第五章

帰還へ 「蒼く光るのは『死』型だ。風水が不利に働き、環境はレベルを3以上に引き上げた感じだ」

第五章


「蒼く光るのは『死』型だ。風水が不利に働き、環境はレベルを3以上に引き上げた感じだ」


 間髪入れず答える。幽霊が幽霊に答える。『死』型が揃うのは壮観だと言わんばかりに、α波の波動が幽霊から、出る。四・五次元では意思決定が伝えられる。リラックスだ。個性は不明だ。

 個性は無い。外部からは、こうだ。こう見える。


「この作戦を執る」


 幽霊の世界では遂に、情報と好機をキャッチしたが生体に対してエネルギーを奪うのこそ平等にであるが速攻に弱い。

 此れこそが事実だ。


 待ち構える事に不備は無い。


 ニンゲンの死へ、不足は有ってはならない。渦が、違うのだ。暗黒の、それも強大な。これは何かが必ず起こる。これは、好機だ。メインの燃料は、此れは怒りだ。『死』型幽霊は、夕景から決まり切った出現に周到な準備をしなければならなかった。

 恐怖は人間に対し、何かを狂わせる。この性能があるのが事実、認めなければシステムの死だ。美味しい部分は全体観を持ってすれば、依存点であり依存してしまっている点である。

 感情が優先すると、ただ払うべきものは認めることすら不可避の致命傷を機能させる。

「少々酔う。そう思う。正義感というやつだ」

 随分前の筈だ。美味しいものや状況を待ち構える時は時間の経過が体感が事実に対し、長い。


 風来玲央の置かれた現実はしかし、違う。


 呼吸の違う『死』型幽霊に対し、ギブアップしそうだ。

 音も無く這い寄り後ろから引きずり倒されるのでは無い。

 この部屋ではその心配は無い。凍る思いは赤色へと変化し熱く、出血を催しそうだ。そう、『紅蓮』そう呼ばれる地獄の代表名だ。

 幽霊の発光する現象自体を使うので、その心配は不意打ちでも少ない。一体なら後ろに回られなければその現象及び類推される心配は無い。

 脳から自分が抜けている。こう、思う。


 追随して死ぬものも無い。彼を信じて死ぬものも無い。他者が命を落とす事も無い。


 少々めちゃくちゃだが、それでも生きる。痛みは予定されている。失敗も苦痛に顔が歪むだろう。憎悪は帰る原動力になるか?答えは、いなだ。風来は、長い廊下を歩き……。中途半端な姿勢でも、左足のグリップを効かせて右のストレートを、風来玲央はナイフを当てる様に打ち込む。トレーニングモデルカリバーンは空を裂き恐竜のように敵を狙う。黄金色の牙が環境上見える。光は怪しいが果敢に攻めることが出来る。結果、オトコらしく計算する事も出来る。

 独り孤独な世界だ。死が待ち構えている。コンタクトは柱の前、両者三分の一柱寄り地点で起こる。風来は、幽霊の常軌を逸した右ストレートを上体を右横に倒す事でかわす。右のダブルが幽霊の攻撃の正体で直接ボディにドンと衝撃が走る。ピタッと止まりそこから、二連撃がストレートの同じ挙動が待っている。再生ボタンと巻き戻しボタン、これを繰り返し動作させた感じだ。違う!現実はカウンターみたいのを一発貰っただけだ。蓄積された疲労と精神の同様の疲弊を感じる。炙り出されるように認知する方が近い。認識は変わる。かなりネガティブだ。

 しかし、独りである事は怒りや全ての思いを乗せる。独り孤独な環境は味方する。最高の戦闘態勢を整えた。中級者というのは得てして、ださいものだ。テクニックの本は読む事が出来た。「だめだ、中途半端だ」これの連続だった。イメージから練習の実行は、かなり自我を出さず素直に行った。他人の欲望を呼ぶレベルのエゴの無さと自負している。公園で日中、もう秋だが練習するとして、この場合、他人とは指導者始め練習している仲間、そこら辺の例としては道中の人間、全てだ。暴力の対象として全てが上限の扱いがカモと成る、環境がレイシズムや人間ならレイシストに変わるレベルだ。

