第11話 幸せ

 最近、マリエが寝込むことが多くなった。


 結婚して戻った娘が、面倒をみてくれている。


 年を取ったと自分でも感じるようになった。


 旦那は出来たやつで、娘をしっかり支えて手助けをしてくれるので、今後の心配はない。


 


 「お母さんが、お父さんを呼んでいるの」


 娘に呼ばれ、マリエの元に行くと慈愛に満ちた笑みで迎えられた。


 「ふふ。貴方は、余り変わらないわね」


 「変わったさ。すっかりお爺さんだ」


 「そうね。私もお婆さんだわ」


 「・・・」


 「私ね、貴方のこと嫌いだった」


 がーーーーん! 胸が痛い。もしかして、無理やりしょうがなく結婚してくれた?


 「なんでこんなに気になるの!? 物凄く怪しいのに!! って」


 それは、否めない。


 「でもその内気が付いたの、貴方が好きだからって。貴方に助けられて本当に良かった。貴方のおかげで幸せだった。ありがとう・・・・」


 ぼくは、泣いた。それは、ぼくこそだ。


 「マリエに会えて、ぼくこそ幸せだったよ。ありがとう・・・」



 その数時間後、マリエは眠るように息を引き取った。


 そして、マリエの葬式が済んだ頃、凪が声をかけてきた。


 「どうする?」


 「マリエのいないこの世界は寂しすぎる・・・」


 マリエのお墓の前で、ぼくは眠る。そして、凪がぼくをあそこへ連れて行ってくれる。


 ぼくは分かっていた。白雪様の加護で、あの世界で生き「神力」を使っていた自分は、もう純粋な「人」ではないことに・・・。

 

 普通に「人」として生きてこれたのは、多分凪のおかげということに・・・。


 

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