第24話 真意はどこに?
「その意味じゃなくて好きですよね?」
さらりと花梨は口にした。さぁ、どう来る?
「仮にもしそうだとしたら?」
そうきたか。まー無難な返答だね。
「うーん、行き過ぎなければいいんじゃないんですか?ほらほら、わたし達まだ高校生ですし。詩音先輩ゆんのことしか今まで見てないから、他に素敵な女の子いるの知らないだけかもしれないし。わたしみたいな」
ぱしっ。頭をはたかれた。あー先輩が肝心なところを簡単に吐くわけないか。
『あははははは』
二人は今の会話を笑い飛ばして終わらせた。
しばらくしてゆんがDVDと漫画を抱えて戻ってきた。ゆんはできるだけ平静をとりつくろうとしていた。
「はい、これ持って帰っていいよ、花梨」
「わーい!ありがとう!しばらく借りててもいい?」
「もちろん。返すのいつでもいいよ。わたしもう見ちゃったから」
「いえーい!じゃ、わたしそろそろ帰るね」
「うん、今日はありがとう」
「こちらこそー!美味しいごはんにケーキにビッグすぎるサプライズ。てんこ盛りすぎたわ。ふふふふ。楽しかった!」
「あ、じゃ、お兄ちゃん、バス停まで花梨送っていこうよ。もう真っ暗だし」
玄関に立つ3人。
「先輩、それ怪し過ぎ」
まだ風呂に入ってない詩音はキャップにマスクにサングラスと怪しさ満点の出で立ちで立っていた。
「逆に目立ちますよそれ」
「少しの間だからかまわん」
「わたしも我慢しまーす」
「どういう意味だよ」
お兄ちゃんと花梨、息ぴったりだな。さっきの会話どうなったんだろう…
バス停までの道すがら、詩音と花梨は漫才のようなやりとりを続けていた。お兄ちゃんがそんなふうに誰かと話すのこれまで見たことなかった。花梨とは気が合うんだね。
バスがきて花梨が乗り込む。
「じゃまた月曜日ねー!ばいばーい!」
「花梨また来てね」
「土曜日以外におじゃまするわ。おじゃま虫したくないもんね」
「じゃあな」
花梨を見送って家に向かってあるき出す。ほんの数分なのだが、なんとなく気不味く感じるゆん。
「ゆん、どした?」
「ん…別に」
「顔暗いぞ?」
「うん…」
「おまえさ、花梨と居間で話してたの聞いたよな?」
「えっ?」
「お前、居間に入りかけてやめて戻っていっただろ」
「見てたんだ…」
「花梨がさ、もしそうだとしても行き過ぎなきゃいいんじゃないってさ。まだ高校生だし、ゆん以外に素敵な子がいるの知らないだけかもだしってさ」
「ゆん以外に素敵な子…か…考えたことなかった」
「ほらほら、落ち込むなって。俺はゆんが居ればいいんだから」
「ほんとに?」
「いつも言ってるだろ?なんだ信用してなかったのか」
「そ、そういうわけじゃないけど…」
「大丈夫だよ、俺はいつもゆんのそばにいるから」
「うん」
「帰ったら風呂はいるから、写真のデータ移しとけよな」
「あ、そうだその作業があった!」
「ほらほら、早く帰ろう」
不安要素は自ら先に刈り取るのが吉。
それもまた詩音のやり方であった。
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