第十一章 女狩り
第46話 第十一章 女狩り(1/5)
第十一章 女狩り
姫肌やその先祖が、邪気を封印し続け星渡りは復活した。大鳥居ほど大きな黒い煙の柱みたいな霊体船だった。しかし、アラボシに乗っ取られていた。
アラボシは500年前に星渡りと融合したスケベ雷神であり、今はオチ神である。いや、本人はオチ神でもないと言っていた。
そして、姫肌の先祖が帰りたがっていた故郷のヒルヒ本星に住む女性たちに、恥ずかしい思いをさせようと企んでいたが、姫肌がその星に帰らないと決めたので、アラボシはやけになって、ここで女狩りと言い出したのだ。
止めようとした姫肌は、煙のアラボシに捕らわれてしまい、ビキニのままアラボシの半分くらいの高さに掲げられてしまう。
星渡りはコアのエネルギーで動いており、コアの制御回路を停止させると、伝えたところで、姫肌はアラボシによって眠らされ、その
典高は頭を垂れた姫肌に危機を感じた。
「妹石さん! ……こいつ! アラボシ! 妹石さんに何をした! 殺したのか!」
アラボシに乗っ取られた星渡りの黒い煙が、慌てたようにモサモサと揺れる。
「こここ、殺してなんてねーよ! うるさいから、眠らせただけだぜ!」
煙のくせに、ビックリ汗をかいたかのようだった。典高にはウソに聞こえなかった。
「それなら、少しはいいけど……」
ちょっと安心。
「けど、妹石さんを解放しろ!」
「やだね」
スィー
アラボシが動き出した! 拝殿とは反対方向、大鳥居方向だ。
動き出したら、煙の形が変わった。
裾野を持った急峻な火山のようだったが、煙の体は引きずられるように、後ろ側の裾野はなだらかに伸び、前側はさらに急峻となり壁ほどに引き締まった。
姫肌は前側に捕まっており、ビキニな肉体を進行方向に晒されている。
「おい! アラボシ! 待てよ! どこへ行くんだよ!」
スィー
アラボシのスピードは遅いが、止まったりなんてしない。進みながら返答する。
「言ったろ! 女狩りだよ! ここには女なんていねーからな。商店街へ探しに行くのさ! そして、片っ端から女から服を剥ぎ取って晒してやるんだ! ファーッハッハッハーーーーーー!」
高笑いだ。
「だったら、妹石さんは必要ないだろう! 地面に降ろせ!」
「嫌だねっ! 姫肌は、見せしめと言うか、人質と言うか、……まあ、そんなもんだ! 女狩りをして、恥ずかしがる女の想いが、俺様の腹を満たしたら降ろしてやるよ」
アラボシは悪態をついて進み続けている。
「待てっ! すぐに妹石さんを解放しろ!」
典高はアラボシの行く手に回り込み、両手を広げて立ち塞がった。
スィー
今のアラボシは星渡りであり、煙のような霊体である。普通の煙のように典高を呑み込んだ。
中は真っ暗で見た目通り、ニオイがないけど、ただの煙と変わらない。
スィー
煙が行き過ぎ、典高はすり抜けた。
「助かった」
「このボケ! 人間じゃあ、俺様は止めらんねーよ」
「でも、妹石さんを捕まえただろう!」
「そんなのは、俺様次第だ。人間を捕まえるのも、すり抜けるのも、俺様の自由なんだよ!」
「なら、アタイが吹き飛ばすっす!」
ビューーーーーーッ! ビューーーーーーッ!
風神がエロいコスチュームで飛び出すと、風を操って押し戻そうとするが、霊体のアラボシにはどこ吹く風だ。
「バカの一つ覚えだな! フキアゲ! そんな風、痛くも痒くもねーぜ!」
全然効いていない。もう大鳥居まで来ていた。
アラボシは少々かがんでというか、身を縮めて大鳥居をくぐる。とうとう、境内を出てしまった。神社の外周道路を渡って商店街へと入り込んだ。
風神は風を諦めた。
この商店街は少々寂れているものの、夕方となればそれなりの人通りがあった。
「ねえ、黒い煙よ。火事かしら?」
2人して歩いている主婦の1人が気付いた。
「えっ? 煙? どこ? 見えないわよ」
星渡りは霊体なのだ。見える人と見えない人がいる。クラスでは半々だった。ここでも似た感じだ。
「ほら! 鳥居の方から流れて来ているじゃない。でも変だわ。モクモクと上がっていかないわね」
「煙なんて全然ないわよ。……ハッ! 煙なんかじゃなくて人と岩が、浮いてるじゃない!」
見えてない主婦が空に向かって指を差す!
