第13話 兄考える

「それじゃ、お母さん出かけるから今日はゆっくり休むのよ!パソコン禁止よ!ゆんが帰ってきたらちゃんと話ししなさいよ」

「母さん、ゆん何か言ってた?」

「ふふん、ゆんに聞きなさい」

「ちぇっ」


親父も母さんも出かけて一人になった。いつもゆんがいたから全くの一人きりっていつ以来だろう。


何もする気にもなれず、居間でぼーっとコーヒーをすする。ふと目に付いたものがあった。


「ゆんがよく観てるドラマ?昨晩ゆんが慌てて止めてたドラマ?『シンデレラはオンライン中』?なんだコレ」


やることもなかったから観てみることにした。大学生で起業した完璧なエリート男子ととオンラインゲームを通して知り合った -実際には彼女がネカフェでゲームやってるのを見かけてその指さばきと美貌に一目惚れしたのだが- 同じ大学の情報処理学部の大学美女コン2位の秀才女子とのブレない恋愛ものだ。


この主人公男子がとにかくブレない。ドラマとは言えすげーな。とにかく彼女を信じてるから、どうしようもないハプニング以外は彼女に惨めな思いをさせることがない。潔いわ。ここまでだと清々しくも思えるわ。実際にはありえないんだけど、分かってるけど今の俺には堪える。


このドラマの主人公はルックスも完璧だ。当然大学でも崇められてるほどの存在だ。ここまで完璧なら、頭脳の方もだが、見た目は損にはならない?いやいやコレはドラマだ。現実じゃないぞ。


俺がダサい見た目をずっと通してるのは、小学校の頃見た目で女の子が寄ってきて囲まれてちゃって、それを遠巻きにゆんが寂しそうに見てたからだ。見た目が良くなければ誰も寄ってこないだろうって考えた俺は以来ずっとダサいと言われる見た目でやり過ごして来た。なのに、ここに来てカッコいいお兄ちゃんと歩きたいだのなんだのって、何もわかってないゆんのバカヤロウ。そんなにダサいのが嫌なのか?小学校の時みたいになってもいいのか?ドラマの中でだってウザい女子に煩わされてるじゃん、と言ってもこのドラマではそういう女子もこの主人公は一刀両断ですげーんだけどな。はぁ…俺にそんなことが出来るのかな。ドラマと現実は違うぞ、絶対。


俺もこのドラマの主人公みたいにゆんを守りたいよ。でもずっとダサい格好で来たから今まで波風立たずに過ごせて来たって思うんだ。とにかくゆん以外に関わるのが面倒。音楽の友達はほぼネット上のやりとりだし、年上が多いし、プライベートにはあまり突っ込んでこないからいいんだけどな。学校の連中ですら時々からかいに来るのが本当に面倒なんだ。見た目良くっても一緒だろ?どっちにしろ煩わされるんだ。なら本当の俺はゆんだけに見せてればいい。そうだ、それでいい。


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