第3話 学校生活

「ぐふふふふふふ」

「あーまたあんた!インスタのイケメンさん見てニヤついてる!」

「だって、たまらなくない?カッコ良すぎて嬉しくなる!」

「あーはいはい、確かにイケメンよね、そこは認める」

「でしょでしょ、いいわーほんとに」

「ねぇねぇ、あんた普通に好きな芸能人とかいないの?」

「いるよ、ヤン・ヤン」

「誰それ」

「中国のイケメン俳優!」

「あんたのそのコアな趣味よくわからんわ」

「すごいイケメンだよー顔面偏差値高杉君。ドラマ見ててアップになるたび、顔面偏差値の人きたーーーー!!!って叫んでる」

「はいはい…」

「でもインスタのイケメンさんがいい」

「つける薬ないわ。でもこのインスタイケメンさん、正体不明じゃない?」

「なんだよねー。どこの誰かも全くわからない」

うそうそ、それお兄ちゃんだから。心の中でつぶやきながら花梨かりんに返す。


わたし、野々村ゆん。高校2年生。お兄ちゃんは野々村詩音しおん、高校3年生。同じ高校に通ってる。


「ねぇ、あんたのお兄ちゃんなんであんなにダサいの?」

「それを言われると凹む」

「だってあんた結構可愛いし、人気もあるのに、あのお兄ちゃんって謎すぎるわ。さっきも先生に話しかけられておどおどしてたよ」

「はぁ…何も悪いことしてないから堂々としててっていつも言ってるのに」

「本当に同じお父さんとお母さんから生まれたの?疑うレベルだわ」

「でもいいお兄ちゃんなんだよー。いつもご飯作ってくれるし」


お兄ちゃんがいかに素敵でかっこよくてなんでも出来るか語りたいけど語れない。語ってはならぬのだ。それはお兄ちゃんの今の生活を壊したくないから、うんそう。お兄ちゃんは今のままでいいって言い張るからあえてそこを崩したくないって思う。なぜお兄ちゃんがそうなのかはわからない。どうして外にでるとああなっちゃうのか本当にわからない。


「おい、詩音、おまえまた先生のまえできょどってたよな」

「あ、うん…」

「少しは背筋ビシっと伸ばしてまっすぐ立てよ」

「う、うん…」

「あーほらまたすぐ俯く。ちゃんと顔上げろよな」

「う、うん…」


面倒なのだ。自分のやりたいこと以外にエネルギーを割くのが面倒なのだ。下手に注目されるのも嫌だし、ひっそりおとなしく過ごしていれば邪魔されることなく自分のペースで学校生活を送れる。そう思うんだ。幸いなことに、ダサい、おどおどしてるでからかわれることはあってもイジメにまでは行ってないから本当にラッキーだ。そうなってしまうこともあるのかもしれないけど、もう高校3年生だ。みんな受験でそれどころじゃないだろう。学校は苦手だ。苦手とは言っても大学は行くつもりだけど、多分高校よりはマシだと思いたい。勉強はいいんだ、でも人と関わるのが面倒すぎるんだ。


「おーい詩音、何やってんの?」

頭痛の種がやって来る。

「べ、別に…」

こいつは中学で一緒になって、以来なぜか俺に絡んでくる。こっちは全く頼んでないっつーの。

「なーなー帰りになんか食いにいこうぜ」

「いや、家で何か作る」

「たまにはいいじゃん」

「いや…だ」

「妹ちゃんも誘えよ。おごってもいいぞ」

「や…だ」

そうなのだ、こいつ、高上修介は妹目当てなのだ。わかってる。だから余計にウザい。

「やだやだやだ、終わったらすぐ帰るんだ…」

力なくつぶやく。

「おまえほんっと相変わらずだな。ま、また誘うわ」

はぁ…行った。ほんとこういうのが煩わしくてしんどい。あいつとは絶対違う大学に行くんだ。うん、そうだ、それしかない。勉強しよ。


「修介、なにアイツに絡んでんだよ」

「あー面白いから」

「はぁ???」

「あんだけ地味でダサいのに妹ちゃんすっげー可愛いんだわ」

「そこか」

「それだけじゃないよ、アイツなんか絶対隠してる」

「はぁ???」

「よくわかんないんだけど、中学から観察してるからな」

「なんだよそれ」

「ああ見えて成績はトップクラス、体育だって普通にこなしてんじゃん。タダのダサいやつじゃないってこと」

「まぁ、言われてみればそう…だな」

「だろう?普通ならふつーにクラスの人気者でもおかしくないじゃん」

「それはないわ。あんなダサいやつ」

「まぁまぁ、人気者は無理でも一目置かれてもおかしくないじゃん。なのにとにかくひたすら目立たないようにしてるとしか思えないんだよな」

「んなことないだろ、単に小心者でダサいだけだぞ」

「かな、かもな。俺の勘違いかな」

「勘違いだよ、あんなヤツになにが隠されてるって言うんだよ」

「んーまそういうことにしておくか」

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