第9話 お兄ちゃんの言い分
居間でお気に入りのドラマのDVDを観ていた。何回観ても良いんだよな、『シンデレラはオンライン中』。なんてったって主人公の二人が正しく美男美女。顔面偏差値高すぎ。ストーリーも面白くて、ベンチャーゲーム会社のプレゼンとか凄い凝ってるし。さらには登場人物がオンラインゲームしてる場面は登場人物そのものがオンラインゲームの出演者となって登場するのだ。中国恐るべしよ。こんなドラマを作っちゃうなんて。何度観ても良き。コレでヤン・ヤンにハマったんだよなー。良きかな良きかな。
コンコン。注意を引くようにお兄ちゃんが壁をノックする。手にはコルクボードをぶら下げている。慌ててDVDを止める。
「ゆん、お前なぁ」
「だって!観てもらいたかったんだもん!」
「聞いてただろ?ルックスプラスで評価されたくないんだ」
「お兄ちゃん、いわゆる裏方で表には出ないでしょ?ならいいじゃん。本当の姿なんだもん」
「それでも、だ。一度噂に上がると興味本位でコンタクトしてくる奴もいるんだ。そんなのと関わりたくないんだ。今回のジェレミーは分かってくれたし、信頼してるから、彼が言うことはないと思うけど、要らない手間を取られたくないんだよ」
「でもお兄ちゃん…」
「それともう一つある」
「何?」
「お前にしか見せたくない」
「は?どういう意味なの?」
「どうもこうもそういう意味だ」
「はぁ?????」
お兄ちゃんはわたしに近づくと、わたしも目を覗き込みながらぽんぽんと頭を軽く叩く。
「お前だけの特権だ。わかんないなら、よく考えろ」
そう言うとお兄ちゃんは歩き出す。
「コレは貰っとくぞ」
コルクボードは没収の憂き目にあってしまったようだ。ああああ。わたしの力作がぁぁぁ。あんまりにもがっくりきたので、お兄ちゃんが言ったことを考える余裕が無かった。無かったけど、頭の中でぐるぐる回ってる。特権って何なの。お前にしか見せたくないって何なの。分かんないよ。イケメンはみんなで共有するべきだよ?自慢したいよ、お兄ちゃん?
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