「人? どこ?」
見えるもう1人は、目を凝らした。
「上よ! 上! 電線くらいの高さに下着姿の……」
と、言いつつ恥ずかしがってしまう。
「巫女さんだわ! 気絶してるじゃない! と、言うことは、あの黒い煙って、大きいけど、邪気? 邪気が大きくなって、巫女さんが負けたってこと? それなら、逃げましょうよ!」
やっと、緊急性に気付いた!
「他にもいるみたいだけど……」
霊体が見えない主婦は、目を凝らしている。
「何人いても、煙が邪気なら、私たちには逃げるしかできないわよ!」
「そ、そうね! 逃げましょう!」
2人の主婦は神社と反対方向、駅の方へ走り出す。でも、気付くのが遅かった。
「女! みーーーーっけっ!」
ニュオーーーーンッ フワンッ!
星渡りの煙が延びて、主婦は2人とも、つかまってしまう。
「きゃーーーーーーっ! け、煙が!」
「煙? 見えないけど、嫌な感じだわ」
捕まった2人が脱ぎだす。
「いや! 何脱いでんのよ! 私!」
「脱ぎたくないのに手が勝手に!」
「邪気だわ! 邪気に取り憑かれたんだわ!」
2人は見る見る下着に!
「いやーっ! 外でなんて格好!」
「うめーーーーーーーーっ! ハズい女の気持ちはうめーなー! よし、次は晒してやるぞ! 恥ずかしがれ!」
星渡りは姫肌のように、2人の両手・両足を煙で取り巻き体を持ち上げた!
「きゃーーーーーーっ! 浮く! 宙に浮くわ! こ、怖い!」
人の背丈より高い位置まで掲げられた。足に地が着かない心細さが恐怖をかきたてた。
「ヤダーーーーッ! 高いじゃない! た、助けてーーーーーーっ!」
アラボシはその声が嬉しくなかった。
「マジーな! 恥ずかしさよりも、恐怖が先に立ってるぞ。まずくなる」
アラボシは2人の位置を下げた。地面から足がわずかに浮くくらいの高さに変えた。でも、下着姿を晒したままだ。
「こらーーーーっ! やめろーーーーっ!」
典高が追いついた!
「お願い! 助けて!」
恥ずかしさに顔を赤らめた女性が2人、下着姿をあらわにしている。妹石さんほどダイナマイトではないが、2人とも熟れた豊満な肉体だ!
夕方の商店街に忽然と現れたようで、典高はエロショックを受ける。
ま、まともに見てられない!
「早く助けて! ここから出して!」
泣きそうな声の主婦。
「は、はい!」
典高は星渡りに潜ってない女性の腕をつかみ、引っ張るがびくともしない。
「ハハハッ! 無駄だ! 無駄! 次、行くぞーーーーっ!」
アラボシの天下だった。
スィー
ゆっくりと、商店街を進みだす。
「きゃーーーーーーーーーっ! 見ないでーーーーーーっ! 体を見ないでーーーーーーっ!」
「うめーーーーーーーーーーっ! 肌をいっぱいに晒されてる女の気持ちは、メッチャ、うめーーーーーーーーーーなーーーーーーーーーーっ!」
とっても、嬉しそうな声。
――秋には小黄金の稲穂が海のように広がり、その上流には美味しい水がこんこんと湧き出る米どころ。その一角に老舗の
そこの酒樽で大切に育てられ、今目覚めたばかりの、氷のように透き通った日本酒を、よ~く冷やしてから、肴なんて後にして、まずは、渇いた口へゆ~っくりと注いでやる。
舌に絡めながら人肌に戻すように味わってから、ググッと小滝のように喉に落とす。
その反動で湧き上がる芳醇な蒸気を、鼻にくぐらせると、切ない刺激が染みわたる――
そんなくらいに、脳髄の奥の奥まで揺さぶるほどに堪能しました、って、くらいに嬉しそうな『うめーなー』の声だった。
20歳未満の人たちには、ごめんなさい。
つまり、大人の高級な嗜好に浸ったような声だったのだ。
もちろん典高も、そんな嬉しい感覚は共有できない。
「こらっ! 放せ! 女の人を解放しろ!」
アラボシの深い心を理解できないまま、その行動を止めるのみだ。
「あー、でも、まだまだ、足りねー! 女ーーーーーっ! 女ーーーーーっ!」
そんな野暮な典高をアラボシは無視である。好き勝手に女性を探し続けるのだった。
【3243文字】
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