第3話【肝回】第一章 初登校(3/4)

 みんなが典高を見てる!

 男子も女子も、ニヤニヤとした目を向けているじゃないか!



 下着じゃなかったと安心したために、典高の視界が広がり他のクラスメイトたちが目に入ってきたのだ。ビキニをガン見していたのがバレバレだった。


 なのに、誰も一言も発していない。


 典高は気付いた。スルーって自分だけじゃない。どうやら、教室全体でスルーみたいだ。



 そういうことなら、ビキニは見なかったことにして自己紹介に移ろう。


 典高は教室に入ってきて、いきなりガン見したので、ドアの近くだった。教壇のすぐ隣まで移動した。


「お、お、お、俺の名前は、あ、兄石典高あにしのりたか!」

 典高も先生みたいに上がってきた。スルーしたといっても、ビキニな胸が丸見えなのは変わらない。滑らかに口が動かなかった。


「か、漢字で名前を書くと、……」

 典高は黒板を向いた。

 ビキニから視線が外れれば、気分が楽になると思った。


 1回、深呼吸をしてから、黒板に自分の名前を書き始める。文字をゆっくりと大きく書いていると、案外と心が静まってくる。



 フハァーーーーッと一息ついた。



 気持ちが落ち着いた。これならビキニを見ても大丈夫そうだ。気分を改めて、典高は前を向き直った。




兄様にいさまなのです!」



 向き直った途端に、ビキニ女子が大きな声をあげた!

 へ?

 まごつく典高!



 ガタンッ!

 ビキニ女子が立ち上がった!

 机に隠れていた部分がニョッキリと顔を出す。典高の予想通り!



 ビキニだ!



 薄っすらと日に焼けた素肌! 程よく熟れた腹! 安産型の腰! ムッチリとした太腿! その肉体こそ、セクシーダイナマイト!


 しかしながら、ビキニの色は予想を外していた。白ではなく、赤かったのである。ボトムビキニの色は、朱色のような古風な赤だった。



 そんなことより、マジでビキニだ!

 教室なのに、露出度、高過ぎだよ! どうなってんの? このクラス!



 タタタッ!

「兄様!」

 ビキニ女子が何やら言って、こっちへ駆けてくる!

 想像した浜辺が現実になった! あの胸が、バウンバウンと跳ねている!



 あれ? でも、……。ニイさま? 何を言ってるんだ?



 そんな疑問なんて考えている暇もない!

 こ、こ、こ、こっちへ来る! 彼女の両手が大きく広がった!



 ハッシッ! ムギュ~~~~ッ!

 だ、抱きつかれた!



 まるで、生き別れた家族に再会したような、力強い締め付け!

 それはいいのだが、……。む、胸が、や、柔らかい! 柔らかいのが押し付けられて、……。


 ヤベッ!

 ブッ! タ~~ ラララ~~!

 典高の鼻から出血! 垂れて落ちて、抱きついていたビキニ女子の背中へ!


 ツツツーーーーーーッ

 薄く日に焼けた悩ましい素肌を滑るように、典高の血液が一筋となって流れていく。


 ビキニ女子は、こそばゆい。

「くすぐったいのです! 生暖かい液体が、カタツムリみたいに背中を這って、くすぐったいのです!」


 そう言いながら身を上下に揺する。揺すりながら背中を反らしていく。

 ムニムニ ムニムニ

 大きな胸が縦にこすれながら、少しずつ上へ、ずれ動く!


 そんな感触、初めてだ!


 さらに典高が出血! ビキニ女子の背中に落ちて、赤い筋が2、3本と増えていく。



 ドドッ!

 教室だって沸いている!



「おーーーーっ! すげーーーーーっ!」

 男子が叫ぶ。その後ろから女子の声も聞こえてくる。


「転校生って、純情なんだ……」

「耐性がないだけよ」

 とか、なんとか。でも、典高は転校生ではない。


 先生はスルーって言ってたけど、こんな状況でスルーなんてできなかった。それに、抱きつくなんて、服装とは関係ない。


「は、離れてよ! いきなり抱きつくなんて、おかしいよ」

 典高は両手でビキニ女子の肩をつかみ押し返した。


 ビキニ女子は、スッと、自ら離れた。

 と思ったら、典高の右手をつかみ、そのてのひらを彼女の胸に押し当てた!


 ムニュニュ~~~~



「お、おおーーーーーーっ!」

 再び、クラスメイトたちの声が沸き立ち、教室内に渦を巻く!


 先生は、胸に食い込む指や掌を初めて見たのか、困った顔を見せたと思ったら、何も言えないまま1歩2歩と後ずさり。


 逃げないで何とかしてよ。と、言いたいが、典高も声にできない。掌には、あの不思議に柔らかい感触なのだ。いつも通りにできるはずがない。



 フホッ や、柔らかい!



 でも、指先には硬い部分? よくよく見ると、胸でも本命の場所を外れている。鎖骨に近い。


 それでも、柔らかいもんは柔らかい!

「ダ、ダメだって! こんなことしちゃ!」

「兄様を感じるのです」


 また、その呼び方をした。

「ニイさま? と、とにかく離れてよ」

 典高は、グイッと手を突っ張った。


 ヒョイッ!

 反撃のつもりなのか、ビキニ女子は、典高の右手を両手でつかむ。ニヤついてるぞ。



 パクンッ

「ヒーーーーーーーーーーーーッ!」



 典高の人差し指を、口にくわえてしまった! 指の先っぽが口の中だ!

 唇もすごく柔らかい。典高は、指からとろけてしまいそうだ。



 レリレリ

 な、舐めだした!



 見えない口の中で、典高の指は舐められている! 柔らかく暖かい舌、軟体動物が優しくからむようだ!


【2007文字】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る