21P目

ここからは僕の考察を記していく。

依然、佳純の両親に確認などはしておらず、全て推測であり、ただの妄想と思った上で通報してほしい。


まず、佳純のガンは作為的に出来たものであり、それは佳純の父親の仕業であると考える。動機は金銭目的と考えるのが妥当である。


また、佳純の母は、代理ミュウヒハウゼン症候群と推測する。僕が佳純の母に初めて会った日に会話した時に感じた違和感は、その言葉が佳純を心配して、佳純しか見えない人間のものだとは思えなかったから生じたものだ。つまり、佳純の容体ではなく、佳純という人間を心配しているという状況が、佳純の母にとって大事だったのだ。


また、佳純についてだが、日記の読めない部分に書かれたものを推測するのはあまりにも無粋で失礼なので、見えている部分だけで考察をする。

佳純はおそらく、母の異変に気付いていて、父が自分に投与した薬がなんなのかも理解していたと思われる。

受容するにはあまりにも危険な薬だが、おそらく自分だけしか出来ないことだと思い、投与を容認したのだろう。

佳純はそういう、いわゆる、人間としてこうあるべきだとか、こうならなければならない、と言った義務論的なものを信条に掲げていた。おそらく、親という特別な関係にある人間に対して、それほどの事はすべきなのだと考えていたのだろうと思う。

佳純のバックボーンを知ろうとすると、必ず行き着く(ここからの文章は黒く塗りつぶされている)


僕はこれから、このアパートで死のうと思う。

できるだけ捜査してもらえるように死にたいので、本当は何人か巻き込んで自殺したいが、佳純は絶対にそういう事を嫌がるだろうから、僕にできる最大限目立つ方法で死のうと思う。

スカイツリーから飛び降りるとか、電車に飛び込むとか、そういうのも佳純は嫌がると思う。

だから僕は、自分を他殺する事にする。

僕のこの本を読んだのなら、捜査はすぐに終えてください。僕は他殺されたのではなく自殺をそう見せかけただけです。



司法解剖をしてもらえるような事件はとても少なく、変死体ですらしてもらえない場合が多い現状、僕は明らかな猟奇殺人事件の被害者として死のうと思う。

今日は4月4日、日本は大変な事になっていますが、僕の中ではそれよりも大変な事としてこの一事が処理されています。どうか、この本が誰かに見てもらえる事を祈ります。


佳純を殺した犯人は、僕が思うに、捜査されずに消えたいくらかのバックボーンがあります。その件に関しても、どうか捜査していただきたい。

高尾山駅近くにある裏高尾へ向かう駅のトイレの天井、僕はそこにこの本を隠すつもりです。いつ発見されるかは分かりませんが、どうか2年以内に見つかってくれること、そして発見された方がそれなりの教養を持っていることを強く望みます。

僕の現住所は三鷹市上連雀○-○-○○-○○○です。


風化させたくないので、どうか、お願いします。


さようなら。

僕は消えます。

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