第11話 冷戦勃発

部屋に戻ってごろんと2段ベッドの下に寝転がると何やら目に入ってきた。

え、うそ???

目の前に、えっと要するにお兄ちゃんが寝る2段ベッドの上の段の裏にお兄ちゃんがさっき没収したはずのコルクボードが取り付けてあるのだ。

うわーん、力作戻ってきたよぉぉぉぉ!

知らない間にお兄ちゃんはコルクボードを取り付けたらしかった。あーもう、こにくらしい!素直じゃなーい!でも嬉しい!!!イケてるお兄ちゃんを眺めながら眠れるじゃん!いい夢みれるじゃん!きゃーーー!!!良き良き!

写真を眺めながら、その写真を撮った日のことを思い出す。あの日は雨だったな、あの日はおにいちゃんめっちゃ機嫌悪かったな、あの日はすごく優しかったな。あの日はたくさん音楽聞いていろんな話もしたな。わたし、全部覚えてるよ。


写真を眺めながらいろいろ思い出してたら、食事が終わったんだろう、お兄ちゃんが部屋に入ってきた。


「お兄ちゃん!!!」

「なんだまだ起きてたのか」

「これ…」

「お前だけの特権って言っただろ?」

「てっきり捨てちゃったんだと思ってた」

「んなことするかよ」

「…ありがとう、嬉しい」

「ふふん、まぁな。俺の作品でもあるわけだし」

「その割に広めたくないよね、お兄ちゃん」

「だから。言っただろ?お前だけの特権だって」

「それ!意味わかんないんだけど!」

「は?なんでだよ!」

「ゆん的にはですね、やっぱりイケメンはみんなで共有すべきなのであります!!!」

「は?アホか」

「アホじゃないもーん!こんなにこんなにお兄ちゃんかっこいいしイケまくってるのに、どうして隠そうとするの?」

「意味ないから」

「どうしてそう思うの?」

「ほんとに見てくれなんてどうでもいいんだよ」

「良くなーい!」

「いろいろ都合悪いんだよ。言っただろ?見てくれだけでよってくるような奴らと関わりたくないって」

「でもでも、お兄ちゃん!みんな言うんだよ、ゆんのお兄ちゃんダサいって」

「別にいいだろ」

「良くない!ゆんはめちゃかっこいいお兄ちゃんと歩きたいんだもん!」

「は…お前がそこまでバカだったとはな」

「は???」

「話になんねーよ。おやすみ」

「ちょ!!!!」

それ以降何を言ってもお兄ちゃんは答えなかった。たまりかねてわたしは部屋を飛び出してお母さんのところに向かった。


「お母さん…いい?」

お父さんはまだ仕事の書類を居間で見てたから、お母さんだけが寝室にいるなと思って部屋を訪ねた。


「ゆんなの?いらっしゃい」


わたしはおずおずと部屋に入って、抱えてきた毛布と一緒にお母さんの横に潜り込んだ。


「どうしたの?ゆん?」

「お兄ちゃんとケンカした」

「何が原因なの?」

「ねぇ、お母さん、お兄ちゃんって本当はめちゃくちゃカッコいいじゃない?」

「ふふん、わたしの息子だからね」

「えー。言うなぁ。だからね、あのダッサイキノコヘアやめて、ちょっと目が見えるようにして、もう少し服装とかヘアスタイルに気を使って、カッコいいお兄ちゃんと歩きたいって言ったらめちゃくちゃ怒っちゃったの」

「ははぁん」

「あのね、毎週土曜日ね、イベントデーって言って、わたしがお兄ちゃんの服装をあの少ない衣装からなんとか見繕って、あのだっさいキノコヘアをわたしがスタイリングして、なんとかかっこいいお兄ちゃんに仕立てて写真撮ってるの」

「あははははは。ゆん、そんなことしてたの?」

「だってだって!お兄ちゃん学校では全然別人なんだよ?だからね、必死にお兄ちゃんを説き伏せて、毎週土曜日だけそうしてもらってるの」

「嫌がってないの?」

「嫌がってる」

「でも結局折れてるんでしょ?」

「う…うん。お前だけの特権だって言われた」

「あのね、ゆん。思い出すな、お兄ちゃんが小学校のころのこと覚えてない?」

「ううん?」

「あの頃もね、当然お兄ちゃんは可愛かったわけ。ふふふ。そうしたらね、たくさん女の子が寄ってきたの。仕方ないわよね。そうしたら、ゆんの世話が出来ないって言ってすごく荒れちゃったの。それでね、今みたいな姿になっちゃったの。おかしいでしょ?覚えてない?」

「覚えてないよ…」

「これだけは心に留めておいて。詩音はゆんのこと本当に大切に思ってるの。これだけはしっかり覚えておいてね」

「う…ん…でもね、わからないの。わたしはイケメンはみんなで共有するべき派だから」

「うーん。ゆんも今にわかるわよ。ふふふ、時間かかってもね。少なくともわたしはそう願ってるしそうなると思ってるのよ」

「お母さん、よくわからないよ…」

お母さんのそばは心地良くて、話を聞いているうちに寝落ちて行った。でもね、わたしまだわからないよ…お兄ちゃんの話も、お母さんの話も…


お母さんの隣で目を覚ましてキッチンに行くと最悪だった。虚ろな目をしていかにも調子の悪そうなお兄ちゃんがぼーっと立っていたのだ。


「今日は休むから」


それだけ言うとお兄ちゃんは部屋に戻って行った。

え???わたし一人なの?一人で学校行くの?えええええ?


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