第8話 妹の逆襲

さてと。そろそろ食べてもいい頃だよね。ふふふ、美味しそう!

るんるんと鍋の火を落として割ったホワイトルーを落とす。しばしかき混ぜて再び火を付ける。

「お兄ちゃんの料理美味しいんだもんなー。あー幸せ幸せ」

一人で食べるのはちょっと寂しいけど、お兄ちゃんは絶賛作業中だから邪魔しちゃいけない。それくらいはわきまえてますって。シーフードホワイトシチューにサラダ。もちろん、お父さんとお母さんの分もある。二人の帰りが遅くて夕飯が遅い時間になるからお腹空かしてピーピー言ってたわたしを見かねて料理するようになったんだよね。時間があるときは凝ったものも作ってくれたりする。お兄ちゃんがいなくなったらわたし多分生きていけない。

「うーん、美味しかった!ご馳走さまでした!」

お皿を流しに運んだところでお兄ちゃんから呼び出しがかかった。

「ゆん、ちょっと来て!」

お兄ちゃんの作業場を除くと引っ張り込まれた。

「ジェレミー、コレ僕の妹」

「ハーイ、ジェレミー!アイム・ゆん!」

「僕ちょっとトイレ行きたいからゆんと話しててくれないかな」

「いいよ。しかし可愛い妹だね」

「当然!」

笑いながらお兄ちゃんは部屋を出て行った。

英語大丈夫?って思うでしょ。お兄ちゃんに鍛えられてるから十分ではないけど、簡単なやりとりくらいは出来るのだ。えっへん。

「君のお兄さんは凄いよ。アイデアも豊富だしセンスもある」

「本当に?」

「あぁ。彼のこと知ってる連中は高く評価してるし、一緒にやってみたいって言ってる人も多いよ」

「うわー凄い!嬉しいです!…ところでですね…聞いていいですか?」

「いいよ、なんでも答えるよ」

「正直に答えて下さいね。

兄のルックスどう思いますか?」

「あ、あぁ、その…何というかユニーク…」

「ですよね、ですよね、変ですよね?」

「い、いやぁそこまで言ってないし」

「ちょっとこのまま待ってて下さいますか?」

「うん、いいよ」

わたしは超急いでさっき貼り付けたコルクボードを隣の部屋に取りに行く。お兄ちゃんに見つかったら絶対止められる。急げ!!!

「はぁ、はぁ、あの…これどう思います?」

カメラに向かってコルクボードをかざす。

「これ誰?すっごいイケメンじゃん!日本の俳優とかモデル?」

「お兄ちゃんです」

「はぁぁぁ???ゆん何いってんの?」

「本当なんです。嫌がるお兄ちゃんになんとかオシャレっぽい服着せて、あのクソだっさいヘアスタイルをどうにかするとこうなるんです!!!」

一気に喋った。

「マジかよ。信じられないよ」

「本当ですって!」

そこへお兄ちゃんが戻ってきた。

「なに話してんの?」

わたしは椅子に座ったお兄ちゃんを押さえつけて前髪をアップする。

「ね、本当でしょ、ジェレミー?」

「納得した。なぁ、シオン、なんでお前そんなだっさいルックス保持してるわけ?」

「??????」

頭に沢山のクエスチョンマークを浮かべてるお兄ちゃんの目ににわたしの力作コルクボードがとまった。

「ゆん、このヤロー!!!」

「ヘイ、ヘイ、ストップ、ストップ!兄弟喧嘩するなよ。シオン、ぶったまげたぞ。お前クッソイケメンなんじゃん。みんな知らないぞ」

「知らなくていいんだってば」

「なんで?お前そのルックスだと以上のオファー来るぞ」

「だからルックスプラスはしたくない」

「あーそうか、そうか。そういうことか」

「それにゆんにしか見せない」

「お兄ちゃん、わたしインスタに上げてるよw」

「素性明かしてないからまだセーフ」

「お前ら何言ってんの?」

「こっちの話だよ。とにかくルックスのことは黙っててもらえる?」

「いいよ。いいもの見せてもらったってことで。ふっふっふっ」

「あ、じゃぁ邪魔しちゃいけないからわたし行くね。ジェレミー、バイバイ!」

「次も相手してよね、ゆん!」

「もちろん!バーイ!」

お兄ちゃんに何か言われる前にとっとと退散退散。お兄ちゃんの雷落ちる前の今はしてやったり!と思わせておいてね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る