第55話 第十二章 超伝導体(5/6)

 バチンッ!

 弾かれた! 雷神石から宝剣が弾かれてしまった!


 弾かれた勢いは、典高の握力を超えた! 宝剣は手から放れ、ゆっくりと回転しながら、宙に円弧を描いて飛んでいく!


 典高の顔が、失態にゆがんだ!


 ジャンッ! ジャジャッ! チャジャジャジャーーーーーーーーンッ!

 ピタッ!


 宝剣は石畳の上に落ちて、クルクルと何回か回ってから止まった。


 フキアゲも気が抜けたのか、典高をストンと地面に下ろした。


「押し込まれてビビッたが、勝手に剣が弾かれやがった! 何を狙ったか知らねーが、どうやら、フキアゲたちの失敗だったようだな! やっぱ、フキアゲはバカだ! バーカ、バーカ、ざあまあ見ろうっ! 俺様の勝ちだぜ! ハハハハッ ハーーーーーーっ!」


 アラボシは拾った勝ちに高笑い。


「悔しいっす!」


 ビューーーーッ! ビューーーーッ! フキアゲはやけになって、風をアラボシに吹きつける。


「風なんて効かねーよ!」

「飛ばしてやるっす! 姫肌だけでも飛ばすっす!」


 姫肌を風で霊体から抜き取ろうとしている。でも、腕を引いても抜けなかったのだ。無理である。


「俺様が放すと思うのかーーーー!」

「やってやるっす!」


 フキアゲとアラボシの2人で、母親と姫肌を挟んで攻防を始める!

 一方、典高は最後の頼みが断たれた! 掌を見つめ、たたずむ。


「小さ過ぎたんだ! 宝剣では小さかった!」

 逆に言うと、雷神石が大き過ぎたのである。感じた懸念が現実となった。




「典高君ぅ、雷神石がなくなってぇ、その地面に大きな穴が開いてましたよぉ。悪戯はいけませんよぉ。それに神社で騒いでもいけませんぅ」

 叱っているようだが、場違いなほどに緊張感のない声!


「と、父さん!」


 神職衣装の父親がやって来た。騒ぎに気付いたのだ。


「神社で騒いではダメですよぉ。雷神石を動かしたりぃ、神社に穴を掘ってもいけませんよぉ。あらあら、まあまあぁ、宝剣まで持ち出したんですかぁ?」

 落ちてる宝剣も見つけたようだが、相変わらず緊張感がない。


「父さん! アラボシ、あ、いや、大きな邪気が出たんだ! そんなことより、危ないよ」


「邪気ですかぁ? 僕には邪気が見えないんですよぉ」

 母親によれば父親は、まるで霊感がない。父親は見えない側の人間なのだ。


「ほら、父さん、見てよ! 母さんと妹石さんが捕まってるんだ! だから、危ないよ!」


 2人が黒い煙のようなアラボシに捕まっているのだが、アラボシが見えない父親には、2人が眠ったまま鳥居の高さに浮いているように見える。


「典高君ぅ、照乃さんが浮いてますよぉ。どうしましょうぅ。助けなきゃぁ。でもぉ、高過ぎますぅ」

 見上げながら、たじろいでいる。


「高いだけじゃないんだ。低い所でも引っ張り出せなかったんだ。邪気に拘束されてるんだよ。高い所は俺の力では霊体を消せないんだ」


「霊体に捕まってるんですねぇ。だからぁ、僕には見えないんですねぇ」

「そうだと思うよ」


「霊体は不安定なんですぅ。いつ消えるか知れないんですぅ。2人を受け止められるようにぃ、真下で待機しましょうぅ」

 やっぱり緊張感がないが、2人の方へ進み出た。


 母親と姫肌は、近い位置に掲げられているので、2人一緒に受け止めることはできそうではある。でも、ヒョロヒョロな父親では、とてもじゃないが危ない。


「父さんじゃ、受け止められないよ! 下敷きになって潰れちゃうよ!」


「それでも、いいじゃないですかぁ、2人の下敷きになって、僕の骨が折れても、照乃さんと姫肌さんが無事なら、いいじゃないですかぁ。喜んで、クッションの役目を果たしますよぉ」


 思うよりカッコいい。


 父親は真下に到着し、体の半分がアラボシの中だ。アラボシは侵入を拒んでないようだ。

 と、いうより、フキアゲとの争いに夢中で、気が回らないようだ。


「フキアゲがバカなんだよ! バーカ!」

「アラボシの方が何100倍もバカっすよ!」

 今のところ、アラボシが父親に手を出す様子はない。



 父親が上を見ながら気のない声を出す。

「ねえぇ、典高君ぅ、心配があるんですけどぉ」

「何が心配なの?」


「少し離れた位置にもう1人ぃ、浮いているんですぅ。


 3人目はぁ、受け取められないですよぉ」


 3人目? 変なことを言い出した。


【1687文字】


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