考えうる限りの最高はやはり武術の知識に依存した。呼吸法、歯の食いしばり方全てを参考にする。そして、素直に実行した。圧倒的戦力差は明らかで、基本幽霊に全てを教えている。

 その環境は知力の及ばない領域と呼ばれている。

 幽霊は上体をそのままダッキングのように低くし、ダブルの狙い通り、体勢を整える必要無く、整った体勢から予め準備しておいた攻撃を繰り出し、金色に輝くカリバーンの刃を無視、黄金牙に対しゆったりと体勢を整える様にダメージの押す力が残っているうちに右手で人差し指を伸ばし下から上に皮膚を使い爪を使わず、風来玲央のアゴを跳ね上げる。余裕の挑発は簡単に幽霊視界囚人〇一八号のアゴを跳ね上げ、視界の下方向で風来は幽霊を捉え続ける。『死』型はローキックを放ち、その右足で中途半端な重心をいともあっさり跳ね上げる。空中に浮かぶ風来の完成だ。

 クリーンヒットやヘヴィ級の特に練習で見られる風景だ。

 空中で右廻しに脚を一回転させ、ヒトは着地。幽霊は美意識上左廻しにしたかった。

 と事象が整えば読めるので、『生と死の境を生きるものよ』と言う意味だ。一々細かい事を徹底して完成させている。

 こちらも幽霊のように一切幽霊から目を離す事は無かった。今日は力の入れ方で、カリバーンが金色になるが、こちらの希望としては、黒の先輩と同じ『無影』だ。金色に輝く事は穴が開くトレーニングモデルとしては良いが、「こちらは死神だ。ふざけるな」明確にこう、思う。影は無く物の持つ影は消え一連の動作となる。右はアゴを跳ね上げ、上空への一刺しへと反逆の意図を持つ。外せば左が本気で、肘をカバーの空転前提の物は学習済みだ。的中前提の特にストレート系の打撃は空転すると肘にダメージが走る。打撃による衝撃では無い。手首の軟骨が潰れる様なアレでは無い。あらぬ方向に力は仕事をする。伸び続けるのは腕だ。失敗とはこう、肘を伸ばし続ける。即ち極端な速度とは「止められない」を意味する。肘が展開し広がり続けるのは止まらない。極まる。それが、力だ。折れる。回数をこなせばそうなるだろう。

 瞬時の判断は続き、もう一度踏み込みスライドを武士の早業のようにと願い、左フックを明確に当てる。やはりだ。視覚に依存している為、ノーモーションには弱い。確定には干渉が入る。ジャブは外すがスライドはこちらも出来、瞬間的に距離を詰め、甘い縮地などと言う言葉では無く、メカニカルな一撃を与えたい。速度は外れる事を代償に骨に負荷をかける。それは機能し実行され、吹っ飛ぶのは幽霊の側であり、それでも、左フックはエフェクトがかかる。衝撃波が拳から見える。ストレートでの代償は高く、回し蹴りでも同様、威力が高ければ黒魔術のように代償を要求して来る。巧くやるには時間がいる。プロはそれ用の神経を構築している物だ。

 無視して、ナイフで止めを刺したい。『傷』型や先輩から学習し過ぎた。自分がやはり正しかった。右スカイフックからの返しをV字で行う。一歩踏み込んでるので右脚が前だ。それでも、刃は光り、銀色に輝く。完全に的確にヒット、体勢と混乱は引き裂く様なダメージを与えた。浮く様に構え直し左拳を前にもう一度カウンターの構えだ。「最強のテロリストはもしかすると俺だ」そう考えればよかった。余裕を持って、怨念の対象へ左で制御をかけ、右を打ちこむ。唯一ともとれる弱点に体勢を整える。

