第48話 やってみたいこと
相変わらず毎日花梨はゆんの家に通っていた。
午前中にやって来て、ゆんと宿題をこなし、後は色んな所に出かけてみたり、ただだべり続けてみたりしてゆんの面倒を見ていた。時折ゆんがぼーっとしているのは知っているけど、あえて何も言わないことに決めていた。
「ねぇ、ゆん、何かやってみたいことないの?」
「言われてもすぐには思いつかないよ」
「そっか。そうだよね。これっていう趣味とかなかなか見つけられないよね」
「みんなどうやって趣味って見つけられるんだろう」
「何かのきっかけでしょ、人それぞれだけど、得意なこととか、じゃぁそこを伸ばしてみようとか、全く未知の世界だけど面白そうだなとか」
「んー、何かあるかなぁ」
「そういえば、ゆん、どこか出かけた時やたら写真撮ってるじゃない?スマホでさ、ほら、角度がどうのとか、これはもう少しこっちに入れたほうがいいかなとか、もう少後ろに下がったほうがいいかなとか」
「あー。確かに」
「そう言えば、イケメンさんのインスタもあれあんたが撮ったんでしょ?」
「そうだよ」
「あれ、どうやって撮ってたの?」
「んー、お兄ちゃんがこれ使えって一眼レフを出してきたの。それでね、よくわかんないからオートで撮ってた」
「まぢか。家の中暗いから、いい写真撮りたかったらスマホじゃないんだし、オートじゃ厳しいと思うよ」
「花梨詳しいの?」
「ほら、猫写真とかどうやって撮ってるのかなって思ってちょっと説明読んでみたりしたことがあるくらいだよ」
「そうなんだ。お兄ちゃんにもね、もう少し勉強して元をもっとマシな出来にしろって言われたっけ」
「ね、ね、写真やってみたらどう?全くわかってないんだったら、もう少し知ってみてもいいだろうし。今度から出かける時カメラ持っていこうよ?」
「あーでもお兄ちゃんのカメラなんだ」
「そこは!ちゃんと許可もらってさ」
「え…」
「LINE一本送るだけでしょ?」
「それはそうだけど…」
「余計なこと一切書かなくていいよ。カメラ使いたいの一言でいいんじゃない?」
「でも…」
「もう何日かたってるんだし、別にLINEのやりとりくらい普通でしょ?」
「気がすすまないよ…」
「そんなこと言ってたら、また他のこと探さなくちゃならないじゃないの」
「うーん…」
「やってみたくはないの?」
「興味がないっていったらウソになる」
「でしょ?じゃ、決まりね。先輩に許可取りなさい」
「う…うん…でも…今すぐにじゃなくていい?」
「別にいいわよ。わたしがやる趣味じゃないから。とは言ってもわたしも気になるから一緒にカメラの勉強するよ!」
「ほんと?」
「ほんとほんと。高級なカメラ買うとかむりだから、実践はあんたと共有させていただいちゃうけど。へへ」
「花梨、本当にいいの?付き合ってくれるの?」
「もちろん!知ってて損することもないでしょ。将来子供の写真とか撮るだろうし」
「将来って…もうそんなこと考えてるの?」
「ゆんが何想像してるのか知らないけど、わたし達だって小さい頃の写真たくさんお父さんやお母さんが撮って残してくれてるでしょ?」
「そ、そうだよね、そうだった。あはは」
「あ、そうだ、ゆんや先輩が小さい頃の写真ってないの?」
「あるよー」
「見せて、見せて?今まで見たことないよね、わたし?」
「そういえばそうだね。待ってて、アルバム持ってくる」
ゆんはパタパタとアルバムを取りに走っていった。
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