では捉えていたが認識は隠れているようにインプットは遮断されている。掴み引き剥がすパワーが永遠井にはあるがヌンチャクが、それを難しい物にしている。火の用心を逆さまに持ったような構えから首をホールドし、腕の様にヌンチャクを巻き付けてでも引きずり離そうと思っていた。しかし、現実にはマーク止まりで、幽霊は風来にストンピングを一撃入れるのみであった。アシストの様に左足はヒトの右足を踏みつける。その後、機能した。近づきヒトがあっさりとスーパーパワーで自身の左側へ。それはターンを含み戻すような力は、幽霊を風来から離した。そしてそれは最もヌンチャク使いに取って厄介だった、味方への攻撃をしないで済むと言う事を意味した。空発でも思いっ切り二連撃、三連撃の意志決定で振り回す。音が消え出す世界だ。紫の炎がただ軌跡だけを教える。瞬間のきらめきをこちらも幽霊の様に成って来るのはヒトだからで有り、感受性が有るからだ。三角形を描きヌンチャクは元の位置に戻る。対幽霊基本形の胴の辺りの狙う形の抜刀の型、これを基本としたり、やはり袈裟型だ。結構勝手に名付けている。スナップでは無く強烈な力の引く力を用いているので普通の状態だったら今頃繋ぐボルトでは無く、柄の部分の孔が力で押し拡がる。スピードと遠心力等で拡がるのが普通だ。勿論ピアスなどは収容時に外される。霊柩車に乗せられたと輸送の事を揶揄される。

 憑依と言う属性上近づくのが困難であり、しかし、場合によっては人間側が必殺技の空中からの踏みつけを可能とする。ヌンチャクの持ち味はここだ。レベル3条件のエフェクトがここで出るとかっこいい。弥が上にでも、その通りだ。投げなどの型などはヌンチャクのサイズと、慣れの問題、彼が大型で有る問題などから、スピードの有る相手には非常に難しい。決めるのが難しい技と化す。それは有効打でもある。必然的にヒットアンドアウェイの剣術型になってしまった。ちょっとかわいいのだ。いかつい人間が細かく失敗する姿は、練習の基本時間が絶対的に短いせいで、強引に多少でも事を進める型が多い。我流と言うのもこれからの人生を物語っているし、インターネットなどでは壮絶な叩きが待っている。揶揄ならかわいい。基礎の型が一つ抜けているなんて事ザラにある。残り一体、引きずるように足を戻し、強制的に動かす事が効かなくなった右脚を上手くカバーしながら立ち上がった。「向こうの人間にカバーは必要無いだろう」と右脚が動かない事による出来無い技を確認する。ナイフは振れる。観察の結果を幽霊の光に頼り切りその光のせいで蒼く見える人間の様子を見る。やはり近付くと危ない。こちらに来れば、もう、一度フロントネックロックか何かでチクチクと背中を狙うのみだ。しかし、幽霊は近距離でかわし続けると言う芸当をしてのけ続ける。軌道を完全に読んで言うようだ。軌道を読み難いと一部でも呼ばれているヌンチャク相手にサーカスの芸当でも難しい速度と約束組み手の型でも速度が速すぎる。一撃一撃が重いのでは無くフラッシュの様に印象が変わる。合間合間の隙が極めて短く、一打でも当たればほぼ勝負が付く様なものの連続だ。失望こそ人間に狙ったものであり、基本弄んだかのような手の平の上よりも非道な絶望感を覚える。芸当は天才の上の物、彼ら幽霊に取っての打撃の位置をキープし続けている。そろそろだ。呼吸が止まる。横隔膜は限界に近付く。肺への攻撃が入る。『死』型の様な凍える攻撃と化す。スタミナによって奪われたのでは無い。芸当によって、蒼を追いかける事によって、凍りつく身体と化す。身体が鈍くなっ所で、何度も嫌だった、ボディへの右ストレートが渾身の一撃が入る。幽霊の綺麗な右ストレートは決まり、流線は発光の影響もあり、流れ星の様だ。反応していたから良い物の、風来は一瞬、全滅を思い幽霊は風来を確認する余裕を使い彼を見ると、ギラギラした目が油を塗った爬虫類の様な眼がそこに有った。危険なヒトのサインだ。「一番の有効打を信じた」幽霊はこう考える。四・五次元で堂々と言い放つ。科学技術はそんな物だ。惨い一撃は入り、堂々と永遠井の身体をその力で後ずさりでは無くスライドさせる。「意図しないすり足に近いが、百九十センチ台の身体をここまで動かすバカがいるか」こう思う。こちらは完全に右脚がコントロールロストだ。近付けば邪魔になりかねない。構え直す。最もコンタクトに適し、構えやすい状態に。

 

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