後悔、していますか?

「まひ、ろ……?」


 真尋が、貫かれた。


 遠目でもわかる。


 致命傷だ。


「そん、な……なんで、おまえが……」


 おまえを護るために、俺が的になろうとしていたのに。


 なのに、なんでだ。


 なんでこんなことにならなきゃいけないんだ!


「後悔、していますか?」


「サフさん……」


 ふわりと、サフさんが俺の前に降り立った。


 無防備になった俺を護るためだろうか。


 でも、心配するなら真尋のほうを……いや、あいつはもう、手遅れで――


「そうですね。手遅れです」


 真尋のときにもあった。


 たぶん、心を読むチカラ。


 なら、隠す必要も、我慢する理由もない。


「はは。そんなことわざわざ言いにきたんすか。あんたがさっさと倒してくんないからこんなことになってんのに!」


「その言い分はもっともです」


「もっともだぁ!? ふざけんじゃねぇ! 真尋はなぁ、あんたを信じてたんだよ! あんたを信じて生き残ろうと頑張ってたんだよ! それなのになんだもっともって! これじゃああいつが報われねぇだろうが!」


「そうですね。このままでは報われないでしょう」


「だったらなんかねぇのかよ! あんたなら、魔法ならなんかあんだろ一発逆転的なヤツが!」


「一発逆転ですか。それならまず……後悔していますか?」


「あ゙あ゙?」


「後悔です。もしもあるというのなら、その後悔、晴らしたくはありませんか?」


「ふざけんな! 晴らせるわけねぇだろうが!」


「なぜ?」


「なぜだぁ? あいつがもう殺されちまったからだろうが! あいつはもういねぇ! もう戻ってこねぇんだぞ!?」


「彼はまだ死んでいませんが」


「死ん……え? 死んでない?」


 胸を貫かれてるのに?


 それにたしか、手遅れって……


「はい。手遅れです。もしも彼が、ただの平凡な一般人であったならば」


「……つまり、どういうことだってばよ?」


「つまり彼が『平凡な一般人ではない』ということです。あなたもご存じでしょう?」


「…………知らない話ですね」


「そうですか。そういうスタンスで行くというのであれば構いません。ですが、時間がありません。なので端的に答えてください。あなたは、どうしたいですか?」


 そう、サフさんはまっすぐ問いかけてくる。


 まっすぐ、蒼い瞳で射抜いてくる。


 それに、俺は……


「お、俺は……あいつを、助けたい。あのときバケモノから逃げちまったことを、あいつになんもかんも押しつけちまったことを、全部謝りたい!」


「後悔していますか?」


「ああ!」


「晴らしたいですか?」


「ああ!」


「ニンゲンをやめる覚悟はありますか?」


「ああ! ……え?」


「ニンゲンをやめる覚悟です。一生後悔するというのなら、一度死ねばいいだけですので」


「いやいやいや! え? なにこれ、どういうあれですか!?」


「端的に答えてください」


「端的にって……ああもう! いいよ! どうせこのままなんもしなけりゃあとで後悔するだけだ! あいつを助けられるってんならなんでもしてやろうじゃねぇか!」


「では、了解を得たということで」


 そう言って、サフさんはマントのなかからナイフを取りだし、


「――――え?」


 俺の胸に、突き立てた。

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