第八章 最後の1体
第30話 第八章 最後の1体(1/8)
第八章 最後の1体
ある日、ある邪気を雷神石に封印した。
姫肌は一息入れることなく、普段着のスカートを翻して振り向いた。そして、笑みの載った唇で興味深いことを言い出したのである。
「封印する邪気は、あと1体なのです」
思いもよらなかった。
「邪気の数に上限とかあるの?」
典高は際限なく発生し続けるものと思っていた。
「上限があるのです。巫女は代々邪気を捕獲して、雷神石に封印してきたのです。その雷神石に戻る邪気が、あと1体分になったのです」
「戻るだって! どういうことなの? 雷神石って、邪気の家だったの?」
姫肌はシリアスな空気をまとった。
「邪気の家ではないのです! 実は、あたしの中にいる風神様は、雷神様を復活させようとしているのです」
雷神様と聞いて、典高にはビビビと電気が走った!
「ら、雷神だって! 雷神は俺の中にいるんだぞ!」
典高が雷に撃たれたことに関係していた。
「どういうことなのです! 雷神様は兄様の中で、すでに復活なさっていたのですか?」
姫肌には、教えていなかった。
「すでに、って、ずっと前から雷神は俺の中で眠っているんだ! 俺は小学生の時に雷に撃たれているんだよ。その時から体の中に雷神がいるんだ」
これまで信じた者はいなかった。なので、撃たれてから1ヶ月くらいで誰に言うこともなくなった。
それ以来の思い切った告白であった。姫肌自身に風神がいると、先に聞いていたから、典高は受け入れてもらえると思ったのである。
だが、当の姫肌は典高の言葉とは関係ないみたいに、なぜか、1人で何度かうなずくばかり、典高は孤独の空気を感じたが、まだ静観が足らないと、姫肌の言葉を待った。
「分かったのです!」
姫肌の一声は、典高の返事とは思えなかった。
「何が分かったんだよ!」
姫肌は何かを悟ったような赴き。
「今、風神様からお話を聞いたのです。それによると、風神様と雷神様は土地神様なのです。それぞれの土地で風と雷をつかさどっているのです。だから、日本に雷神様はたくさんいらっしゃるのです」
どうやら、風神から助言があったようだ。典高の言葉は信じてもらえたようだ。
「そうか、俺の中にいる雷神も世田釜の土地神とか言ってたな。妹石さんが言う雷神とは違う雷神なのか。それで、どうして雷神の復活とか言ってるんだ?」
「雷神様は、500年ほど前にバラバラになって、この街のいたる所に浸み込んでしまったのです。少しずつこの世に戻ってくるので、代々の巫女が雷神石に集めていたのです」
典高にはピンと来た。
「雷神石に集めるって、邪気じゃん! 邪気はバラバラになった雷神なのか?」
姫肌はちょっとハズい空気を
「はい、なのです」
邪気は小さいものの、頭に角を2本生やしていた。フンドシ一丁だし、江戸時代の絵とかで見る雷神と風体どことなくが似ている。典高は小さく納得した。
「邪気とは、雷神がバラバラになったオチ神なのか」
姫肌の目の色が変わった!
「兄様はオチ神様を知っているのです!」
「俺の中にいる雷神は、もう神様じゃなくてオチ神と言っていたんだ。だから、知っているんだよ」
「でも、違うのです! 邪気はバラバラになった雷神様なのですが、断じてオチ神ではないのです! と、風神様がおっしゃっているのです」
姫肌は風神の代弁をしているようだ。風神は雷神がオチ神かどうかに、こだわっているみたいだが、典高はあまり気にしていなかった。
「そうなの? 俺は専門家じゃないから、よく分からないよ。バラバラってこともあるし、雷神がオチ神になる以外にも色々とあるんだね」
典高にとって、邪気となった雷神本人のことは他人ごとだった。
「違うのです! と、風神様がおっしゃっているのです。邪気は雷神様のままなのです。雷神様としてバラバラになったのです! と、風神様がおっしゃっているのです」
典高には当然なる疑問が湧く。
「邪気って、あれだけスケベなのに、神様の仲間なの?」
姫肌が着てるビキニの紐を解こうとしたり、女性に取り憑いて服を脱がす光景が典高の脳裏に蘇る。
「ス、スケベはもともとの性格で、始めから、エ、エロ神だったのです。と、風神様が恥ずかしそうに、おっしゃっているのです」
姫肌もスケベとか、エロ神とか言ったので恥ずかしそうにする。
思っていた疑念が解消した気がしたので、典高は話をまとめる。
「すると、つまり、もともとエロ神の雷神が500年くらい前にバラバラになって、この街の色んな所に浸み込んで、少しずつ邪気の姿で復活するので、風神が代々の巫女を使って雷神石に集めさせていたってことか。そして、雷神はオチ神ではないんだな」
間があって、姫肌はうなずいた。
「それでよいのです。と、風神様がおっしゃっているのです。付け加えるなら、あと邪気1体分が封印されれれば、雷神様を復活できるのです。と、いうことなのです!」
希望っぽい光を放った。
「そうか、もうすぐ雷神が復活するのか。でもさ、バラバラになったのは、500年前だろう? それまで、雷神がいなくて、雷を落とせるのか?」
姫肌はまた、うんうんと1人でうなずいている。中にいる風神の言葉を聞いているようだ。
「風神様によると、雷は自然に起きるのです。その制御を雷神様がやっていたのです。人間に当たらないようにしたりとか、逆に天罰を与えたりとか、そんな感じなのです。雷神様が不在になってからは、風神様が風で雲を操り、間接的に雷を制御してたのです。うまくいく時もあれば、うまくいかない時もあったのです。どちらも、空間に
それで、風雷節につながるようだ。典高は小さく納得した。
とは別に、そうなると、風神の方が上位ってことなのか。だから、雷神風神じゃなくて、風神雷神と古来から言うんだな。これにも、典高は小さく納得した。
【2362文字】
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