そのときオレは思ったね

「お前も知ってると思うけどよ。

長月と望月が死んで、

長月が拾って使ってたカメラを夕月がいじってさ。

何を思ったか夕月のやつ、

データの中から長月と望月が写ってる写真を見つけて壁に貼り出したんだ。

まあ、確かにアイツのやりそうなことさ。

で、望月の不貞腐れた面と長月のピンボケした自撮りを見てるとな、

こう、なんて言うんだ。

目頭がな、熱くなって。


そこを夕月に撮られちまった。

自分も目の周り赤くしてな、こう言った。

〝皐月が死んだらいまのアホヅラをでっかく貼ってあげます〟って。

そのときオレは思ったね。

絶対コイツより先にはくたばるもんかってな。


どうした、聞いてるか」


「聞いてるよ。

お前がうるさいから眠れもしない」


「そいつはよかった。

一人だと寂しくて死にそうだからな。

――。

夕月はちゃんと戻れたかね」


「お前は自分の恥ずかしい顔がデカデカと貼り出されることの心配をしてた方がいいよ」


「ハハッ、そうかもな。

でもお前も欠伸してるとこ撮られてるんだからな」


「それホントか?」


「ああ、マジだ。

撮ってるとこ見たからな」


「それはちょっとイヤだな」


「ま、残ってるのは夕月とボスだけだろ。

あの二人ならどんなツラで写ってようが、泣いてくれるだろうよ」


「それはそれでツラいな」


「違いない。

――おっと、お客さんだ。

もうちょっとゆっくりしてくれてもよかったんだが。

いけるか菊月」


「まだ大丈夫だ。

お前こそ、はしゃぎすぎてオレを振り落とすなよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る