「無心と言い縮地超えと言い、実に良い。『傷』型が笑わ無いじゃないか。今夜は違ってね。フィナーレだ。君の」

 横に一度崩すか、体勢の整った状態へのいきなりの投げはとにかく一瞬は考え崩しへの起点を要すると見ても良い。そのため、前提として痛みで支配し恐怖心で煽り、崩しでない崩しで決定打への布石を整えて行く。大抵の体勢からの行動は見抜き、アゴを跳ね上げそのまま投げる何て芸当簡単だ。いわゆるパワー技を使わないだけで、それは一瞬で死に到る。絶命は生体エネルギーの摂取上悪となる。それだけだ。相手は瞬身を要求した。こちらの方が上、それだけの事だ。その筈が、幽霊は普段なら絶対解法はこう、とルーチンワーク上にいるのもまた事実、多くのファイター達が闘い生き残って来た。違うとはそういう意味では無い。斬りたかったのは友情だ。実に厄介な、疑惑に満ち、刺し殺す様な憎悪に視点から何から何まで満ち無いか。こう感じる。風来の側も異常だ。しかし、カウンターの解法は絶対だ。様子を見る。

 身体は反応出来る。もし、弱気なら、一体連れ帰り、外の技術の外道にでも頼めばいい。「出て行けー出て行けー」これで有名なあの世界だが、金とリスクなしで安全が待っている。これで実はやる気が出ない。マージンと言うのは真剣勝負をしなくても良いと言うネガティブな選択肢をひたすらにただただ迫る。


 しかし、状態は変わってしまう。脳と思考が付いて行かず、混乱に陥る。明確な理由は幽霊から齎される暴力と死だ。決意は歯が立たないが、風来を現実に踏み止まらせるくらいの威力は持つ。

 女の敵と揶揄された事も有り、特定は難しいのだが減刑と幽霊退治そのものの難易度を跳ね上げるべく、三日間に祈り続けた召喚術師が結果を次々と出す。『死』型は、エネルギーを得るかの様に余裕を持って、宙に浮き、風来を蹴り、左足を使い、所定の位置へと誘導する。圧倒的圧力で動けない状態が維持される。彼を正面にもう一度向き尚っさせ柱から廊下の対角線を引き、そのX点の中央へ。動けないのは事実だ。「金縛り系統の技術は過去の技術で、脚部に力を入れそしてレベル下げの物理を俺は持つ」これでも駄目だ。そして幽霊の儀式ははじまる。仕事用の店の顔と本人だけの時との風来玲央の顔はやはり少々違う。「構えろ」想いを強く。命令は続く。火が付いたかのようだった横一列に蒼い炎がポツポツからフワッと優しくそしてそれは人型に、幽霊の形を取り、衣服を見るに『死』型、全員同じ。着地はまだ。

 呪われたらレベル3環境と言うのは少なく芸術的過ぎて姿を嫉妬心で書きかえるほどだ。生前でも無く近い人を探し、ストーリーとして書き上げるカリスマ性を持つ。およそ五十年その効果は、地域中心に続く。ルールが生まれ掟となる。呼び水の弱い物となり、また、もう一度狩りに出かける事が出来るのだ。そう、今日は―


 


 囚人に取ってはステータス感そのもので、堕落を意味する。これは信頼を風来がされた事を意味する。しかし、幽霊に取っても出現と逸話、犠牲と代償、その全て関連において完璧に近い物を全て完全に兼ね備えた。いや、兼ね備え切った。

『死』型幽霊は中央部の初期の一体を除き全て、天井には四辺に渡り、四角の天窓が規則正しくただし、小さく形は同じに配置、ウシミツドキと言っても通りそうな辺りは腹部に来る貫く恐怖を風来玲央に与える。


 カタコンベと言われる地下の集中監視を行う管理部屋では、監視から異常が観測され対処に迫られていた。スタッフとしては最近会った、好蒼年の管理スタッフと初日からいたゴツイ体格のいい特殊部隊かと思わせるスタッフが会話している。若い方からだ。

