night3:いにしえの神殿
外に出た僕は矢印に向かって進んでいった。しばらくは一本道で暗闇を抜けていった。だんだんと道は密林地帯のように背の高い木々や草花が生い茂っている。地面もコケが生えた旧文明の舗装道路のようなでこぼこ感のある道に変化していた。
その道を道なりに進んでいくと、古代文明マヤにある神殿をイメージさせる大きなモニュメントがあった。どうやらここが第二に行くべきアトラクションなんだと戦慄が走る。
看板はすでに入口の元あったであろう柱に寄りかかっている。文字がこすれて読みとりにくいが『Sprits Labyrinth』と書かれているようだ。残念ながら僕は英語はチンプンカンプンだ。文字は文字としてしか認識できないので、意味は知らない。看板を見ながら悩んだふりをしていると物陰の密林から草木をかき分ける音がした。なんだ?動物かなと思うと急に人間が現れた。
生きている、しかも普通の人間。その人はメガネをかけていて弱弱しそうな声で
「あ、あの・・・キャストの人ですか?」
もしかしてこの人は僕らゲストの一人なのか?だとしたら彼はここに来たのはなぜだ?僕と同じくこの神殿の探索なのか、聞いてみるしかない。
「いえ、多分あなたと同じでゲストですよ。所であなたは?」
メガネの人はおどおどしながら少し安心したような声で
「あ、そうなんですか。あ、自分佐倉って言います。」
どうやらこの佐倉と言う人、同じような目をしてきたのかやたらとびくついている。それもそうだろう。僕のように変な目に会っているとすれば間違いなく失神級だろうな。可哀想に。ところで今どれくらい進んだんですかと聞いたら、道に迷ってしまいまだここが一か所目らしい。佐倉さんも僕と出会ってから、少し慣れてきて落ち着きを取り戻してくれた。
僕と同い年か少し下の年齢に見えるけど、彼は話してて分かるほど知性にあふれていた。談笑してると神殿のモニュメントから『ギィィ・・・』と重々しいものが空いた音がしたと思うと分厚い扉が開いており、中の灯りが見えていた。『どうぞ中に』というしゃがれた老人のような声で僕たちを招き入れた。
中に入ると待合はシアターのようになっていた。しばらくすると扉は固く閉ざされ、完全に閉じ込められてしまった。大慌てになっていた二人をよそに、様々なうめき声が響き渡る。天井を見上げると魂のようなものがぐるぐるとうごめいていた。その中にひときわ大きいものが中心にとどまり他のものはさっと消えていった。大きいものは実体となり、南国の島にいそうな邪神の姿形になった。それは二人にここについて説明した。
「ここは精霊たちが集まる聖なる神殿。お前たちはその神殿に迷い込んできた人間だな。ここが知られたならお前たちを帰すわけにはいかない。しかし、一つだけ、我々の三つの試練に耐えられたもの、そのものは精霊を宿せる優秀な存在として活かしておいてやる。そういうことだ。分かったか?」
三つの試練とは何かはよくわからないがここを出るためにはやらなければならないだろう。僕と佐倉さんはその場で許諾して試練へと挑む。
二人で前へ進んでいくとここでは個人での挑戦なのか、一人ずつの身に分かれていた。じゃあがんばってくださいと佐倉さんにエールを送るとすごく礼儀正しくお礼を言ってもう一方の道にいった。
さて最初の試練への扉を開けると道は途切れていて向こう側にも途切れた道に扉が右端に置かれている。あそこがゴールなんだろう。こちら側と向こう側の間は文字通り奈落で何も見えなかった。しばらくすると上から細長い橋が降りてきた。見たところ人の片足分しかない。ここを渡るしかないのか・・・。
意を決して右足を出す。続いて左足。バランス感覚には自信はない。でもやるしかない。右足、左足と下を見ずに何とか三分の一くらいまで到達した。すると向こう側の正面からイタリアにある真実の口のような銅製の人の装飾品が現れた。
なんだと思い、立ち止まり、目を凝らすと口の部分がガバッと開き、ボーボーと燃え盛る炎がこちらまで迫ってくる。最初は勢いはここまで来ないと高をくくっていたが、炎は全く威力が衰えず、むしろこちらを焼き殺すように威力そのままで蛇のように駆け巡る。僕はなりふり構わず橋に四つん這いになって貼りついた。炎は身をかがめた僕の背中の数センチ上を通り過ぎていった。しばらく尺取り虫のように進んでいった。これで大丈夫かと思い、安心して半分まで通り越した。
が、続いて口の中から出てきたのはゴキブリ。黒い集合体がカサカサとうごめき僕のいる橋へ目指してくる。さすがの僕もゴキブリだけは無理だ。しかもこんなに大量にいる。だが、歩くしかない。クチャクチャとゴキブリを踏みながらゴキブリの感触が靴を介して足から伝わってくる。クチャ、クチャ、クチャ・・・。
何とか四つん這いになってご対面しながらここまで来ずにすんだ。壁を伝い、次の部屋への扉へ移動する。狂っているのか、この扉、こちらに対して外開きだ。扉は容赦もなくこちらに向かってくる。足の踏み場などほぼ壁を背にすれば丁度足が入るくらいだと言うのに。
なんとか扉を開けるとそこには佐倉さんもいた。大きな広場に出ていた。すると地面が揺れ始め僕たちの立っている場所の周りが円形に切り取られせりあがっていく。地鳴りと共に上へ上へとあがる。止まったかと思い、周りを見渡す。すると何か自分達は天秤に掛けられているおもりのような構図になっていることに気付いた。目の前の玉座の様な所から入り口で出会った南国の邪神もどきがやってきた。
『われら精霊の神殿にようこそ。我が名はマテ・マテ。この神殿に祀られし試練の精霊。さあ、二人の供物よ。これから私の言う問いに答えてみろ。』
マテ・マテはそう叫ぶと、演出臭く玉座の両端のたいまつから火柱が立った。これが第二の試練なのか・・・。
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