第49話 第十一章 女狩り(4/5)

 母親の体が星渡りの表面を滑るように、高く上がっていく。


 ビキニ姿を見せ付けている姫肌の隣まで上がって止まった。姫肌のように両手足だけが拘束されて掲げられて、見せしめのようだ。


 でも、ジャージ姿だ。スケベ度はゼロだった。


「くそっ! 俺もやるっきゃないよな!」

 ダダダッ! っと、駆け寄って、ピタッ と、煙に触れるように手を当てる。


「邪気よ! 消えろ!」

 気張るために典高は叫んだ。


 シューーーーッ シュワワーーーーッ

「ぐががががーーーーーーーーーーっ!」

 煙が消えた! 吹き飛んだのではない! 煙があった空間が透明になったのだ。


「やった! 俺にもできた!」


 ただ、母親よりずっと規模が小さい。典高の体と同じ体積くらいの煙が消えた。

「なんてことしやがる!」


 スィー

 アラボシが後ずさり! でも、動きは遅い! アラボシの速度は始めから遅かった。

 逃げ足も遅いようだ。


「逃がすかーーーーっ!」


 ダダッ! ピタッ!

 今度は捕まった女の人の近くに手を置く。


「邪気よ! 消えろ!」

 シュワワーーーーッ

「ぐげげげーーーーーーーーっ!」

 再び、アラボシの煙が一部消えた。


「やった! 外れたわ! ありがと!」

 タタタッ

 捕まっていた下着の女性が1人解放された。近くの商店の中へと逃げていく。


「よし! やれるぞ!」

「こんどはこっちーーーーっ! 助けてーーーーっ! 少年ーーーーっ! 飴ちゃんをあげるわーーーーっ」


 ピタッ

「邪気よ! 消えろ!」


 シュワワッ

「がががーーーーーーーーっ!」


「ごめんね、今は飴ちゃんはないの。あとであのお店に来てね」

 解放された下着女性が指差した。


「そんなのいいですから、逃げてください!」

 その店へ走っていった。


 その後も、典高は煙のアラボシを消しまくる! 女性たちは次々と逃げていった!


「ぐわわわわーーーーーーーーーーっ! くっそーーーーっ 俺様が消されちまう!」


 アラボシの煙が典高に向かって伸びる!

 霊体でも殺気のようなものを持っている。油断しなければ、未熟な典高でも察知できた。


「バカはお前だ! アラボシ! 俺は母さんみたいに油断しないよ!」


 ピタッ

「邪気よ! 消えろ!」


 シュワワーーーーッ

 伸びてきた煙を消してやった!


「ぎゃーーーー! やべーぞ! この人間! いや、兄石典高!」

 アラボシは神社へ戻り始める。



 地面近くの女の人たちは全て解放できた。

「私も助けて! お願いよーーーーーーーーーーっ!」


 上の方から声! 手が届かない高さにも女性たちがいる。助けられない。

「手が届かないんだ! すぐにできないよ」


「ハハハッ! 手が届かねーところは、どうにもなんねーようだな!」

 アラボシは勝機を見出したよう。


「だったら、地面付近だけを消して、母さんみたいにダルマ落しをやってやる!」

 怯んでなんて、いられない! やれることを、やる!


「くそっ! 俺様が逃げるなんて!」

 アラボシは再び神社へ向けて逃げ出した。でも動きは遅い。いくらでも消せるが、地面近くは裾野だから奥行きがある。体積が大きかった。なかなか減らない。ダルマ落としなら時間がかかる!


「人間! アタイが力を貸すっすよ!」

 紐水着のフンドシ少女!


 その紐が控え目な胸のふくらみを痛々しいくらいに潰している! 商店街で自分からヤバいカッコと思ったが、典高は思い出した。


「風神っ!」

 気付くと、すぐ隣にいた!


「呼び方が風神じゃ、分かりにくいっす。フキアゲと呼ぶっす! アタイも典高と呼ぶっすから」


 言っていることには、典高は小さく納得なのだが、紐水着がヤバくてたまらない。でも、力を貸すと言ってくれているのだ。気持ちを強く持って我慢することにした。


「あ、ああ、お、OKだよ!」

「この街にセッティングしていた天罰だけでは足らなかったっす。アタイがわざわざ、バカな人間どもの処置して回ってたっすよ。やっと終わったところっす」


「バカな人間って、何? 誰のこと?」

「見物人っす!」

 アラボシが捕まえた女性を現物する人間が思ったより多かったが、今は見物人なんて1人もいない。

 見ているだけでは天罰は下らない。よって、フキアゲが片付けたのだ。


「体がいたっすから、アタイが典高を高所へ連れて行ってやるっすよ!」

「高所って、どうやるの?」


「こうするっすよ」

 ビューーーーッ! フワァ~

 風圧で典高の体が浮き上がる! 腹ばいのようになって宙に浮いた! 手足と頭で大の字になっている!

 下から大量の風を受けているのだ。スカイダイビングの姿勢だった!


「行くっすよ!」

「ああ、行って!」

 ビュィーーーーーーンッ!


 商店街の通りを俯瞰する。しかし、安定感は少ない。前後左右に微妙に振れる。

 これぞまさしく、人間ドローンだ!


「この浮遊感! 気持ちいいな!」

 そんな典高の隣にフキアゲが飛んでいる。だが、普通に立った格好、ドローン体勢ではなかった。さすが、神である。まあ、それはどうでもいい、典高は女の人たちを助けたかった。


「捕まっている女の子の方へ行って!」

 そう、フキアゲに頼んだ。


「ちょっと待つっす」


【1991文字】


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