第10話 妹が知らないことがある?

「あ、お父さん、お母さん!今日は一緒に帰ってきたの?」

「ただいま、ゆん。詩音は何してるんだ?」

「お兄ちゃんはパソコン作業終わったところみたい。わたしは食べたけど、お兄ちゃんはまだだよ」

「ゆん、詩音を呼んでらっしゃい。ご飯にしましょうって」

「はーい」


お父さんはめっちゃ仕事人。会社の重要なポストに就いていて、いつも帰ってくるのが遅い。でもちゃんと切り替える人だから、家にまで仕事を持ち込んだとしても家族に愚痴をこぼしたところは見たところない。忙しいからあまりゆっくり話したりも出来ないけど、お父さんの顔を見ると安心するんだ。お母さんは英語を教えてて、遅い時間の授業も受け持ってるから帰るのが遅いんだ。そのお母さんに鍛えられてるからお兄ちゃんは英語が得意だ。興味のあることに対してより深く掘り下げるには英語が必須って思ったお兄ちゃんはお母さんにびしびししごいてもらってた。


「お兄ちゃん、お父さんとお母さん帰ってきたよ!ご飯にしようって」

お兄ちゃんの作業部屋の前で呼びかける。

「ん、わかった」

声がしてお兄ちゃんが出てくる。

「ちゃんと考えるんだぞ」

「何を?」

「さっきの話」

「わかんないよ」

「ふぅん」

お兄ちゃんは口角を上げて意地悪く笑うと居間に歩いて行った。

もう!何なのよ!


お兄ちゃんの後を追って居間に顔を出したわたしは、先に寝るねと伝える。

「おやすみ、ゆん」

「おやすみ」

「おやすみなさーい」

わたしは自分の部屋に戻って行った。


母さんが温めたシチューを深皿にとりわけテーブルに並べていた。

ゆん抜きの3人の食卓は久しぶりだ。

「詩音、ゆんに伝えたのか?」

「言ってない」

「遅かれ早かれ言わなくちゃならないんだぞ」

「わかってる。でもまだその時じゃない」

「お前がゆんにべったりなのはわかってるんだ。そうさせたのは私達にも原因があるわけだけど…」

「心配しないで。俺、絶対ゆんを傷つけたりしないよ」

「そうか、ならいいんだ。だけど、何かあったらちゃんと私達に言うんだぞ」

「そうよ、詩音。あなたはゆんのことになると本当に頑固だから。考えがあるんでしょうけれど、あなたはまだ子供よ。そこをお母さんは心配してるの」

「子供…か」


いくつになったら大人になるんだ?20歳にならないと大人としては見てもらえないのか。は…信頼してる両親に言われると堪えるな。毎日眠れないくらい考えてるよ。どうすればいいのか、どうすることがベストなのか。平気な顔しながら心の中は不安でいっぱいなんだ。もう何年もずっとそうだ。考えても考えてもどうするのが一番いいのかまだわからないんだ。子供か。きっとそうなんだろう。まだ決断出来ない、思い切ることが出来ないんだから。



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