謎の使命感ってやつだ

状況は依然として良くはない。

言ってみれば悪化以外のなにものでもないんだが。

いま、ロックされたゲートを内側からこじ開けられないか、まだ諦めてないタフな奴らが懲りもせず手当たり次第に試してる。

けど、正直な話、望みは薄いな。

時間をかければ不可能ではないとは思うが、

その前に弾薬と食料が尽きるだろうな。

ま、それよりずっと前にバケモノにヤられるか、

恐怖でブッ壊れて殺し合いをはじめるかのどちらかだろう。

結局はそんなものなのさ。


――しかしまあ、昔を思い出すな。

地下鉄に市民同士で身を寄せ合ってたような頃のな。

それより前の記憶ももちろんあるんだが、

今となっては霧がかかったような、

どこか白茶けた他人の記録みたいにしか感じない。

もう少し生きれば、

平和だった頃の思い出も鮮やかに見えるかもしれないが。

まぁ、オレはもう長くない。

右足に点々と結晶が浮き出てきてる。

作業着なしで坑道をうろつきすぎたんだろうな。

このまま石になれるんなら、それもいいかもしれない。

そうすればあの子に会えるだろうしな。


だが、

いまオレにはやらなければならないことがある、

そんな気がしてるんだ。

謎の使命感ってやつだ。

まだこの地獄でマトモな人間が一人でも生きてる以上、

身を捨ててでも、動けるヤツがやらないと。

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