第35話 花梨的考察

花梨の胸を借りてひとしきり泣くとゆんは顔を上げた。


「花梨ありがとうね」

「ゆん、大丈夫?」

「大丈夫だよ。聞いてもらってスッキリした」

「どうするつもり?」

「どうもこうも今までのままだよ」

「ゆんの気持ちは?」

「なかったことにする。可愛い妹に徹する」

「ゆん…」

「出来るかな…」

「わたしが付いてる」

「ん、ありがとう。は、花梨に聞いてもらったから今随分楽に感じてる。でもごめんね、こんなことを…」

「何言ってるの。何年野々村兄妹ウォッチャーしてると思ってんのよ。わたしはね、ありとあらゆるパターンを想定してるわよ。ふふん」

「花梨ったら!」

「ほら、笑った」

「花梨、教室に戻って?後すぐわたしも行くから。」

「うん。じゃ先に行くね。お昼休み終わるまでにちゃんと教室に戻るんだよ!いい?」

「ん、わかってる」


残ったゆんはひとしきり空を眺めていた。


どうすればいい?わたし本当は知ってるのに。それでも家族で居たいから全てに蓋をして、今まで通りに暮らすのがいい。そうしていれば、少なくともお兄ちゃんと縁が切れてしまうことはないよね。それがいいよね。


先に教室に戻った花梨は色々と考えてみる。


どう考えても先輩の行動が納得いかない。あれだけゆんに対して「男は黙って行動で示す」パターンを完璧にこなしてる慎重な先輩のあの映画チョイス。ベタすぎておかしい。いくら仲の良い兄妹でもあれを一緒に見ようなんてありえないわ。ていうか、あの映画はゆん的には絶対にヤバい。先輩観てないんだろうなー。タイトルだけで選んだとしか。あれわたしゆんと観に行ったんだよね。先輩のこと意識し始めてたゆんにはキツ過ぎただろうな。わたしの解釈的には結局お互いに諦める映画だもん。それで余計にショック受けたんじゃないかな。あ、そっか。意識してそうなゆんを察知してワザと持ち出したもありうる?いやいやいや。それはないな。先輩はゆんのことを多分愛してるから。あれは妹のまま側に置いておきたいではないんじゃないかとずっと薄っすら思ってるんだよね。と言うことは?


一つだけ、ありえないだろうけど考えられるのは、二人は血が繋がっていない。先輩はそれを知ってる?可能性はゼロではないかもしれない?そうであれば先輩の全ての行動に納得出来るように思うんだけど、二人の問題、それもそんな大それた仮定を先輩にわたしが問いただすなんて出来ないわ。もし、万が一そうだとしても、これは野々村家の問題よ。


とそこまで考えて花梨はため息をついた。


面倒くさい兄妹だなっっったく!!!!!


でも二人とも大好きだから、側でしっかり見てくよ。











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