第14話 妹も考える

授業中だけど、先生の声が全く耳に入らない。プールの後耳が詰まっちゃった時みたいに嫌な感じが続いてる。


お兄ちゃんが居ないだけでこんなに違うと思わなかった。噂を聞きつけて教室の外は見物にやってきた人でいっぱいになってたし。意味わからないよ。お兄ちゃが居ないってだけなのに。


昨晩のお母さんの言葉もまだよく飲み込めてないし、お兄ちゃんのよく考えろって言ったこともまだ整理出来てない。


じゃじっくり考えてみよう。

まず、お兄ちゃんはお前だけの特権だって言った。それはカッコいいお兄ちゃんの姿をわたしだけが見てもいいってことだよね。そこがよくわからないんだけど、お母さんはこう話してくれた。


「あの頃もね、当然お兄ちゃんは可愛かったわけ。ふふふ。そうしたらね、たくさん女の子が寄ってきたの。仕方ないわよね。そうしたら、ゆんの世話が出来ないって言ってすごく荒れちゃったの。それでね、今みたいな姿になっちゃったの。おかしいでしょ?覚えてない?」


と言うことは、お兄ちゃんはわたしのためにあんな風貌をわざとしてるってこと?だよね。わたし的にはやっぱりもったいないと思うんだけど、さらにお兄ちゃんは面倒なことに関わるのが嫌だとも常に言ってる。さらにさらに見た目で寄って来られるのも嫌なんだよね?見た目プラスで仕事入るのも嫌なんだよね?


頑固者め。


お兄ちゃんにはお兄ちゃんの考えがあるんだよね。そしてそれをわたしが分かってないってこと…なのかな。あんなに怒ると思わなかったし。まさか学校休んじゃうほどのことだとも思わなかったのに。


「…村、野々村さん?」

「ちょっとちょっと、ゆん、先生のご指名だよ」

「あ、は、はい!」

「何ぼーっとしてるの?さっきのところを読んでみて」

「あ、えーっと、そ…その…」

「聞いてなかったの?後で職員室に来なさい」

「はい…」

「ちょっとゆん、何やってんのよ」

「考えることがあって…」

「ダサ兄貴のこと?後で聞いてあげるわよ」

「う、うん…あーじゃなくて進路とか」

「うそつけ」

「そこの二人!私語は慎む!」


先生に叱られた後も頭の中はお兄ちゃんのことでいっぱいだった。


「ちょっと職員室行ってしぼられてくるわ」

「どんまい。あんたがヘマするなんて珍しいから報告お待ちしております」

「花梨ったらぁ!」


「失礼します」

職員室に入って英語の北村先生の机に向かう。

「来たわね。野々村さん、あなたがぼうっとしてるなんて珍しいわよね。お兄さんのこと?」

「え、どうして?」

「あなたたち有名だもの。今日お兄さん欠席よね?初めてじゃない?」

「あ、はい、そうです」

「お兄さんの英語力素晴らしいわよね」

「母がしごいてますから」

「あぁ、お母様英語教師をされてるんでしたっけ」

「企業の英語研修や仕事が終わってからの方のクラスなどを受け持っています」

「それでお兄さん、大学は海外にしようとしてるのね」

「え、はい?ええええ?そうなんですか?」

「あら、知らなかったの?」

「何も聞いてません…」

「あら、家族のみなさん知ってると思ってたわ。前々からそのことについて時々聞かれてたのよ、詩音君に」

「そうなんですか」

「彼ならどこでも大丈夫よ。まだハッキリとは決めていないようだけど、もうそろそろ決めなくちゃ間に合わなくなるわ。また相談に来るように伝えてちょうだい」

「はい…」

「それだけよ。授業中はぼーっとせずにちゃんと聞いてね」

「はい、失礼します」


職員室を出た途端、わたしは思いっきり叫んだ!!!


「野々村詩音!!!!!!!!!!」

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