第60話 第十三章 アラボシを鎮めろ!(4/5)
シューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
星渡りを乗っ取っていたアラボシは、永久電流と言うエネルギー源を失った。
霊体でできた星渡りの黒い煙は、湯気が蒸発するかのように、雷神石から遠い下側から消え始めるのだった。
と、同時くらいに絆風もやんでいた。
トガッ
雷神石が落ちた! 霊体である星渡りに載ったのである。
星渡りのコアが超伝導の性質を失い、磁石である雷神石を浮かすことができなくなったのだ。
雷神石は僅かしか浮いていなかったため、落ちた衝撃は小さかった。星渡りの本体である霊体は、姫肌と母親を捕らえているので、雷神石を載せるに至ったようだ。
だが、エネルギー源を失った霊体は、雷神石から遠い下側から消え始める。歩くほどの速さで、霊体の消滅前線が上昇していく。
霊体がダルマ落としのように、地面に落ちるよりも速く上昇した。
姫肌を捕らえていた霊体も消えて、姫肌の両足が解放された。
プラン
両手だけでぶら下がった。姫肌は結構きっちりと典高の指を咥えていたので典高の腕が少し伸びた。
典高が焦る!
ここは大鳥居と同じ高さである。
姫肌の両手が解放されたら、姫肌の体を支えるのは口に咥えた指1本だ!
典高が叫ぶ!
「姫肌! しっかり、俺の指を咥えて!」
そんなの無理に決まっている。咥えた程度の力では体重を保持でない。落ちてしまう。焦って口走ったのだ。
でも、姫肌を助けようとする気持ちは高まった。典高は上下逆さのまま雷神石を、がっちりと両足で挟み込んで備える。
霊体は消えていき、姫肌の両手が霊体から同時に解放された!
チュルンッ!
姫肌の口から典高の指が抜けてしまった。
「お、落ちるのです!」
解放された姫肌の手が、典高へと伸びる!
助けられる!
典高も手を伸ばす!
触れ合う2人の指と指!
その典高の指には、姫肌の唾液が残っていた!
ヌメーッ!
唾液で滑った!
スルリッ!
「つ、つかめない!」
無情にも姫肌の手が遠ざかる!
ヒューイーーーーーーッ!
落ちていく姫肌!
姫肌を目で追う典高の視界に母親が入る! 2人ともほぼ同時に落下する!
でも、ジャージよりも、ビキニだけの方が空気抵抗が小さい。
先に姫肌が落ちていく!
「そうだ! フキアゲ! 風のクッションだ!」
「やれるっすよ!」
ビュワンッ! ボワンッ!
先行する姫肌が弾んだ! 風のクッションに弾んで、階段を降りるように、2回ほど軽く跳ねてる。
「まずいっす! そっちは届かないっす!」
フキアゲの叫び声!
後に続く母親が地面に迫る! なのに、気持ちよさそうな寝顔!
「照乃さーーーーんぅっ!」
典高の父親が落下地点に回り込んだ!
ポズンッ!
キャッチした!
父親は高く挙げた腕で母親をキャッチすると、落下の勢いを殺すように、ズイッと腕を地面すれすれまで下げ、落下速度をゼロに戻した。
神職衣装(白衣と差袴)がジャージを抱っこしている。
落としてない。
「よかった!」
典高も胸をなで下ろした。
スック
姫肌も風のクッションでできた階段を、数段跳ねながら降りて地上に立った。
「助かったのです!」
星渡りの本体である霊体はだんだんと消えて、雷神石の下に僅かに残るだけである。
その残った霊体も少しずつ消滅していき、雷神石の支えが揺らいでくる。
グググ
雷神石が落ちかける。
危険! 典高は足に雷神石を挟むのみなのだ。
このままだと雷神石と一緒に落ちてしまう!
体をひねって大鳥居へ手を伸ばす!
トカッ!
横木に手がかかった!
鳥居の横向きの部材の内、下側にある
横木に下がりながら、典高は見た!
雷神石の1メートルくらい下に何かある!
いや、いる! 人がいる!
細身の女性である。
白っぽいレオタードのようなピッチリと貼り付くような服を着た、ショートカットの女の子が仰向けに浮いていた。残念ながら、細身なだけに胸はそれなりの大きさしかない。
そのレオタードの子は、なぜか、羽毛のようにゆっくりと降下している。
その時、霊体が完全に消滅!
ヒュ ヒューーーーンッ!
自由落下を始めた雷神石が、その子に迫る!
「当たる!」
スーーーーーーッ
空気のゼリーに包まれいるかのように、レオタードの子は雷神石に接触しないまま押されて落下!
スルッ
鳥居の半分くらいの高さに来て、レオタードの子がスルッと横に避けるように雷神石の下から抜け出た。
水に沈もうとする石に付着していた泡が、水の抵抗を受けて石から離れるように、レオタードの子は雷神石の下から抜け出ただった。
レオタードの子は、ゆっくりとした降下に戻った。
一方、雷神石は自由落下である。
シューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!
ドバキッ!
雷神石は単独のまま石畳に激突し、めり込むようにして、その一部を破壊した。
【1898文字】
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