第20話 難攻不落な山奈花梨 その1
高上修介は考えた。
あいつら兄妹に一番近いのは山奈花梨だ。兄妹に直接近づいても得られるものはなさそうだ。それなら、近いところから攻めてみるしかないな。しかし、あいつら行きも帰りもいつも一緒だ。山奈花梨と野々村ゆんは同じクラスで昼休みも一緒だし。どこかで山奈花梨とゆっくり話出来るようにしなくちゃならないんだが…そうか、学校が休みの日なら。うん、その手があったか。
クラスが同じ山奈花梨の姉、莉奈はというと窓際の席に座って本を読んでいた。妹はああなのに、姉はおしとやかな感じだよな。
「莉奈さん、ちょっといいかな」
「何?珍しいわね。こないだ急にバス降りちゃったからびっくりしたよ」
「あ、ちょっとね、野暮用思い出して」
「ふぅん。そうだったの。花梨は凄く怒ってたから何だったんだろうって思ってたんだけど」
「たいしたことじゃないよ。反対方向に向かわなくちゃいけなかったから思い出したあそこで降りたんだ」
「そっか。で今日は何の用なの?」
「あー、あのさ、花梨ちゃん気に入っちゃってさ」
「へ?????」
ガタン!とびっくりしすぎて立ち上がった莉奈の椅子が後ろに倒れる。クラス中が二人に注目する。
「あ…あああ?」
「あ、みんななんでもないから気にしないで」
そう修介はクラスのみなに向かっていう。
「莉奈さん、そんなに驚かなくても」
「い…いや、その…びっくりしすぎて」
「とにかく、だ。それで一度ゆっくり話がしたいと思ってるんだよね」
「は…はぁ…」
「この手紙花梨ちゃんに渡してもらえないかな」
「え???」
「渡してくれるだけでいいよ」
「う…うん…」
「じゃ頼んだよ」
しめしめ。とりあえず一歩前進だ。
しかしこのとき修介は花梨のことを全くわかっていなかったのである。
「花梨?ちょっといい?」
ご飯を食べ終わって部屋に戻ってパソコンでアニメを見てたらお姉ちゃんがやって来た。
「うん、いいよー。入って」
お姉ちゃんは部屋に入るとわたしのベッドに腰掛けてモジモジしてる。
「何、お姉ちゃん?なにそんなにソワソワしてるの?」
「あ、あのね、これ…」
お姉ちゃんがなにやら封筒を差し出す。
「何なのこれ?」
「あの…ね…高上くんがこれを花梨に渡してほしいって」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ????果たし状か」
「ち、違うと思う。高上くんが、花梨のこと気に入ったからって」
「はぁぁぁぁぁぁぁ?アイツバカなの?」
「高上くん、悪い人じゃないってば」
「そうは思わないなー。あいつバカよ」
「と、とにかく…渡したからね、よろしくね」
お姉ちゃんはそそくさと部屋を出ていった。
ははぁん。あのバカなにを企んでんだ。
山奈花梨様
先日は急にバスを降りてしまって驚いていたようだね。そのことについて話がしたいと思って。それに君のユニークなところが気に入ったんだ。良かったら、土曜日の午後、会って話せないかな。来るか来ないかは君に任せるよ。
土曜日の午後2時に学校の校門の前で待ってるよ。
来てくれることを願う。
高上修介
速攻スマホで写真を撮り、詩音にLINEする。バカだねー。これは詩音先輩の笑いのネタとしては最高ね。こいつ、わたしが詩音先輩とLINEで繋がってるの知らないよね。こないだあれからどうなったのか聞いてないけど、詩音先輩がお昼休みのバスケに駆り出されちゃったくらいだから何か起こったんだろうな。でも先輩とゆんは丸く収まったみたいだからそこは良し。ったく、高校3年生でしょ?高上修介。幼稚だわ。魂胆みえみえ。わたしから何か引き出したいんだよね。ゆんのこと?それとも先輩のこと?どっちにしろこんなやつに協力する気はサラサラないけど、面白いことになりそうだから、ま、行ってはみるか。もうおかしくてたまらないよ、お腹よじれる。あははははははは。
花梨は涙目で笑い転げていた。
土曜日、午後2時前。高上修介は学校の校門のまえでイライラしながら立っていた。来る、山奈花梨は来るはずだ。そう思いながらもイライラが止まらない。とにかく、山奈花梨から何かを引き出さないと。きっと何か知っているはずだ。
5分過ぎた…来ない。10分が過ぎようとしたとき、目の前に山奈花梨が現れた。
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