第75話 詩音と修介歩み寄る

土曜日の昼過ぎ、詩音の家のチャイムが鳴った。

「せんぱーい!バスケ行きましょ!出てきて下さいよ〜!」

花梨だった。修介も一緒だった。

ちょっと体がなまってるなとは思っていたので、詩音は出かけることにした。

「よ、よっす」

「ああ。もう大学生なんだな」

「おかげさまで。志望校に入れた」

「んで、花梨と付き合ってるんだって?」

「ん、まぁ、その…」

「煮え切らないわねー。ちゃんと付き合ってるでしょうが」

「お前らそんなんで大丈夫なのか?」

「大きなお世話です。先輩よりは上手くやってますから」

「言うなぁ、お前」


広場に着くと、バスケ仲間がワイワイいいながら取り囲んだ。

「詩音、戻ってきたんだな!」

「寂しかったよ〜!修介がずっと来てくれてたんだよ」

「修介もだいぶマシになったよ」

「だいぶマシって…」

「元気してたのか?」

みんなの質問は止まるところを知らなかった。

「そうか、お前、ずっと通ってたんだ」

詩音は修介に言う。

「うん。ここの人達いい人達でさ。俺楽しくなっちゃって」

「そうか、良かった」

「ほ、ほんとにそう思う?」

「うん、だから俺もここにだけはずっと来てるから」

「そうなんだ。ゆんちゃんっていい子だな」

「また急にどうして」

「花梨と一緒にゆんちゃんに会ったんだ。彼女が行く前に。お兄ちゃんのことよろしくって言われたんだ」

「ゆんが?」

「うん。会った時はこれまで通りに接してやって下さい、あんな性格だけど話してやって下さいって」

「あんな性格…」

「ははは。彼女も言うね」

「そっか」

「俺は花梨とゆんちゃんの話を聞いていただけなんだけど、ゆんちゃんお前のこと物凄く心配してたぞ。それだけは俺にも良くわかった。何があってどうなってるのか俺にはよくわかんないけど、仲直りしろよ、な」

「うん。そうしたいとは思ってるんだけど、難しい」

「そっか。お、俺は詩音がこうやって話してくれて嬉しい」

「え?」

「ゆんちゃんが、俺は唯一人お兄ちゃんのこと気にしてくれた人だって。だからお兄ちゃんも話しかけたりしてたんだと思うって言ったんだ。最初はお前が一体何者なんだって思ってずっと見てたんだけどさ、色々知った今は、お前にはかなわねーし、それはよくよくわかったし、べ、別にめちゃ親友になろうとかじゃないぞ、でも友達になれたらいいなとは思ってるんだ、うん」

「もう友達だろ?」

「え?そ、そうなのか?」

「俺、お前以外に話すやつってゆんをのけたら花梨くらいだもん」

「その…花梨は…」

「心配するなって。あれは戦友だ。っていうか同士っていうか。そういう友達だ。俺たち兄妹のこと一番よく知っててずっと守ってくれてるんだ」

「そうなのか。まぁ、心強いよな、あいつは」

「だな」

二人は吹き出した。

「あはははは、こんな話出来るなんてな」

「詩音、笑えよな、お前、笑った顔凄くいいよ」

二人はひとしきり笑い続けていた。

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