「7階フロアで異常発生、三百体に膨れ上がりました」

「幽霊がか、形は」

「『死』型、それも全員です」

「風来の冤罪の件急がせろ」

「了解しました」


 風来玲央は、過去のフラッシュバックと恐怖で動け無い。計算はするが影縛りの術の様な圧力負けはまずいので右へ。三十七度くらい先へ突っ込み軍隊式に近い事を確認、フルパワーの邂逅用の一撃はそれでもブルーの炎を色めき立つように瞬かせ出した。カリバーンはブルーに変化する。体育館二つ分、二倍の面積感と言うなんとも微妙な感覚だ。内側に湾曲しているので腕を直線に延ばすと牙になる。これは、トレーニングナイフのせいだ。先ほどまでの黄金牙の持ち主はヌンチャクがブルーの炎に変化すると思っていた。絢爛豪華なブルーの炎だ。白の様な狐の様な感じがするが何かと関連し、思い出せない。

 念動力を幽霊は用いた。レベル3に大量の『死』型を聞いた事が無い。防御から最初の位置に戻される。憑依二体で死亡だ。死亡確定に対し、重量が増す形で、動け無くして来る。影縛りの術だろう。構え直し、呼吸を整え直したところで、中央部の幽霊が指揮を執り直す。

「こちらに二撃は入れた。かなり速い。強制で呼吸を戻す。ゆっくりやる。この場合、彼〇一八号は思考を辿る事に強い」


 そして、四・五次元に移る。こう、言った。

「忍術の寸鉄打ちで仕留める」

 技術的にはマウントを取り、マットに直撃する事を前提としたストレートだ。面を狙う。


 プロの世界では、事例があり、珍しいが格闘技での試合中、試合用のグローブが寸鉄打ちの実行と失敗によりマットに直撃、グローブが破損し選手はビビりかわしたが試合は止まった。耳からの流血を思わせたが何も無かったので密やかな静かなアーカイブだ。静けさを持つ一連の流れの中で、事実は技術的派手さに対し地味に行われた。


 技術的には実用性と美しさを兼ね備えたもので、イメージと参考に決まった場合の型が映像で流れ、表示される。四・五次元はこうやって終わる。数秒で終わる命に対し、急ぎ憑依せよという意味を込めて。


 実体の風来の目は違う。こう、思う。

 ブルーの変化のせいだ。警戒が有るのだろう。ナイフの変化は喜ぶべきであり、黄金は無視され続けて来た。ヌンチャクからの紫の炎は多数の尊敬と完璧さを生んだ。余剰で何人か助かったと思わせる。事実だろう。風来は直感する。凍える状態がナイフとなり刺さると言う表現が正しい。多数の同じ目的への意志が風来を動かす。


 裁判所にて、こんな時間にも裁判である。24時間に営業は拡大した。界隈は儲かる。キルタイムの極地の糾弾が深々と腹に刺さり、効いた。システム変更は全て変えた。自分の消費している時間は相手が人間の場合、相手も消費している事になった。つまりは常識が変わったという訳だ。説明は続く。


「権限の委譲を三回行った先が風来こと彼な訳です。彼は重要な権限を持たず、ましてやその問題となった領域のコントロール権を持ちません。さらには」

「待て、てめー、うちが悪いみたいだろうが。確かに虫を対処し無かったら全員その部屋の士気は下がるよ。利用者の精神力を鍛えるって書いて有っただろうが。あれも、そうだ。無視だ。大人の世界が悪なのは当然で、蒸し返す事こそ、レディの世界だ」

 怒気を含んだ怒声が響いた。勿論、シャットアウトした方だ。 

 夜中に法廷でやり合っているのが実際であり、嘘を上塗りして行き一番良い方へ導きフェイントを常時混ぜる。男対男の戦いで、長身な方で額を出したタイプとスマートでさらに長身なやや声が上ずって高いメガネとが戦っている。弁護士がどちらもの正体で有り、論戦をしている。冤罪側の弁護士の頭脳はこう。世論と代償の美味しい方はあいつは高い学習費を払わず全て美味しい思いをした事になっている。イメージをそう完成させ知力の極致と思い上がっているのが実態だ。価値とは自家製知力の極致であり、思い込みと決めつけを用いたバトルプルーフを経ないものだ。良く良く観察すると、論理的でない事が多い。母親はここで囚人や収容所の事を学習していたのだろう。

「知力の振りかざしですね。良く有る手法です。学閥と言われても、違法スレスレでは済まない、永遠に刻印される罪です。従わせたのは恐怖と言う物、その美しいと思う強力と思う知力ですね。活字にあなたは負けたんです。メモに残ってて証拠が有って助かりました。はっきり言います。それが、そう、そこの1番が証拠です」

