第103話 レン、日本を発つ
レンは羽田空港にジェフと他のスタッフと共にいた。
詩音と時間の都合をつけたゆりが見送りに来ていた。
「ゆりさん、昨晩はお世話になりました」
「水臭いこと言わないで下さいな。これからもゆんをよろしくお願いしますね。そして詩音のことも。わたし達はこちらにいて何も出来ないしわからないことばかりなので」
「もちろんです。ちゃんと責任を持って、出来る限りのことをします。今までのこともあるし、やっとお返しできるときが来たと思っているんです」
「そういってくださるとありがたいし、安心できるわ。由奈にもよろしく。今年会えなかったけれど、またすぐ会いましょうって伝えて下さいね」
「もちろんです」
詩音はジェフと話をしていた。
「期待した以上だったよ」
ジェフが言う。
「だったら引き受けてよかった」
「いくらか動画もとっただろう?あれに曲をつけてもらうことになると思う。まだ編集も何も出来ていないから、また連絡するよ」
「はい。待ってます」
「で、専属の話は?」
「まだですよ。これから考えます」
「妹にも相談して欲しいね」
「こだわりますね」
「俺はロスに帰るんだし、レンとも会うだろうから、また彼女に会うこともあると思うよ」
ジェフはニヤッと笑う。
「どうしてゆんにこだわるんですか?」
「可愛いから」
「は???」
「うーん、俺は今30で彼女は17か。13歳差ってありじゃないかな」
「冗談はよして下さい」
「冗談なものか」
「却下します」
「いいよ、距離的には俺のほうが近いからな」
「それ本気で言ってます?すぐそっちに行きますよ?」
「おー怖いね。冗談だよ、冗談。俺にも恋人くらいいるよ」
ジェフはしれっと言う。
「ふーん、彼女が色々と鍵を握ってるようだね」
「だから?」
「ま、これから先も面白そうだってことだ」
ジェフはただニヤニヤ笑うだけだった。
レンは慌ただしい別れの挨拶の中、詩音に聞く。
「ゆんにちゃんと伝えるから」
「はい」
「待っていてくれでいいんだね?」
「はい。手紙も書くつもりだから」
「そろそろ手紙じゃなくてすぐ連絡できるものにしてもいいんじゃないのかい?」
「手紙がいいみたいです。一呼吸おいて考えられるから。じゃないと、感情に任せて必要ないことまで言ってしまう…」
「まだそう思っているんだね」
「臆病だとは思います、でももうゆんを手放したくないんです」
「わかっているよ。わたしも由奈も君の味方だよ」
レンはぽんぽんと詩音の肩を叩く。大丈夫だと。
そして一行はロスに帰っていった。
「これからどうなってしまうのかしらね」
ゆりが詩音に言う。
「なるようになるだけだよ。でもゆんのことだけは細心の注意を払うよ」
「頼んだわよ、詩音」
ゆんに会いたいわ、ゆりはそうつぶやいて都心に戻る電車のホームへ向かう。
詩音はゆりの後を追った。
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