第4話

なんでもっと早く言ってくれなかったんや、とガレージで責め立てられた。兄は私の手から缶チューハイを奪い取り投げ捨てた。家にある残りは今日から全部俺のやからと顔中を濡らして兄は言った。

医師からは現在、断酒を命令されていた。睡眠薬ももらっている。眠るだけだ。ただ眠るだけだ。

酒びたり物質と命名したい精神がある。脳や身体が何をおいても酒を求めるのだ。最初は晩飯からだった。次にゲームをしているときに飲めばより楽しくなるかもと思い、次は帰宅途中の電車、そしてしまいには職務中に飲むようになるまで半年もかからなかった。目覚めることが困難になり涙を流して兄に文句を垂れていたらついに病院に連れていかれた。そのときの私を運んだのがこの車だった。

兄には感謝している。たまに恋人を作ればお前も少しは楽になるかもという楽観を押し付けてこなければよかったが。

「兄さんさえよければ今度ドライブに連れてってよ」

「あいにく、今の隣は梢専用なんだよ」

「今日乗せてくれたやん」

それから、脚がもつれて立ち方さえ忘れた私の肩を支えてくれた。酒を飲めば歩行を思い出せるかもと納戸にしまったボトル焼酎を取り出して飲めば兄に頬を叩かれた。あの時は、気がつけば、院内だった。私は泣きながら、どうか死なしてほしいと白衣のお爺さんにすがり付いた。そんな私に兄は死ぬことは絶対に駄目だとだけ告げた。


だから、まだサザンドラになれない今は死体にはなれないのだ。

民放がながすその日の最後のニュースで、死体のことが報じられた。

そして、扉を叩く音がした。まだ私たちはジヘッドだ。本当にサザンドラになるのはまだだ。レベルが足りない。

私は車の鍵を握り窓から外へ出た。私たちはジヘッドになる。玄関の前にいる男たちにたいあたりする。そして倒れた彼らをタイヤでのしかかる。道路の上に血痕がついているだろうがかまうものか。

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