 ポインターが、説明と同時に動く。殺虫剤を運営側以外が持ちこんでも良いのかという所が完全に焦点だった。争点はそこに集中し、一度敗れてももう一度集中し打ち破る。恐怖を利用し、故意の殺虫が出来ない事を盾に、傘に、従わせ言う事を聞かせていた訳だ。利用規約に、精神力を鍛えると有りそこに託けて殺虫剤を利用者側が持ちこまなければ成らなかった。部屋を飛び交う虫を利用し、言う事を聞かせ口を封じる。虫カゴから放たれるなどと言う愚かな事はしないだろうしスピード決済の手法を撮ればイメージが邪魔をするという意味だ。証拠や結論はこう。記載された事実は変わる。


 風景は動く。


 レベル2以下にされるよう7F天頂のフロアは手続きが取られる。『死』型は消える。


 ビーッ、制するような警告音が風来のフロアに鳴り響く。放送がそして、同時に鳴る。

「冤罪が立証されました。風来玲央今すぐ出なさい」

 風来はまだ、戦っていた。幽霊との激戦は身体が覚えるほどだった。染みる程、残酷だった。影による金縛りは解け光の総量が、ライトを超えた辺りで風来に取って幽霊は消えた。蒼い光の、燃やされるだろうと思い抵抗の計算しかして無かった。拮抗でも無い抵抗力は意志力は限界を超え、身体の変性がかかるかと思うそう錯覚する状態だった。

 鋼でも張りつめた糸はプツンと切れ、オートで扉は開き、照明は無理矢理点けられ、さっきまでの神秘感など全然無い状態になり風来の安全性が確保される。半ば強制的に運営側の論理的暴力にグレそうだった。外側の論理を変えるには全てを変えなければならない。

 そう、まるで、幽霊など最初からいなかった。もう一度、風景は動く。もう一度見たかったメカの登場だ。ナイフ持ちの右手をカメラに伸ばし風来は泣きそうなのを認める。


 実際には、鉄格子の個人の部屋だ。音が鳴り警告音が響いたのは風来玲央の部屋、もう、どうなっているか分からない。光の睡眠妨害装置の応用だと言う事に気付くのに時間がかかった。

 久し振りに職場のエレキギターを売っていたり関連の物や、内部でのショップスタッフやクラフトマンとしての仕事の複合が起きている状態を思い出した。この職なら、専門性では無く普通はディストーションやオーバードライブ系のプログラムを主に盗まれる物だ。幽霊関係の起点はここだけだとは思っていた。設計図なんかも欲しがられる。パーツを作る業者もいつまでも持つ訳でも無く、単価は薄い。専用の配備となると『愛』無しにはやってられない。

 時間は経ち、生きていて準備をしている。帰りの支度だ。周りに人はいない。静寂な空間がただ、拡がる。

 ビースト論理を用いなかったのも勝因である。風来は分析する。呼吸は整い、平穏な精神が戻って来た。悪魔に身を委ねる様な凶暴化の精神を用いなかった事が、驚異的な結果の良さの根源であり、憑依ゼロは追加ゼロという意味であり、奇跡的である。勝率が高いと見られていた人間の主な敗因は良く調べておいて、正解であった。色んな意外な物が突如出て来て依存したが、特にこれは正解だった。調べておいて良かった。

