第33話 第八章 最後の1体(4/8)
ザッ ザザッ
秘密基地に注意しながら、大きく回り込むようにして、反対側に出た!
「きゃーーーーーーーーーーっ! 覗き魔! 痴漢!」
「えっ? 裸?」
典高たちから数メートル先!
柔肌を晒した女の子が、両手を広げて立っていた!
こんな屋外に全裸だった。
女の子と言っても、小学校の高学年か、もしくは成長の遅い中学生くらいに見えた。
そんな危ない年齢の裸が、手足を広げて立っていたのだ! しかも、汗ばんでいるみたいに、妙に肌が照り輝いている。エロさを演出していた。
ブッ!
鼻から出血! 典高はモロに見てしまったのである。
その女の子は縮こまり、両手で体を隠している。
「きゃーーーーーーーーーーっ! バカッ! 見るでないのだ!」
「……のだ?」
典高は語尾に気付いた。そして、少し冷静を取り戻すと、聞き覚えのある声?
溢れる血にポケットティッシュを当てつつ、その女の子の顔を見る。
「母さん! 裸で、何してるの?」
典高の母親だった。
母親も、びっくりした顔で典高を見た。
「あっ! 典ちゃん! こんな姿をしたママを見て、フルネームを呼ぶでないのだ! 恥ずかしいのだ!」
母親はその小さい体を、もっと縮めた。典高もしゃがんで反対を向く。
でも、典高には名前を言った記憶がない。
「フ、フルネーム? 言ってないよ!」
「裸な、
よくよく考えると、似た発音をした。言った言葉と聞いた言葉を反芻する。でも、「で」と「な」は確実に違う。
「ち、違うって! 『裸な兄石照乃』じゃなくて、『裸で何してるの』って言ったんだ!」
「紛らわしいのだ! 名前を呼ばれた上に、裸、裸と、恥ずかしいのだ!」
真っ赤になって、背の高い草の間に身を隠し、顔だけ草の陰から出して様子をうかがった。典高は向こうを向いている。母親はちょっと安心。余裕が出た。
「典ちゃんも全部脱ぐのだ! そうなれば、見せ合いっこになって、ママは恥ずかしくなくなるのだ!」
「見せ合いっこなんて、しないよ!」
部屋割りの時に出た見せ合いっこである。2人で裸なら恥ずかしくないのだろうか?
そう思って次の言葉が出てこない典高の頭を通り越して、姫肌が口を挟む。
「ビックリなのです! 自室にいる時、親子で裸を見せ合いっこをしていたのです! 危ない親子なのです!」
姫肌が、いかがわしい目を向けている!
「し、してない! してないよ! 見せ合いっこなんて、してないって! 母さんが1人で希望を言ってるだけだよ!」
「そうなのだ。残念ながら、見せ合いっこは幼稚園までだったのだ。典ちゃんが小学校に入ってから、できていないのだ」
寂しそうな声を出してる。
「母さん! それが普通なんだって! あー、でも、しゃーねーな。脱ぐか」
典高は上着を脱ぎだした。ちょっと嬉しい母親。
「典ちゃんも、見せ合いっこをする気になったのだ!」
姫肌もワクワク顔!
「幼稚園以来の壁を突破するのです!」
やけにテンションが高い!
「ぢげーよ!」
典高は脱いだ上着を握り、見ないようにして母親に向けて差し出した。
「母さん、この上着を着てよ! 裸のままなんて、ちゃんとした話もできないだろう?」
典高と母親は数メートルくらい離れている。そのままでは届きそうもない。
「裸のまま取りに行けないのだ! 典ちゃんが全部脱げば、ママも取りに行けるのだ!」
見せ合いっこにこだわっている。
「これ以上、俺は脱がないし、取りに来てよ!」
スサッ
典高が握っていた上着が持ち去られた。
「あたしが渡してくるのです」
それもそうだ。女同士なら問題がない。
「妹石さん、頼む」
ザザザ
姫肌は草原を歩いて母親の所に来た。
「なあんだ! なのです! 兄様、大丈夫なのです! お母様の大事な所はきちんと隠してあるのです! 安心するのです!」
「え? 何か着てたの?」
典高には全裸に見えた。咄嗟のことだったし、慌てていたこともあって、希望する外見に見えたらしい。安心して振り向き、そして、見た。
全裸が草の間に隠れている!
「全部脱いでない典ちゃんは、見てはならないのだ!」
母親も怒っている。典高は、すぐに逆を向き直した。
「ご、ごめん、母さん! 妹石さん! 母さんは、何も着てないじゃん!」
姫肌は典高の上着を母親の肩からかけながら、見た通りを言う。
「胸には大きめの絆創膏が貼ってあるのです。下にはそれよりも、もうちょっと大きい絆創膏が貼ってあるのです。子供っぽい危ない部分を隠しているのです。兄様が見ても安心なのです」
絆創膏だって?
実を言うと、典高も少しおかしいと思っていた。
全裸なら、不自然な光が差し込むはずなのだ。この世界では想像の中でも不自然な光が差し込むのだ。現実の全裸ならなおさらであろう。高校生がモロに見てしまうはずがなかった。
なら、姫肌が言うように安心と思った……?
!
「バカな! 安心な訳ないじゃん!」
危うく姫肌の言葉に乗るところだった!
絆創膏はヤバい!
典高の母親は子供体形なのだ。エロ漫画級にヤバい! 想像すら許されない絵面だった。
「妹石さん! 絆創膏なんて、着てるとは言わないよ!」
「あたしは着てると言ってないのです。隠していると言ったのです」
言葉尻をつかまえて言い訳を言っている!
当の母親も黙っていなかった。
「ひどいのだ! ばらしてしまったのだ!」
【典高の母親は、何を『ばらしてしまった』と言ったのでしょうか?】
【2135文字】
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