第4話 心のやすらぎ

 う~ん。 まぶしい・・・、あさ?


 「めざめたかえ」


 春の日差しのように柔らかな声。


 えっ?! ママのこえじゃない!?



 ゆっくり開いた目に映るのは、美しい空のような天井。そして、草木や鳥や動物等の生きているような絵? まるで、森の中にいるような、不思議な感じがする。そして、見たこともないパジャマ? に、柔らかな布団。


 横には、夢だと思っていた綺麗な人?(尻尾があるよね・・・?)


 急に不安になって、涙がこぼれると、そっとぬぐってくれる白い手。


 この人? は、誰だろう? こんなに優しくしてもらったことはない。なぜ、ぼくなんかに優しくしてくれるんだろう?


 「覚えておるかや? わらわは、白雪。そなたの名は?」


 ぼくは、うつむく。なぜなら、ぼくはぼくの名前が分からない。名前で呼んでくれる人がいなかったから・・・・・・・・・。何時も「お前」とか「がき」とか呼ばれていた。



 「よし! そなたの名は、今より「真(しん)」だ」


 白雪様は、そう言って真をぎゅっと抱きしめた。


 「ぼくの、なまえ・・・?」


 「ああ、そうやえ。真」


 ぼくの名前。ぼくを呼ぶ名前。


 「そうやえ、いやかえ?」


 「いやじゃない!!」


 初めて、真の方から白雪様に抱き着いた。胸の奥が熱い。苦しい位熱くて、目から何かが流れる。


 あぁ、ぼくは泣いているのか? でも、同じ涙なのに、嬉しい時の涙は暖かいんだ。



 この日ぼくは、「真」というぼくになった。


 ぐーーーーーー!


 こんなに嬉しい時に、突如なる、ぼくのお腹・・・。


 びくっと震えて頭を思わず抱える。そして、振り下ろされるはずの手をびくびくして待った。しかし、恐れたものはなく、代わりにそっと抱きしめられた。


 ああ、ここにママはいないんだ。


 ぼくの震えが落ち着くまで、白雪様は優しく抱きしめてくれた。


 そして、りんごの皮をむいて小さなうさぎさんの形に切ると、一つづつ食べさせてくれた。びくびくと食べるぼくに、一つ食べるごとに頭を撫でて褒めてくれる。


 食べると殴られていたぼくを、食べることが恐かったぼくを、一生懸命、大丈夫だと語りかけてくれた。



 そんなぼくは、非常にめんどくさかったと思う。でも、根気よく毎日食べさせてくれた。1週間たって、ようやくぼくは普通の食事が取れるようになる。

 

 


 

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