その通りなら、本当に不愉快だ

「新しい指揮官が来たが、どう思う?」


「かわいい子だと思うよ。

ただちょっと自分に自信なさげな感じがするね。

ああいうタイプはひと押しすると化けるぞ」


「皐月もそう思いますか。

かわいいですよね。

わたし、

いまからお部屋に行っちゃおうかな」


「そういうことを訊いてるんじゃないぞ、この酔っ払い共が」


「ま、お気に入りの娘が死んで、後追いするようなおっさんじゃないだけマシと考えるよ、オレは」


「あっ、そういうことは言わないって約束したのですよ」


「悪い」


「まあ、そう言いたくなる気持ちも分からなくもない。

ただあのお嬢ちゃんも可哀想なもんだ。

何ひとつここの業務内容について聞かされずに派遣されてきたんだろ?」


「ほんと、人をなんだと思ってるんスかね、本部は」


「あたしたちはそのために作られた合成人間だから、いいとして。

あんな夕月とたいして変わらない様な女の子を、なんの説明もなしに地獄に放り込むあたりふざけてる」


「前任は一応研究職の人員だったが、彼女はそうでもないんだろ。

完全に調査って建前を捨ててきてるな」


「どうにせよ、俺たちはここの外じゃ生きていけないんだ。

やれといわれたことをやるのには変わりない」


「(鼻を啜る音)もーだれもしんじゃヤれすよ」


「おい、夕月飲み過ぎだ」


「えー、よってないれすよ」


「あたし、連れてくよ」


「すまんな三日月、いつもいつも」


「すまないと思ってるんなら、なにか埋め合わせして。

ほら夕月」


「やらー。たすけてー」


「じゃ、オレもそろそろ戻りますか」





「行ったか。

酒の飲み方くらいいい加減学んだらどうなんだ。

まったく。

で、菊月、

どう思う新任の指揮官は」


「まだなんとも言えない。

まったくの無能ではないと思うが。

皐月の言葉を借りると、自分に自信なさげな様子が見受けられるが、きっかけ次第で化けるだろう印象は確かにある。

――。

ただ極力現場は見せない様にしたほうがいいかもしれない」


「それには同意だ。

アレはただ醜いだけのバケモノとはわけが違うからな。

せっかくの人員をつまらないことで消費したくはない。

本部はそういう結果が欲しいだろうがね。

如月の予想が正しければそのための補充要員なんだろう」


「その通りなら、本当に不愉快だ」

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