night7:悪夢は永遠に
『さ、ゲームを始めようか。きみがしっかり集めてきたカード、ある程度察しはついてると思うけどそれは、トランプだよ。でもこれはちょっと違う。これはでたらめに引いた五枚で、一枚ずつ相手に見せ、より強いかーどを持っていた方が一ポイント。使用したカードはお互いに使えない。カードは最弱をA(エース)、最強K(キング)をとする。』
僕の五枚の手札ははっきり言って強い。
数字の5、10、ジャック、クイーン、、だけど最後のカードはよくわからない。
さて運の良さを見せつけるか。
『始めよう。先ずは一枚目。ぼくはこれにするよ。様子見でね。』
相手はどう来るなんて完封してしまえばいい。一つを除いて大きい数字のカードなのだから。僕も様子を見よう。これだ。
二人とも、カードを裏にしてセット完了。
静寂と緊張が流れる。せーのの合図で裏返す。
『3。』
「5。」
よし、始めをとるのはとてもいいことだ。彼は涼しい顔をして次へ進めるよう、促した。
さて、二枚目。これはもう順当に小さいもの順ということで。
二人ともに緊張し、裏返すと二回目は
相手場面Q(クイーン)
自分場面10
まじか、だが相手は全く表情を変えない。何か策でもあるのか?
次の場面では勝たなければ勝機はない。ここで、少し思考を変えてこいつを出しておくか。
三回目
相手『8』
自分「Q」
よし、とてもいい傾向だ。次に僕がキングを出してしまえばコールドだ。キングなら何とかなるだろう。だが、相手の表情は変わらない。それが怖い。
運命の4回目。
自分は「J」を出し、余裕の表情(ポーカーフェイス)を決め込む。だが、スニッキーも負けじと勝利の笑みを浮かべている。
『君のカードは手に取るようにわかるよ。実に愉快だ。ここは君に絶対が無いことを見せよう。』
相手『Q』
まずい。僕のカードは、この弱そうなカード一枚のみになってしまった。
さっきのハリーの部屋でもらったカード。このカードが僕の運命の切り札だ。
『その顔では万策尽きたようだね。さらに言うとこの手札はキング。つまりは最強のカード。誰にも支配されない。ぼくと同じように。』
僕は顔が真っ青になった。勝てない。だが、彼の言葉を思い出す。“彼を救ってほしい。”あの言葉は本物だ。勝機のあるカードを渡してくれたに違いない。
『どうしたんだい? 気味の手札にキングを倒すカードなどない! 現実から逃げる臆病者が王であるぼくに勝てるわけがない。さぁ、敗北してぼくたちのエサになっちゃえ!』
辺りからけたたましく気味の悪い笑い声が響き渡る。
このカードを信じるしかない。
「何を言っても僕は屈しない。これが僕の正義だ! お前を絶対倒す!」
五回目
相手は宣言通り、キングを出した。渦中の僕は例のカードを出す。笑い声はピタリと止まり、ウサギは急に立ち上がり
『、、! ワイルド・ジョーカー・・・。王は唯一愚者に勝てない。でも、そんなこと、、ジョーカーは無いはず。・・・・・・ハリー、またお前がぼくを邪魔したのか!!』
言葉は、もはや誰に向けて言っているのか分からない。だが、怒りは、こちらに向けられていた。これでは勝ち負けに関係なく殺されてしまう。
逃げなければ!!
椅子から立ち上がり、逃げ道を探す。
無い。無い。ナイ、ナイ、ナイ・・・。
暗い道を逃げまどう。彼はもはや、可愛いキャラクターではなく、化け物だ。ここにいる全て化け物だ。
死にたくない。死にたくない・・・。
ふと光が目に入ってきた。吸い込まれるようにそっちへ向かって行く。
優しい声がこっちだと導いてくれる。誘導はどこまでも続く。黒くなり、原型も分からなくなったスニッキーが暴れながらこちらへと向かってくる。
まっすぐ、まっすぐ、まっすぐ・・・。光が差す方へ。
光が強くなり、上にはよく見る非常口のピクトグラム。出口だ!
やさしい声は最後に
『ありがとう。さぁ、ニック夢から醒める時間だ。帰ろう。』
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・・・
『ここで、最新のニュースをお知らせします。一昨日、〇月〇日に廃墟から複数の白骨死体が発見されました。身元は特定されておりませんが、近くに意識不明の重体の男性が発見され、現在治療中で取り調べを受けられない状態です。男性の身元は身分証から“柊蓮”とされております。警察は白骨死体との関係を調べるため引き続き男性の身辺を調べております。繰り返します・・・』
どうやら僕は廃墟で倒れていたらしい。報道から二カ月ほどでなんとか受け答えができるまでに回復した。僕は僕の好奇心に殺されかけたと思うと、今でも背筋がゾクッとしてしまう。
思わず、笑 顔 に な る ほ ど に ね。
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