第15話 波乱の帰り道

速報!

ゆん姫が職員室前で叫んでた!!!

兄の名前をフルネームでだぞ?

一体なにがあったんだ?


ぜぇぜぇ言いながらクラスに戻るとみんながささーっとわたしを避けていく。


「お帰りゆん。どうだった?」

こういう時平然と構えてる花梨は余裕だ。

「別に何でもなかったよ。ちゃんと授業聞きなさいって」

「嘘つけ。ダサ兄貴の名前フルネームで絶叫したって速攻回って来たわよ」

「あ…」

しまった、我を忘れてバカなことしちゃったのを思い出して顔が真っ赤になる。

「ほーらほーら、何があったのかなぁ、ゆんちゃん?」

「別に何もないよ」

「あーあ。話したくないんだ。あーそうなんだ。ふーん。ま、いいけどね。名物兄妹の危機だもんねー」

「危機って何よ、危機って」

「その一。このまま絶交状態が続く。その二。やっぱりこの状態が持続。その三。二人は別れる」

「コラ花梨!別れるってお兄ちゃんだよ、家族だよ!何なのそれ!」

「まぁまぁ。からかってみただけだよ。ほんと兄貴居ないとこんなにゆん姫情緒不安定で大声で叫ぶクエストまでこなしちゃって、あーヨシヨシ」

花梨はわたしの頭をなでなでする。

「ねぇ、ホントに大丈夫なの?」

急に花梨は真面目になってぎゅっと手を握りながら言う。

「言いたくない、話せないならいいよ。でも無理しちゃだめだよ。いい?」


そして残りの授業を半分くらいぼーっとしたままやり過ごして帰宅部の帰る時間になった。

「お姉ちゃん教室まで来てくれるから」

「うん、ありがとう」

「いやー面白い一日だったわ。ダサ兄貴居ないだけでこんなにあれこれ発生するとはね。あははは」

「笑いごとじゃないよ、思い出しただけでも恥ずかしい」

「おーい、花梨、帰ろう!」

「お姉ちゃん!」

花梨の姉の莉奈も加わって3人で教室を出た。

「ゆんちゃん詩音くんどうしたの?」

「なんか体調悪そうだった」

「お姉ちゃん、ちっちっ甘いね。その原因はあるはずよ」

「それは聞き捨てならないな。僕も一緒に帰り道のお供させてもらっていい?」

「はぁぁぁ????あんた誰よ!」

「僕?詩音と莉奈さんのクラスメート。高上修介。詩音のことは中学の頃から知ってるよ」

「ゆん、行こ行こ、こんなちゃらそうなのまともに相手しちゃダメ」

「花梨ったら!高上くん悪い人じゃないわよ」

「ダメダメ、今日はわたしがゆんのボディーガードなんだから、よく知らない男とは話させないもん。べーっ!」

「ゆんちゃん、僕のことお兄さんから聞いたことない?」

「んー」

「んー?」

「ありません」

「あっそ」

ゆんを引っ張って歩く花梨。その後ろから呑気そうに鼻歌交じりでついて来る修介。コイツ何者?花梨の第六感は何かをキャッチしていた。

花梨は小声でゆんに告げる。

「ゆん、よく聞いて。わたしの感当たるの知ってるよね。高上ってなんかやな予感するの。相手にしちゃダメだよ。アイツのペースに乗せられちゃダメ!絶対に!」

「うん、頭の隅に置いとくその言葉」

「花梨ちゃん、なにゆんちゃんにふきこんでんの?」

「ね、やばそうでしょ」

「そうみたいね」


バス停に着くとザワザワしてた。

「え、なんで高上君がいっしょなわけ?」

「ありえなーい!」

「あの子何なの?兄貴がダサいからって兄貴が居ない時は高上くん引き連れるわけ?」

「3年の中でも特に人気者だよね、 高上君」


「あーそーなんですか。こんなチャラいお方が人気者なんですか。あー知りませんでしたっとぉ!わたしら2年だしぃ」

花梨がこれ見よがしに大きめの声で言う。

「花梨ちゃんひどいなぁ」

修介は苦笑いするしかない。

「莉奈さん、花梨ちゃんっていつもああなの?」

「だから今朝言った通りでしょ?」

「みたいだね」

難敵現る、か。まぁどうにでもなるだろう。



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