 モニターの有る部屋に通される。確かに外の世界に憧れて、モニターを殴り壊しそうだ。


 人間に会ったら殴り殺しそうであった。メカが誘導してくれて助かった。適度に客用のクッションの効いた濃いブラウンのイスに座る。手荷物にはバイオグローブと名付けたあれと、最終戦に使用した。今まで散々助けてくれたトレーニングモデルカリバーンとがある。鞘は英語でシースと言うが、付いて無いので箱の中だ。二十四時間営業の裁判所に対し部屋が少なくなってしまったからでありそこら辺の繁盛は固い。騙した連中、三人おのおのの意見を尊重し、彼女達の「見たくたい」と、「安全性を考慮し」でスピーディーに放置されてしまった。ポイ捨てであり、嫌な気分だ。何度も言うが障りを起こしたかのように、争点が消えてしまっている。苦手な物を自ら好んで食べようはしないだろう。そう言う事だ。AIならとはいっても、そこに付け狙うかの様に機能するのがまた、霊だ。外側の世界だ。今までの事を注意深く思い出して、今後の参考にする。用意では無く、仲間を作っても無駄だと知り、狡猾にしなければならない。着替えも終えた。逆のベクトル以上の作戦を取らねばならないので、別の次元の『自由』を選択することにした。裁判に出た時の格好であり、それのせいで「見たく無い」と言われた。つまりは、別室だったという訳だ。長身は威圧となり恐怖は相手の言う事を聞くからだったか。再現性とフラッシュバックの勝利だった訳だ。いちいち喧嘩など出来ない拘束具と化すのがフィット気味の事実、フィットネスでも丈夫な防護性能でも無い。大切に扱う服という高価な黒上下で靴が自由気味に設計されたものだ。迷惑がかかりそうだ。なので言わない。オレはここの服を着て出ると。ロングのロックTだった気がする。これも同じだ。白を基調とし、黒赤の順だ。それは、血に見える。裁判所は冷気が強く、これでいい。これが正しい。

 前科持ちとして前科持ちでは無いが、生き方が変わる。


 待ち時間、こうまとまった。


 収容所のトップの放送が聞こえる。確か女性で若く、美女だ。グラビアアイドルがそんな仕事するかと言った感じだ。演説だ。小さな音で鳴っているので正確かは不安だ。メモを取ってもいいかも知れない。人間は突き放しても同じ旨味を得にもう一度、やって来る。

「神の扉、漆黒の平面の世界に蒼い光のペイズリーに彩られた蔦が絡み付いた死の世界への旅では無い。永劫の世界へ。永遠の正しさへ。開け、神の扉。絢爛豪華の白色と大理石と彫刻に彩られた偽の扉では無い。紅の監視を備えたそれは一つの玉(ぎょく)、死を連想させる緑に変色した鉄の扉、それは龍を想わせるだろう。運命の因果は破壊され抵抗する事は出来ない。決め付けられた運命の歯車は廻り巡る。勇ましく進め。怯んでも戦え。諦めても逃げ道は無い。あなた方は生きているのだから。翡翠の刀で障害を払い、刀は何度もこぼれ落ちる。心の形は無く、何度も朽ちかけ崩れる。翡翠は心を意味し、かつてそう作られた。知は生き、正しいならば生き残る。選択しなければならない。選択を迫られる。端的に言うと永劫を願ったものであるかを。因果と連鎖はあなた方にかかっている。ならばせめてベクトルを外してはならない。神の扉は白の絢爛豪華では無く、質素で監視の意を持つ。死の意味を持って、開け神の扉。死の意味を知って、開け。神の扉」

 簡略版が聞こえるが実際は長い。続きが聴こえて来た。初期、出始めの部分にそう思う。今となっては解法を示していると捉える。「かつてそう作られた」へ。ここは有名だ。好かれていると言う意味で。安全祈願の意だったかと府に落ちる。中間部分への感想だ。

 確認する。実際事実であるようで環境慣れのせいだ。自分の支配者は自分でありたいと切に願う。知は生き、神の扉まで一気に進む。

「ああ確かにスリーパーが一番ヤバイ、特に恋人の記憶が有る奴はな」素直に聞いてそう思った。外にはアレが有る。『自殺代筆屋だ』まず、これを思い出さ無いのに苦労した。死に方は選べ無いと、絶望と後悔をしないためだ。

 初日に、聞きたかったのはこれだ。この演説だ。最後の日に効力は完全に期日を超えたらしい。風来は頑張ったと自分で自分を褒めた。これは、攻略法として知られている。単純だが解法はこれを目指すのみ。


 クツは捨てて行く。縁が付くと、嫌われるからだ。

 彼は言った。

「番号01845008661だ」

 もう一度、我侭と理不尽の世界に勇気を持って踏み出す。

                                END



 

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