第34話 第八章 最後の1体(5/8)
典高の母親は子供体形なのだ。エロ漫画級にヤバい! 想像すら許されない絵面だった。
「妹石さん! 絆創膏なんて、着てるとは言わないよ!」
「あたしは着てると言ってないのです。隠していると言ったのです」
言葉尻をつかまえて言い訳を言っている!
当の母親も黙っていなかった。
「ひどいのだ! ばらしてしまったのだ! 小さい体と言われるのは我慢できるのだ。でも、絆創膏で済んでいるなんて、子供扱いなのだ……」
泣きそうな声を上げてる。
マズイ! 一度泣いてしまうと止めるのが難しい。増してや、今は近づけない。典高は早くなだめないとならなくなった。
「母さんは大人だよ! 絆創膏が分からないくらいに大人だったよ。だから、俺も鼻から出血したんだよ。立派に大人だよ!」
出血を大人のせいにした。実のところ、必ずしもそうではないのだが、そういうことにした。
母親は単純に喜んだ。
母親にとって、子供扱いは感情に直結する感覚だった。その感覚は周りの評価に
「心の底で、典ちゃんはママが大人と思っていたから、出血したのだ。見せ合いっこでもないのに、息子に大人の裸を見せてはいけないのだ。典ちゃんの上着をもらったけど、ちゃんと自分の服を着るのだ。これから、ママは服を取りに行くから、典ちゃんは見てはならないのだ」
機嫌が直ったようだし、服もあるようだ。
典高は母親に合わせる。
「大人の裸だから、見ないよ。それで、服は近くにあるの?」
遠かったら、絆創膏か典高の上着のまま草原や森を歩くことになってしまう。結構ヤバい!
「服は秘密基地の中なのだ!」
すぐ後ろに建つ廃材の建物は、典高と同じ秘密基地という認識のようだ。
肩に典高の上着を載せた母親は立ち上がり、秘密基地の扉を開けようとする。
ガタガタ
母親は焦っていた。近くには服を着た典高と、ビキニ姿の姫肌がいる。なのに、自分だけが裸同然だった。
「開かないのだ!」
ガタガタ! ガタガ タガガガッ!
無理な力が秘密基地に加わった。
ギギギッ バリバリッ!
木材が割れる音! 異常事態?
見るなと言われたが、典高が見ると、秘密基地が見る見る傾いていく!
危険なんてもんじゃない!
「母さん! 危ない!」
典高がダッシュ! 猛ダッシュ!
ズザズザ ズザザッ!
「間に合え!」
典高は母親に飛びつき、抱えて横っ跳び!
バリバリッ ガガガッ バンッ! ガキッ! ドッパーーーーーーンッ!
埃が白い煙のように舞い上がった。
モアッとした埃が晴れると、哀れ! 秘密基地はペッタンコになっていた!
「そうだ! 妹石さん!」
典高はキョロキョロ。
姫肌は立ったまま凍りついていた。よかった、無事だった。安心して母親も確認する。
ポタポタ
抱えられた母親の腹に数滴の液体が垂れた。母親は上着のボタンを留めていない。
「んっ? 血なのだ! 典ちゃんが出血しているのだ! どうしたのだ! ママをかばってケガをしたのか?」
抱っこされながらも、母親は母親だった。息子の身を案じた。恥ずかしさなんて忘れていた!
「母さんがそんな格好してるからだよ! ……これは、鼻血だよ」
「きゃーーーーーーーーーーっ! 絆創膏姿を見られたのだ!」
母親はパッと飛び降りて、後ろを向いた。
しかし、典高にはセーフだった。
上の絆創膏は上着の下、下の絆創膏はお姫様抱っこのために、落ち込んでおり見えなかった。鼻血は真ん中の胸と、かわいいおへそを見たためであった。
「母さんが大人だったから、絆創膏は見えなかったよ。けど、ちゃんとボタンを留めてよ!」
「今やっているのだ!」
その間、典高はポケットティッシュで鼻血の対処をする。
対処していると、自分の右手がヌルヌルしているのに気付いた。母親の足を持ち上げた方の手だった。
典高は今日の太陽を見上げる。暖かいほどの強さで照っていた。
「母さん! もしかして、裸にサンオイルを塗って、肌を焼いていたの? まだ、春なのに?」
振り向かずに聞いた。
「これはワセリンなのだ。草でお肌が傷つかないためなのだ」
ケアしていたようだ。
汗ばんでいるみたいに、妙に肌が照り輝き、エロかったのは、ワセリンだった。
「もう平気なのだ。典ちゃんの上着をきちんと着たのだ。見てもいいのだ」
典高は母親の方向を向いた。
典高の上着を着た母親は小さい。短めのコートを着ているようだ。
「典ちゃんがママの裸で鼻血なのだ! 喜んでいいのか、悲しんでいいのか、難しいところなのだ」
悩む顔を見せる。
典高はどう言っていいか分からない。
姫肌が歩いてきた。
「分かるのです! お母様の体形年齢から、親と見たのか、JS(女子小学生)と見たのか……、色々と複雑なのです。どっちの転んでも危ない出血なのです」
姫肌は評論家っぽいことを言って、母親の隣に並んで立った。
「その通りなのだ! 親の裸で鼻血を出したのか、小学生(JS)の裸で鼻血を出したのか、どっちも危険領域なのだ!」
変なところで意見が合った!
「何! つまらない分析を2人でやってんだよ! 母さんもJSって言われていいの!」
堂々とした母親。
「ママは立派に大人なのだ。でも、見た目の体形年齢が小学生(JS)なのは、仕方ないことなのだ。そこは自分でも認識しているのだ。絆創膏で済んでいるとか、小学生(JS)扱いされなければ、なんとか我慢できるのだ」
強がった眉毛を見せた。
見た目が子供なのは、ある程度許容していて、子供扱いが嫌なようだ。そして、絆創膏で済んでるはJS扱いの範疇に入っているようだ。
まあ、それはいいとして、実のところ、出血の原因は『屋外だから』が、典高には一番だった。でも、それは秘密にしようと思った。
秘密? そうだ、秘密基地!
見ると、無残にも潰れている。危なかったと、典高は改めて胸をなでおろした。
!
そして、気付いた。
「母さん! 秘密基地の中には、他に人はいなかったの?」
【2356文字】
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